トランジスタおよび太陽電池のためのポリマーを使用した半導体カーボンナノチューブ
Matthew J. Shea1, Gerald J. Brad1, Juan Zhao1, 2, Meng-Yin Wu3, Harold T. Evensen3
1Department of Materials Science and Engineering, University of Wisconsin-Madison, USA, 2School of Optoelectronic Information, University of Electronic Science and Technology of China, China, 3Department of Electrical and Computer Engineering, University of Wisconsin-Madison, USA
はじめに
単層カーボンナノチューブ(SWCNT:single-walled carbon nanotube)は、非常に高い電荷移動度1、調節可能な近赤外のバンドギャップ2、および強い吸光度3を示すため、電界効果トランジスタ(FET:Field-effect transistor)のアクティブチャネルや太陽電池および光検出器の光吸収層としての使用が期待されている材料です。従来の半導体を半導体性SWCNT(s-SWCNT)で置き換えることで、高速計算、広帯域および高効率の無線通信、ウェアラブルデバイス、再生可能エネルギーなどの用途の発展につながる可能性があります。
これらの用途でSWCNTを使用する際の大きな問題点の1つは、SWCNTの電子的不均一性です。合成されたSWCNTは、金属性SWCNT(m-SWCNT)とs-SWCNTの混合物として得られ、その比は1:2です。m-SWCNTが存在すると、電気的短絡経路の形成、および近傍のs-SWCNTの光励起状態が急速に消光するために、電子機器およびオプトエレクトロニクス機器の性能が制限されます。
過去10年間で、合成後のs-SWCNTの分離法と単離法は大きく進展しました。本論文では、最も有望な分離システムの1つであるポリフルオレン誘導体について解説します。ポリフルオレン誘導体を使用することで、99.9%を超える純度のs-SWCNTを単離することが可能です。さらに、各SWCNTのカイラル指数(n,m)で決定されるSWCNTの直径およびバンドギャップに基づいた分離もできます。我々は、ポリフルオレン類を使用して電子的性質の純度が極めて高いs-SWCNTを調製し、従来型のトランジスタやフレキシブルかつ伸縮性を有するトランジスタ、および太陽電池デバイスにおいて、s-SWCNTの非常に優れた特性を活用してきました。
SWCNTの分離法
カラムクロマトグラフィー4、DNAを使用した分離5、密度勾配超遠心分離法6、2相分離7など、m-SWCNTとs-SWCNTの混合物からs-SWCNTを分離する有望な方法がいくつか開発されていますが、おそらく最も将来性が高いのは、共役ポリマーを使用して、電子的性質に基づいてSWCNTを分離する方法です。Nishらは8、芳香族ポリフルオレン類の1種、特にpoly[9,9-dioctylfluorene-2,7-diyl](PFO)に、s-SWCNTの選択性があることを示しました。同グループは、単純でスケールアップが容易なワンポット処理法を使用して、直径が0.8 ~ 1.2 nmの範囲のSWCNTの多分散混合物から、複数のカイラル指数(n,m)のs-SWCNTを単離することに成功しました。同様の方法で単離されたSWCNT溶液のスペクトルを図1に示します。
図1A)コール酸ナトリウムおよびB)PFOの化学構造。C)コール酸ナトリウム水溶液(黒)およびトルエン中のPFO溶液(青)から超音波処理で単離されたSWCNTの吸収スペクトル。S1(青)、S2(緑)、金属(オレンジ)に特徴的なスペクトル領域が区別されています。重要な点は、PFOで分離したSWCNTに、m-SWCNTの吸収スペクトルの特徴が全く現れていないということです。
500 nm付近に見られる金属性SWCNTの吸収スペクトルの特徴から、界面活性剤のコール酸ナトリウム(図1A)によってm-SWCNTとs-SWCNTの両方が分散していることは明らかです。PFO(図1B)は、特定の(n,m)指数のs-SWCNTのみを優先的に可溶化し、m-SWCNTは溶液中にほとんど分散しません。その後の研究では、より直径分布の狭いSWCNT材料から出発し、PFO骨格に共重合体ユニットを付加することで、直径とカイラル角分布の選択性を調節しています。これらの選択性を示す共重合体の中で、poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-co-(6,6’-(2-2’-bipyridine))](PFO-BPy)は、CoMoCAT法で合成された(6,5)ナノチューブ(773735)9に対する著しい選択性を示し、同様に、ある範囲のカイラリティーで直径が1.5 nm10付近のアーク放電法で作製されたナノチューブに対しても著しい選択性を示しました。その他の共役ポリマーおよび共重合体でも、様々な選択性が示されています11–14。
