コンテンツへスキップ
Merck
ホームバイオセンサ・バイオイメージング金ナノロッドとタンパク質との結合法

金ナノロッドとタンパク質との結合法

Christian Schoen
Nanopartz, 146 Barberry Pl, Loveland, CO 80537
Nanomaterial Bioconjugation Techniquesナノ粒子表面修飾ガイドブック), 2017, p.31

「診断・イメージング技術におけるナノ材料の応用」ハンドブック表紙画像

はじめに

金ナノ粒子は優れた光学的特性を持つため、診断から薬物送達やDNA治療にいたるまで幅広い範囲の用途に適しています。ただし、多くの場合、球状の金ナノ粒子の吸収ピークは~580 nmにあり、皮膚、組織、ヘモグロビンのような生体のほとんどの構成要素の透過窓(650~900 nm)よりもかなり短波長になります。このように波長窓が制限されているため、球状の金ナノ粒子の用途は限られています。

金ナノロッドの特性の多くは金ナノ粒子に類似していますが、形状を細長くすることで吸収および散乱特性を最適化します。ナノ粒子を非対称的に伸長することで吸収波長を550 nmから1,400 nmの間で調整できるため、金ナノロッドは診断用途で期待されています。本プロトコルでは、表面が未修飾の金ナノロッドをカルボキシ基と結合させて精製する方法と、カルボキシ基で修飾したナノロッドをタンパク質(ストレプトアビジンまたはIgG)と結合させて精製する方法を紹介します。基本的に、カルボキシ基で修飾した金ナノロッドをストレプトアビジンまたはIgGと結合させる方法には、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、E1769)の反応性を利用したアミンとの結合が含まれています。この結合は、ラテラルフロー診断を含む生物学的用途で重要になります。ストレプトアビジンとIgGは、抗原やビオチンに標識を付けるために広く使用されています。

EDCは、カルボキシル反応性およびアミン反応性のゼロ距離架橋剤(zero-length crosslinker)です。EDCは最初にカルボキシ基と反応してアミン反応性のO-アシルイソ尿素中間体を形成します。この中間体はすぐにアミノ基と反応してアミド結合を形成し、副生成物のイソ尿素を放出します(図1を参照)。この中間体は水溶液中で不安定であるため、2段階で結合させる手順では、安定化するためN-ヒドロキシコハク酸イミド(130672)が必要となります1,2。アミンと結合しなかった中間体は加水分解され、カルボキシ基が再生されてN-置換尿素が放出されます。通常、N-アシル尿素が生成する副反応は、タンパク質の疎水性領域のカルボキシ基に限定されます1,3。EDCを使用することで、5'-リン酸基を介してペプチド、タンパク質、DNA標識内のアミン基にカルボキシ基を結合させることができます。

EDCとカルボキシ基およびアミン基を含む分子の1段階反応

図1EDCとカルボキシ基およびアミン基を含む分子の1段階反応。EDCは最初にカルボキシ基と反応してアミン反応性のO-アシルイソ尿素中間体を形成します。この中間体はすぐにアミノ基と反応してアミド結合を形成し、副生成物のイソ尿素を放出します。


方法例:金ナノロッドへのストレプトアビジンまたはIgGのコンジュゲーション

ここでは、カルボキシ末端金ナノロッドとタンパク質とのコンジュゲーションを作製する方法を説明します。1ミリリットルあたりの光学密度は5 ODになります。

材料

  1. カルボキシ基を結合させた金ナノロッド、1.75 mg/mL、OD = 50、1 mLまたは金ナノロッド(716812716820716839776688)またはCTABでキャップされた金ナノロッド(900362900363900364900365900366900367
  2. (±)-α-リポ酸(T5625
  3. EDC、5 mg(E1769
  4. PBSバッファー、pH 7.4、10 mL(P4417
  5. ストレプトアビジン(85878)または特異的IgG、100 μL、1 mg/mL溶液
  6. 超純水、10 mL
  7. 低吸着2 mLマイクロ遠心チューブ

