2次元材料
2次元材料は、強い層内共有結合と弱い層間ファンデルワールス力 (vdW) によって結合した層状化合物です。その特有の電子的、光学的および機械的特性、単一層もしくは数層に剥離可能であることから、光触媒や太陽電池、ガスセンター、リチウムイオン電池、電界効果トランジスタ、スピントロニクスなどの分野で非常に注目されています。2004年にグラフェンの並外れた物理的特性が発見されて以降、世界中の研究グループが2D材料の発見、開発および応用に着目しています。グラフェンの開発に続いて、単元素構造(フォスフォレン、スタネン、シリセン、ゲルマネン)および2元化合物(BN(窒化ホウ素)や遷移金属ジカルコゲナイド(TMD:transition metal dichalcogenide)など)、酸化物、クレイのようなより複雑な組成など、多種多様な他の2D材料が研究されています。2011年には、MXene(マキシン)として知られる導電性の2D炭化物、窒化物および炭窒化物が発見されています1-3。
異なる2次元結晶を縦に積み重ね、ファンデルワールス力によって結合されたヘテロ構造では、従来の成長法よりもはるかに多くの組み合わせが可能です。2次元結晶の種類は日々増え続けており、原子レベルの精度で作製できる構造もより複雑になり、新規特性や応用の探索が期待されます1。一方、エレクトロニクス、フォトニック、およびエネルギーデバイスへの応用には大量の2D材料が必要であり、バルク材料からの2次元結晶の効率的な単離を可能とする技術が精力的に研究されています。シグマアルドリッチでは、単結晶材料や粉末のみならず、ナノプレートレットやプリンテッドエレクトロニクス用インクも販売しております。
MXene(マキシン)およびMXene前駆体-MAX相
MXeneは、高い導電性、優れた機械的強度、親水性など、興味深い特性を持つ新しい2次元材料で4、2011年にDrexel大学のYury Gogotsi教授によって初めて報告されました。化学的には、2層以上の遷移金属(M元素)、A層(Al、Si、Ge)、および炭素と窒素の層(X元素)からなる層状3元式Mn+1AXn(MAX相)に由来し、隣接する遷移金属サイト間の八面体サイトを占有します5。MXeneは、当初、フッ酸を用いてMAX相の「A」層元素を選択的にエッチングするトップダウン合成法によって得られ、その後、各種MXene材料を調製するためのさまざまな合成ルートが開発されています。
ゲルマネン
ゲルマネン(Germanane)はゲルマニウムのグラフェン類似体であり、直接バンドギャップが約1.6 eVで、電子移動度が18,000 cm2V-1s-1もの高い値を示します6。シグマアルドリッチでは、CaGe2結晶のトポタクテック脱インターカレーションにより合成される水素終端ゲルマニウム(GeH, 906026)を提供しています。この結晶構造は、共有結合した水素原子を含む六方晶のGe格子を有しています。さらに、ゲルマネンのアルキル化により、バンドギャップ(カソードルミネッセンス法)が1.50 eVのアリルゲルマネン(910988)と1.62 eVのメチルゲルマネン(909114)も販売中です7。これら材料のユニークな特性は、エネルギー貯蔵や電界効果トランジスタを含む幅広い用途に有用です。
2次元層状ペロブスカイト
2次元ペロブスカイトは、一般に(A’)m(A)n-1BnX3n+1で表され、A’は、無機2次元シート((A)n-1BnX3n+1)をつなぐ2層または単層を形成する2価(m=1)または1価(m=2)のカチオンです。nは前駆体組成の選択よって調整可能なペロブスカイト層の厚さを示します。一般に、A’サイトの有機カチオンは任意に長くすることができるため、大きな高アスペクト比のカチオン(例えば、脂肪族または芳香族ベースのカチオン)を使用することができます。3次元ペロブスカイトとは異なり、2次元ペロブスカイトのかさ高い有機カチオンは表面の水分吸着に立体バリアを提供し、水分の侵入を効果的に抑制します8。
六方晶窒化ホウ素(h-BN)
h-BNは、六角形状にB原子とN原子が交互に並ぶ原子レベルに平坦な層が層間のファンデルワールス相互作用によって結合したもので、白色黒鉛とも呼ばれています。結晶性h-BNは、sp2混成の強い共有結合と平面方向に高度に分極したB-N結合からなるグラフェン様層状構造が配列しています。しかし、グラフェンとは異なり、B-Nは電気陰性窒素原子で強く分極されているため、異方的な性質が発現する可能性があります。1995年にBNナノチューブが発見されて以来、ナノシート、NanoBarb、ナノメッシュ、ナノファイバーなどの形態のh-BNナノ構造に関する研究が増加しています9。
遷移金属カルコゲナイド2次元材料
原子レベルの薄さの単一層から構成される層状化合物の中で、層状カルコゲナイドは、利用可能な材料、結晶構造および特性が最も多様な2次元材料グループです。これら材料の原子面は、表面にダングリングボンドがなく、自己完結したユニットとして存在します。カルコゲナイド系の中で最も大きなカテゴリは、MX2で表される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD:transition metal dichalcogenide)です。Mは遷移金属(Mo、W、Nb、Ti、Hfなど)、Xはカルコゲン(S、Se、Te)を表し、各層は3原子分スタック構造(X-M-X)の六方晶構造をとります10。TMDはそのバンドギャップの位置や大気下での安定性、優れた電子的・光学的特性のため、2次元材料の中でも特に注目されています。
硫化モリブデン(MoS2)
硫化タングステン(WS2)
その他2次元材料
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Yury Gogotsi教授のWebinarです。様々な2次元材料を組み合わせることで、バルク材料では得られないユニークな特性を実現することができます。
グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェンインク、グラフェンナノリボンなどについては「グラフェン」ページをご覧ください。
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