これらのポリマーが選択性を示す機構はまだ解明されていませんが、骨格の組成やアルキル側鎖の長さ13が、SWCNTの直径、カイラル角、電子的性質の選択性に対して、非常に大きな影響を与えることが明らかになっています。本グループでは、直径の異なる3種類のSWCNT表面でのPFOの構造と結合係数を、分散液中のPFO濃度の関数として調べました15。同様の方法で、特定のカイラリティーを選択して単離するために新しく開発されたポリマーの選択性を調べることが可能です。PFO誘導体によるs-SWCNTの分離は非常に高効率で、現在の計測法の感度を超えています。我々は、PFO-BPyで単離した5519本のSWCNTの電子的性質を電界効果トランジスタ測定で評価しましたが、m-SWCNTはまだ1本も見つかっておらず、半導体型の純度が少なくとも99.98%あることを示しています16 。処理方法と特性評価法をさらに改良することで、純度99.9999%を超えるs-SWCNT(m-SWCNTが1 ppm未満)も得られる可能性があります。
トランジスタ
高純度s-SWCNTは、溶液プロセスで加工可能な優れた機械的弾性を有していることに加えて、電荷移動度と電流容量が高いため、様々なタイプの電界効果トランジスタにおいて魅力的なチャネル材料です17,18。基本的なバックゲート型FETの概略図を図2Aに示します。s-SWCNT上にパラジウム電極を配置するトップコンタクト型で、チャネルコンダクタンスを静電的に変化させるためにs-SWCNTがSiO2/Si基板に対して平行に配列しています。FETの性能を評価する上で重要なパラメータは、ゲートが開いているとき(「オン」)のチャネルのコンダクタンスとオン/オフ比(「オン」の状態のコンダクタンスとゲートが閉じているとき(「オフ」)のコンダクタンスの比)です。通常、FETのオンコンダクタンスはデバイスの幅に対して正規化され、FETのチャネル長、s-SWCNTの品質、ソースコンタクトおよびドレインコンタクト、ならびにs-SWCNTの配向性などのパラメータの影響を受けます。オン/オフ比は主にチャネルが電流を遮断する能力で決定されます。m-SWCNTは電流を遮断することができず、m-SWCNTがチャネルを直接ブリッジするか、チャネルをブリッジするパーコレーション構造のネットワークが形成された場合、オン/オフ比が低下します。
図2SWCNT FETの構造と性能。A)SWCNT FETの概略図。B)配向型SWCNT FETの電流電圧特性(ソースドレインバイアス–1 V(黒)、–0.1 V(赤))。C)最新のSWCNT FETと本研究で示すSWCNT FETの性能の比較(赤および緑の星)(許可を得て文献16より転載。copyright 2014 American Chemical Society)。
m-SWCNTが存在しても、特定の条件下では高いオン/オフ比を達成することが可能です。その方法の1つは、パーコレーション領域に作用するSWCNTのランダムなネットワークを導入し、まばらに存在しているm-SWCNTがソースからドレインまでパーコレーション経路を形成できないようにすることです。この方法で作製したSWCNT FETでは~107という高いオン/オフ比を得ることができますが、通常、オンコンダクタンスは10 μS/μm未満です。チャネル長が長く、ネットワークがまばらで、配向していないため、幅1 μmのネットワークの場合のコンダクタンスは、単一ナノチューブによるSWCNT FETで得られる~30 μSよりも低くなります19–21。オンコンダクタンスを増加させるため、SWCNTの位置と配向を制御して高密度のアレイにする方法が開発されています。
配向型のSWCNT FETを作製する方法の1つに、化学気相成長法で配向したSWCNTを直接成長させる方法があります。この方法の問題点の1つは、成長したSWCNTアレイが異なる電子的性質の混合物であり、m-SWCNTを焼き切らなければなりません22 。別の問題は、SWCNT密度が比較的低いために高い正規化コンダクタンスの値を得ることが難しいという点にありますが、この問題は成長および転写を複数回行うことによって解決できる可能性があります22,23。いくつかのグループが、分離したs-SWCNTを配向したアレイとして堆積する溶液法を開発しています。Langmuir-Blodgett法24やLangmuir-Schaefer法25 、誘電泳動法26、evaporative self-assembly法27,28 などの様々な方法があり、それぞれの利点があるものの、充填密度をさらに制御する必要があります。Langmuir-Schaefer法で超高密度のアレイ(>1,000 tubes/μm)を作製し、最高250 μS/μmのオンコンダクタンスが得られたことが示されていますが、純度の問題のため、オン/オフ比は1,000未満でした25。我々が行った高性能SWCNT FETの研究では、ポリフルオレンで分離した超高純度のカーボンナノチューブを配向させて、同じデバイスでオンコンダクタンス 260 μS/μm、オン/オフ比 2×105が達成されています16。
