有機電子デバイスのための高純度昇華材料
Ajay Virkar, Zhenan Bao
Department of Chemical Engineering, Stauffer III, 381 North-South Mall, Stanford University, Stanford, CA 94305-5025
昇華精製ペンタセンを用いた薄膜トランジスタ
はじめに
有機電界効果トランジスタ(OFET:Organic Field Effect Transistor)は、大面積でフレキシブル性を備え、軽量で低コストなデバイスの実現可能性を持つため、大変注目されている技術です。このタイプのデバイスの性能を決定する要素の一つが有機半導体であり、新しい半導体材料の構造設計や純度といった要件が、有機エレクトロニクス技術の進展に非常に重要な役割を果たします。文献で報告されている最も高い移動度のデバイスには低分子半導体1(図1のような単結晶デバイス2)、もしくは低分子材料と高分子材料をブレンドした材料3が利用されています。
![Sublimed grade Rubrene 昇華精製グレードのルブレン単結晶を用いたOFET](/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/images/technical-documents/articles/materials-science-and-engineering/organic-electronics/figure-1/figure-1.jpg)
図1昇華精製グレードのルブレン(551112)の単結晶を用いたOFET2。約8 cm2/V・sの非常に高いホール移動度を示します。
高純度有機半導体材料は薄膜トランジスタ(OTFT:Organic Thin Film Transistor)においてより優れた特性(ホール移動度やオン/オフ比)を得るのに適しており、デバイス寿命を伸ばすこともあります。ペンタセンをはじめとする多くの有機半導体材料は高温かつ高真空において昇華するため、昇華精製法は非常によい精製法であり、より純度の高い材料を得ることができます。ここでは、3回昇華精製したペンタセン(698423)を用いて作製したOTFTデバイスとその超高性能特性について報告します。
デバイスの作製と特性
ペンタセン薄膜トランジスタは、活性物質としてアルドリッチより購入した高純度ペンタセン(triple-sublimed, >99.995% 698423)を用いて作製しました。トランジスタ基板(Silicon Quest社製)には高濃度にn型ドープしたシリコン基板に熱酸化によって二酸化シリコン誘電体を成長させ(300nm)、単位面積あたりの静電容量(Ci)が10 nF/cm2のものを使用しました。 Si/SiO2基板はピラニア溶液(H2SO4: H2O2 = 7:3 反応性が高いので注意)で30分間洗浄し、脱イオン水で十分にリンスしました。 誘電体表面を修飾するために、Si/SiO2ウエハ片の上にオクタデシルシラン(OTS、442291)の結晶性単分子層を堆積させました。結晶性OTS単分子層の作製の詳細については、既報を参照ください4。ペンタセンは60℃の基板温度で10-6~10-7Torr の真空度のもと、熱蒸発によって0.3~0.4Å/sの速度で蒸着し、最終的に40 nmの膜厚(真空チャンバー内の水晶式膜厚計にて測定)を得ました。続いて、金電極(約40 nmの膜厚)をW/L比が20(W:チャネル幅、L:チャネル長さ。L = 50-150 μm)のシャドウマスクを用いて作製しました。
ペンタセントランジスタの電気特性はケースレー4200半導体特性評価システムを用いて、周囲条件で室温にて測定しました。電流電圧(I-V)特性(伝達特性)は、-100 Vの固定ソース-ドレイン電圧で測定しました。
結果
代表的な伝達特性は次のとおりです。
![Representative transfer IV curves of OTFT devices 3回昇華精製したペンタセンを用いたOTFTデバイスの典型的なI-V曲線](/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/images/technical-documents/articles/materials-science-and-engineering/organic-electronics/figure-3.gif)
図33回昇華精製したペンタセン(698423)を用いたOTFTデバイス(表1のNo.3(左)とNo.5(右))の典型的なI-V曲線
![Output IV curves of a Triple-Sublimed pentacene 3回昇華精製したペンタセンを用いたOTFTの出力特性](/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/images/technical-documents/articles/materials-science-and-engineering/organic-electronics/figure-4.gif)
図43回昇華精製したペンタセン(698423)を用いたOTFT(表1のNo.1)の出力特性
図3の伝達特性で注目すべきは、オン/オフ比が106を超えている点です。電荷キャリア移動度は飽和I-V曲線(図4)から次の関係を用いて求められます。
IDS = (WC/2L)µ (Vg - Vt)2
ここで、μは電荷キャリア移動度、IDSはドレイン電流、VGはゲート電圧、VTはしきい電圧、Cは静電容量です。チャネルの形状は幅(W)と長さ(L)で定義されます。
表1に、3回昇華精製したペンタセンを用いて作製した7つのOTFTの主なトランジスタ特性を示します。
デバイス | (cm2/Vs) | On/Off | VT (V) |
---|---|---|---|
1 | 1.1 | 105 | -22 |
2 | 4 | 7x106 | -17 |
3 | 4.6 | 5.6x106 | -22 |
4 | 2.1 | 1.2x106 | -16 |
5 | 3.2 | 1.1x107 | -18 |
4 | 4.4 | 1.3x107 | -21 |
7 | 4.5 | 2.4x107 | -18 |
Average (stdev) | 3.4 (1.3) | 8x106 | -19 (2.4) |
まとめ
ペンタセン有機薄膜トランジスタ (OTFTs)は、純度99.995%以上の3回昇華精製した高純度ペンタセンを用いて製造されました。結晶性オクタデシルシラン修飾SiO2誘電体表面では、平均電荷キャリア移動度は3.4 cm2/Vs (最大4.6 cm2/Vs)でした。OTFTの極めて高い性能は、ペンタセンの高純度と結晶性誘電体修飾層に起因するものです。
幅広い有機エレクトロニクス用途に適した高純度の昇華材料を取り揃えております。最高品質の材料を一貫して提供するために、昇華グレードの製品は、以下を含む広範な純度テストの対象となります:
- トレース金属分析
- DSC / TGA
- HPLC(物質が可溶性の場合)
製品固有のテスト情報は、仕様書または分析証明書に記載されています。
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参考文献
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