高分子末端へのアジド基とアルキン基の導入
Dr. Joost A. Opsteen
Material Matters 2008, 3.3, 66.
Institute for Molecules and Materials, Radbound University Nijmegen, The Netherlands
「クリック」ケミストリー、特に銅(I)触媒によるアジド-アルキン付加環化(CuAAC:copper(I)-catalyzed azide-alkyne cycloaddition)は、高分子化学と材料科学における強力な合成ツールです。(生体)高分子構造工学においてCuAACが成功した理由としては、高分子ビルディングブロックの所定の位置に望みのアジド基やアルキン基を導入できるようになったことのほか、精密重合技術が発展したことが挙げられます。
精密重合によって構造が明確な末端基をもつ高分子を合成し、続いて、この末端基をアジドやアルキンに変換することができます。ポリ(エチレングリコール)(PEG)の末端の水酸基をアジドまたはアルキンに変換する例をスキーム1に示します。このPEGをピリジンと塩化トシル(TsCl)で処理すると、置換が容易なトシル基活性化PEGが得られます。その後アジ化ナトリウム(NaN3)と反応させるとアジド基を導入することができ、末端にアジドを有する高分子が得られます。PEGへのアルキンの導入は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下でペンチン酸でエステル化させて行います(スキーム1)1。
スキーム1ポリ(エチレングリコール)の末端の水酸基を、アジド基またはアルキン基に変換する反応1
スキーム2ATRPによって調製した臭素末端基をもつポリスチレンは、容易にアジドと変換できます1,3。
重合後の末端基修飾をうまくできるかどうかは、重合時の停止反応をうまく抑制できるかに左右されます。さらに、目的の官能基の導入が不完全にならないように、末端基を定量的に操作する必要があります。重合時に副反応が起こらないのであれば、官能基を有する開始剤が、定量的に官能基を導入するうえで有用となる可能性があります。
官能基を有する開始剤を使ってアルキン基を導入した例をスキーム3に示します。アルキンを有するα-ブロモエステル開始剤をTIPS保護基で保護して、ATRP時に銅触媒と錯体形成させないようにします。アジドは「クリック」反応に利用でき、TIPS基は重合後に取り除くことができるため、次の「クリック」反応に利用することができます4。
スキーム3両末端に保護されたアルキンとアジドを有するヘテロテレケリック(Hetero-telechelic)ポリ(アクリル酸 tert-ブチル)の合成4。
参考文献
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