SWCNTのFloating Evaporative Self-Assembly
University of Wisconsin-Madison のPadma Gopalan グループとの共同研究として、我々は最近、Floating Evaporative Self-Assembly(FESA)29と呼ばれる方法でSWCNTを配列させ、PFO-BPyで分離したs-SWCNT FETのオン/オフ比およびオンコンダクタンスを増加させる方法を報告しています。FESAは我々が先駆的に開発した方法で、サブフェーズ(水)から基板を引き上げる際に、SWCNT「インク」(クロロホルムに溶解したポリマーでラップされたSWCNT)の液滴を基板の近くに加える方法です(概略図を図3Aに示します)。インクは水面上で急速に拡がって、薄膜が基板に付着します。揮発性インク膜はすぐに蒸発し、配向したs-SWCNTが間隔の空いたストライプとして基板に堆積します。堆積のパラメータを調節することで、ストライプの間隔と各ストライプ内のSWCNT密度を制御できます。図3B、Cに、1本のストライプ内で配向したSWCNTの走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscopy)画像および原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscopy)画像を示します。AFMの高さプロファイルから、膜が個々のSWCNTのほぼ単層からなることが示唆されています。 全体として、FESAによりSWCNTが急速に堆積して配向したアレイが得られることが示され、この方法をマイクロエレクトロニクス分野の幅広い用途へ導入してスケールアップできる可能性があります。
図3Floating Evaporative Self-Assembly(FESA)で調製したSWCNTの配向および膜特性。A)FESA実験手順の概略図。B)FESAによる堆積で作製された、配向したSWCNTのSEM画像。C)配向したSWCNTの原子間力顕微鏡画像(タッピングモード)。挿入図は、配向したSWCNTの断面に沿った高さプロファイルで、各SWCNTの単層を表しています(許可を得て文献29 より転載。copyright 2014 American Chemical Society)。
高性能トランジスタ
我々は、オンコンダクタンスおよびオン/オフ比を主な測定基準として現時点で最高性能のナノチューブFETを作製するため、FESAに関する研究を活用しました16。図2Bは、配向型SWCNT FETのソース-ドレイン電流をゲート電圧の関数としてプロットしたものです。この測定から、オンコンダクタンス260 μS/μm、オン/オフ比 2×105という値が得られます16。図2Cに示すように、これまでの最新SWCNT FETと比較して、オン/オフ比およびオンコンダクタンスに関する性能が著しく向上しました16,19,20,22,23,25,28,30–35。オン/オフ比は最新SWCNT FETと比較して1,400倍になり、デバイス幅について正規化したオンコンダクタンスは250 μS/μmでした。同様に、オン/オフ比の高い最新SWCNT FETと比較した場合は、幅で正規化したオンコンダクタンスが30~100倍になっていることが示されました。本デバイスの優れた性能は、半導体性SWCNTの純度とSWCNTアレイの高い配向性に起因します。また、SWCNTが堆積する際に単離したままでバンドルしないため、SWCNT間のクロストークの悪影響が最小限に抑えられ、電極/SWCNTの接触が改善されることもこの高性能に寄与しています。次に、これらFETアレイのオン/オフ比の大きさに基づいて、半導体性SWCNTの純度を求めました。5519本のSWCNTを含むこれらのFETすべてで5×103を超えるオン/オフ比が得られ、半導体純度が少なくとも99.98%であることが示されました。これらは、ポリフルオレンで分離した配向型のSWCNTおよびFESAが、次世代薄膜FETやコンピューティングの分野で有望であることを示しています。
フレキシブルで伸縮性を有するトランジスタ