保管および保存期間

4℃で冷蔵してください。保存期間は約14日間です。使用前に各コンポーネントを室温に戻してください。

他に必要な器具・機器類

  1. 体積1 μL~2 mL用のトランスファーピペット
  2. サイズが20 nm以上の場合、最低でも rcf = 10,000のマイクロ遠心機。これよりもサイズが小さい場合はさらに最適化する必要があります。
  3. マイクロ遠心チューブ用のボルテックスミキサー
  4. 超音波処理器
  5. 動的光散乱法(DLS:Dynamic light scattering、オプション)
  6. 紫外可視分光計(オプション)

実験方法

最初のセクションでは、金ナノロッド(716812716820716839776688)をカルボキシ基で修飾する方法を説明します。なお、カルボキシ基で修飾された金ナノロッド(716898)が市販されています。

  1. マイクロ遠心チューブに金ナノロッドを2 mL入れます。
  2. 1 mg/mLのリポ酸水溶液を25 μL加え、5分間ボルテックスします。
  3. 混合物を5分間遠心分離します。716812および716820の場合の推奨遠心速度は12,000 rpmです。その他のナノロッド製品の場合、推奨遠心速度は10,000 rpmで5分間です。
  4. 上澄みを除去し、MES(4-モルホリンエタンスルホン酸、M3671)で置換します。この手順を2回繰り返します。

以下に説明する手順は、上記のカルボキシ基で修飾したナノロッドをストレプトアビジンまたはIgGと共有結合させる方法です。

  1. マイクロ遠心チューブに1.5 mLの水を入れ、カルボキシ基で修飾した金ナノロッドを40 μL加えます。5秒間ボルテックスして、対照溶液として保存します。
  2. 金ナノロッド溶液100 μLをIgGまたはストレプトアビジン100 μLに加えます。
  3. 超純水を1 mL加えます。
  4. 約1分間ボルテックスします。
  5. 1 mLの水を1 mgのEDCに加え、すぐにこの溶液100 μLを手順4で撹拌した溶液に加えます。
  6. 1時間ボルテックスします。
  7. 13,000 rpmで30分間または良いペレットが形成されるまで遠心します。50 μL未満になるまで上澄みを除去します。1.5 mLになるまでリン酸緩衝食塩水(PBS)を加えます。この手順をさらに2回繰り返します。必要に応じて、各遠心処理の間に超音波処理を行います。
  8. 結合を確認するため、対照溶液と手順7の生成物の双方について、ナノ粒子のサイズと電荷をDLSで測定します。サイズの増加と電荷の変化をUV/Visのレッドシフトで、全体的なサイズの増加をDLSの粒子径測定およびゼータ電位測定で確認してください。

掲載誌

「ナノ粒子表面修飾ガイドブック Nanomaterial Bioconjugation Techniques」
まとめてご覧になりたい方のためにPDFをご用意しています。

 

関連製品

本プロトコルで使用した試薬

申し訳ございませんが、想定外のエラーが発生しました。

Network error: Failed to fetch

金ナノロッド

申し訳ございませんが、想定外のエラーが発生しました。

Network error: Failed to fetch

蛍光標識済み金ナノロッド

申し訳ございませんが、想定外のエラーが発生しました。

Network error: Failed to fetch



.

1.
Grabarek Z, Gergely J. 1990. Zero-length crosslinking procedure with the use of active esters. Analytical Biochemistry. 185(1):131-135. https://doi.org/10.1016/0003-2697(90)90267-d
2.
Staros JV, Wright RW, Swingle DM. 1986. Enhancement by N-hydroxysulfosuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions. Analytical Biochemistry. 156(1):220-222. https://doi.org/10.1016/0003-2697(86)90176-4
3.
Timkovich R. 1977. Detection of the stable addition of carbodiimide to proteins. Analytical Biochemistry. 79(1-2):135-143. https://doi.org/10.1016/0003-2697(77)90387-6
ログインして続行

続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。

アカウントをお持ちではありませんか?