SWCNTの優れた機械的弾性36を利用することで、固い基板だけでなく、フレキシブルで弾性を有する基板や、衣服、紙、生体組織のように、曲げたり伸縮したりすることも可能なこれまでにない基板37–39 を用いた、新たな種類の電子機器および電子回路へのSWCNT利用の可能性が広がります。高い柔軟性と伸縮性を持つ薄膜FETの作製には、チャネル、電極、誘電体、これらの界面を含むすべての構成要素が、変形した際にどのような機械的挙動を示すかを検討することが重要です。我々のグループでは、PFOで分離したs-SWCNTのランダムネットワークをあらかじめ引き伸ばしたエラストマー基板に堆積し、基板の歪みを緩和してネットワーク状の薄膜がつぶれることで、高い伸縮性を持つFETを作製しました40 。コンタクトは歪められた金/クロム薄膜で構成され、柔軟性のある誘電体としてイオン伝導性ポリマーを使用しました。この方法で作製したFETは、歪みが50%を超えても動作可能で、図4に示すようにオン/オフ比、移動度などの電気的性能は低下しません40 。
図4A)あらかじめ加えた歪みを緩和した後のつぶれたs-oSWCNT膜のSEM画像と、B)柔軟性およびC,D)伸縮性の例。E)伸縮性FETのオン電流(Ion)、オフ電流(Ioff)、移動度(μ)対歪み(許可を得て文献40より転載。copyright 2014 American Chemical Society)。
カーボンナノチューブのオプトエレクトロニクス
デバイス動作
s-SWCNTは強い光吸収体であり、バンドギャップが調節可能で、エネルギーおよび電荷を超高速で輸送し、化学的安定性が比較的高く、溶液加工できるため、次世代の太陽電池および光検出器の光吸収材料として期待されています。m-SWCNTが存在すると、近傍のs-SWCNTの光励起を消光してしまうことが知られています。そのため、m-SWCNTを除去する方法が最近になって開発されるまで、光起電力デバイスの高効率光吸収材料としてs-SWCNTを使用することは不可能でした。
現在の問題点の1つは、s-SWCNTの光吸収によって電子-正孔対(励起子)が生成する点にあります。励起子の電子と正孔は、室温の熱エネルギーを大幅に上回る>100 meVのエネルギーで互いに束縛されているため、自発的に解離して電気エネルギーの生成に必要な自由電荷になることが抑制されています41。我々は、s-SWCNTの薄膜を他の半導体と組み合わせてヘテロ接合を作ることで、励起子結合エネルギーを克服できることを示しました.42。励起子を高効率で解離させるためには、このヘテロ接合のバンドオフセットが励起子結合エネルギーよりも大きくなければなりません。例えば、ポリフルオレンで分離したs-SWCNTの中で、カイラル指数が(6,5)、(7,5)、(7,6)、(8,6)などのバンドギャップの大きいs-SWCNTの薄膜に対して、フラーレン-C60が優れた電子受容体となります。吸収されたフォトンのうち、フォトンの吸収で生成した電子と正孔のペアが分離して、バイアスがない状態でデバイスコンタクトにおいて捕捉された割合を定量化した量が内部量子効率(IQE:internal quantum efficiency)です。SWCNTの膜厚が~5 nm未満の場合、これらのs-SWCNTについてIQEは> 85%です43。(8,7)および(9,7)のSWCNTの場合、バンドオフセットが減少して励起子を解離させる力が低下するため、SWCNT/C60 ヘテロ接合のIQEは50%未満まで減少します44。
IQEに影響を与える別の要素は励起子の拡散長です。二層ヘテロ接合デバイスにおいて、光生成励起子は、再結合して熱として失われる前に、解離が起きるSWCNT/C60ヘテロ界面まで拡散しなければなりません。励起子は、SWCNTの長軸(チューブ内)に沿って拡散するか、SWCNT間(チューブ間)を移動できます。溶液キャスト法でSWCNT膜を作製すると、SWCNTが横を向いた形状になります。したがって、励起子は、チューブ間のホッピングでC60層まで拡散しなければなりません。チューブ間のホッピングの際に、励起子は、バンドギャップの大きいSWCNTからバンドギャップが小さいものへ移動する傾向があります(ダウンヒル型エネルギー移動)。そのため、バンドギャップの小さいナノチューブは非効率的なドナーとなり、励起子を閉じ込めてしまうので、m-SWCNTだけでなくバンドギャップの小さいナノチューブも避けることが重要です。最近のモデル計算で、s-SWCNTのカイラリティー分布が励起子の拡散長に著しい影響を与えることが示されており45 、励起子拡散長は、カイラリティーがほぼ単一なs-SWCNT膜で最大となることが予測されています。
最近の進展
Bindlらは、ほぼ単一のカイラル指数(7,5)のSWCNT膜を使用して、(7,5)ナノチューブのS1遷移における単色光での電力変換効率7.1%が得られたことを報告しました46。Sheaらが後に最適化を行い、擬似太陽光(AM1.5G)下での電力変換効率がほぼ1.0%(図5A~D)に達しました47。特に注目すべきは、これらのデバイスで電力変換を駆動する光吸収体のSWCNT膜厚が数ナノメートルしかないという点です。SWCNT膜を厚くすることで、電力変換効率が向上することが予想されるかもしれません。しかしながら、BindlおよびSheaらは、s-SWCNTの膜厚が5~8 nmの場合に、外部量子効率および電力変換が最適化されることを指摘しています。これは、上述したようにチューブ間のホッピングによる励起子の拡散長が短いため48、膜を厚くした場合に励起子の拡散効率の減少が吸収による増加の効果を上回り、最適な膜厚が限定されるためだと考えられます。
励起子の拡散長が短いために生じる問題を回避する一般的な方法は、ドナー中の光生成励起子から励起子の拡散長以内にアクセプター材料が位置するようにバルク(ブレンド型)ヘテロ接合デバイスを作製する方法です。ポリマー系バルクヘテロ接合(BHJ:bulk hetero junction)デバイスの大半は、P3HTなどのドナーポリマーとフラーレン誘導体アクセプターの両方を同程度の濃度で含む溶液をキャストする方法で作製されます。一般に使用されるP3HT:フラーレンBHJをSWCNT:フラーレン類似体と入れ替える際の問題点の1つは、分子サイズの小さいフラーレン誘導体の電子受容体と比べてPFOでラップされたSWCNTの溶解度が比較的低いという点です。Yeらは、s-SWCNTのエアロゲルを作成し、フラーレン誘導体溶液をエアロゲルに充填することで、溶解度の問題に対する1つの解決法を見出しました49 。この方法によって、励起子の拡散経路を制限することなく、SWCNTの遷移波長の吸光度を大幅に増加させることができました。Yeらは、AM1.5Gにおける電力変換効率が最大で1.7%だったことを報告しています(図5E~H)。他にも、s-SWCNTの太陽電池50,51および光検出器52の光吸収体としての利用に向けた進展が近年報告されています。
図5A)s-SWCNT膜の走査型電子顕微鏡画像。スケールバーは200 nm。B、C)二層型 s-SWCNT/C60ヘテロ接合太陽電池のデバイス概略図。D)AM1.5Gの照射条件下の二層型太陽電池の性能(許可を得て文献47より転載。copyright 2013 American Institute of Physics)。E)s-SWCNTエアロゲルへのPC71BMの挿入により作成されたバルクヘテロ接合の断面の顕微鏡写真。スケールバーは100 nm。F、G)バルクヘテロ接合型s-SWCNT:PC71BM太陽電池デバイスの概略図。(H)AM1.5Gの照射条件下の太陽電池の性能(許可を得て文献49 より転載。copyright 2014 Wiley)。
結論
ポリフルオレン分離法は、エレクトロニクスおよびオプトエレクトロニクス用途で使用可能なs-SWCNTを得るための単純でスケールアップ可能な方法です。この方法で単離したs-SWCNTは電子的性質の純度が少なくとも99.98%あるので、次世代電子機器および光電子機器の魅力的な材料となります。その中でも特に、我々のグループは、ポリフルオレンで分離したs-SWCNTの高性能FETならびに柔軟性および伸縮性を有するデバイスへの組み込み、太陽電池および光検出器における光吸収体としての利用について研究を進めています。今後も、単離や処理方法の発展がSWCNTを使用するデバイス性能の向上につながり、これら1次元材料の特性や挙動に関する知見を進展させることが予想されます。
Acknowledgments
Support is acknowledged from the National Science Foundation (CMMI-1129802), the University of Wisconsin National Science Foundation Materials Research Science and Engineering Center (MRSEC) (DMR-1121288), the National Science Foundation (DMR-1350537), the U.S. Army Research Office (W911NF-12-1-0025), and the Air Force Office of Scientific Research (FA9550-12-1-0063). GJB also acknowledges support from the National Science Foundation Graduate Research Fellowship Program under Grant No. DGE-1256259.
参考文献
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