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ホームクローニング・発現プラスミドベクターへの標的遺伝子のクローニング

プラスミドベクターへの標的遺伝子のクローニング

Oxford Genetics

クローニングシステムおよびプラスミドベクターの選択

遺伝子操作は、全世界の研究施設で使用されています。その重要性を考えると、一般的なDNAコンポーネントの多くのクローニング戦略が標準化されていないことは注目すべきです。クローニングキットおよび革新的な技術を利用できる多数の選択肢が、この標準化の欠如に関与しています。 制限酵素消化による従来のクローニングはOxford Geneticsの標準化プラスミドにより一層容易になっているため、IP- heavyキットの使用は必ずしも必要ではありません。

Oxford Geneticsでは、研究者が1つのプラスミド内に要求する機能性DNAインサートの大半を導入できるDNAプラスミドシステムを操作することを目標としています。開始ベクターの最適化により、私たちのシステムのすべてのDNAコンポーネントは、私たちがプレデザインし検証してきた数百もの他のDNAセクションと交換することができます。これがSnapFast™のコンセプトです。私たちの製品ではすべて、使用の少ないコドン・競合する制限部位について事前にスクリーニングを行っています。可能であれば、希少なコドン・制限部位を除去して十分な発現を可能にし、制限部位が他のSnapFast(スナップファスト)DNAセクションのクローニングを制限しないようにしています。

私たちは、世界中で利用される最大規模のプラスミドのコレクションの一つを揃えており、私たちが提供するほぼすべてのインサートに対する複数の発現・クローニングの選択肢を提供します。製品範囲には以下が含まれます:

  • 最大のペプチドタグ(26)
  • 5つの構造による計9つのレポーター遺伝子
  • 20を超えるシグナルペプチド
  • 哺乳動物・細菌・酵母発現用の40を超えるプロモーター
  • 合計10種の抗生物質・代謝セレクションのオプション
Snapfusion-概要

SnapFast(スナップファスト)システムの利点:

  • すべてのプラスミドは標準的クローニング・LIC・InFusionHD・Gibson Assembly・Seamless Geneartに適合しています。
  • 1,600を超える独自のDNAセクションが利用可能であり適合しています。
  • 容易・効率的・シンプルな遺伝子操作戦略。
  • プレデザインされた適合性による高い成功率。
  • インサートのサイズは制約されません。安定性向上のための低コピーオリジン。
  • 遺伝子導入を促進する多数の既存のクローニングベクター・広範なシャトルベクターに適合します。
  • SnapFast(スナップファスト)ベクターから、ウイルスベクターを含む様々な代替システムへの容易なクローニング。
  • 調節配列および機能(例、遺伝子連結・インスレーター・転写終結配列)に組み込まれています。

*ホモロジーまたはTypeIIS部位を利用したプライマーデザインを要する
**特許によりクローニング技術または製品の使用が制限される
^デザインに有用なオンラインで入手可能なツール
LIC = リガーゼ非依存性クローニング

プラスミドの制限酵素消化

分取的消化は、単にDNAを確認するためではなく、他のDNA断片を用いてライゲーション用に調製するためのDNAの切断です。フラグメント・ベクターの消化が同時に開始されることを目指します。これにより時間を節約します。このプロトコルは、200~300 ng/μLおよび約3~5 kbのTris-EDTA(TE)またはElution buffer(EB)もしくはヌクレアーゼフリーH2Oに溶解したプラスミド溶液を想定しています。同じ濃度ではプラスミドコピーは少なくなるため、大きいプラスミドほど、多くの容量が必要となる場合があります。

このような特定の例では、以下のとおり実施します。

プラスミド10~20 μL(200~300 ng/μL、総量3~5 μg)
10x制限酵素バッファー10 μL
10xウシ血清アルブミン10 μL(BSA、最終濃度は通常100 μg/mL)(カタログ番号A7906
制限酵素1:1.5~2 μL(10~20 units/μL)
制限酵素2:1.5~2 μL(オプション)
TE(カタログ番号T9285)またはヌクレアーゼフリー水(カタログ番号W4502)で総容量を70または100 μLにします。

上記試薬を無菌1.5 mLエッペンドルフチューブに添加します。最初にTEまたは水を添加し、その後、プラスミド/DNA、そして制限酵素バッファーとBSAを添加し、よく混ぜ合わせます。最後に制限酵素を添加します。選択した制限酵素はお客様の目的およびプラスミドマップにより変動しますが、EcoR I、BamH I、Hind IIIなどが含まれます。適切な温度(通常37℃ですが、25℃でのSwaIのような例外を扱っていないか確認します)で反応物をインキュベーションし、アラーム時計をスタートさせます(カウントアップ)。40~60分、反応を実施します。アルカリホスファターゼを用いてベクターを脱リン酸化することができます。(CIP)この時点で制限酵素を不活性化することをおすすめしており、標準的手法です。

アガロースゲル上で消化を行い(大量サンプルロード用の超大型ウェル付き)、シングルバンドの結果および線状化プラスミドのサイズを検査します。この消化から3つの結果が考えられます。

  • まったく有効ではありません。反応は失敗しているため、消化反応の延長は意味がありません。この酵素がかつて他のプラスミドに有効であった場合、可能であれば、切断を試みるプラスミドを再沈殿させる、または沈殿前に新たにフェノール抽出を行い再試行します。あるいは、他のプラスミドに用いている酵素がまだ有効であるか確認します。
  • 有効ですがベクターが40分では完全には切断されていません(ベクターから予測されるおおよその分子量で複数のバンドの存在を確認)。その進行から、所要時間を推測し、再度消化を試行することが可能です。
  • 完全に消化されています。線状化プラスミドはライゲーションに使用できます。

コツ:制限酵素は温度変化に敏感なため、氷上に置くことは避けます。-20℃のクールボックスの使用が理想的です。また、チューブの底部を指で保持することは避け、酵素ストックを処理する間も素早く作業するようにします。気をつけていれば、長時間維持されます。

フラグメントの制限酵素消化

これは分取的消化であり、単にDNAを確認するためではなく、他のDNA断片を用いてライゲーション用に調製するためのDNAの切断です。通常、これらのDNA断片は環状プラスミドですが、PCRフラグメントである場合もあります。フラグメントおよびベクターの消化が同時に開始されることを目指します。これにより後に時間を節約できます。

このプロトコルは、200~300 ng/μLおよび約3~5 kbのTris-EDTA(TE)またはElution buffer(EB)もしくはヌクレアーゼフリーH2Oに溶解したプラスミド溶液を想定しています。同じ濃度ではプラスミドコピーは少なくなるため、大きいプラスミドほど、多くの容量が必要となる場合があります。

このような特定の例では、以下のとおり実施します。

プラスミド10~20 μL(200~300 ng/μL、総量3~5 µg)
10x 制限酵素バッファー7.5 μL
10xウシ血清アルブミン7.5 μL(BSA、最終濃度は通常100 µg/mL)(カタログ番号A7906
制限酵素1:1.5~2 μL(10~20 u/μL)
制限酵素2:1.5~2 μL(オプション)
TE(カタログ番号T9285)またはヌクレアーゼフリー水(カタログ番号W4502)で総容量を70 μLにします。

DNAフラグメントの制限酵素消化プロトコル

上記試薬を無菌1.5 mLエッペンドルフチューブに添加します。最初にTEまたは水を添加し、その後、プラスミド/DNA、そして制限酵素バッファーとBSAを添加し、よく混ぜ合わせます。最後に制限酵素を添加します。適切な温度(通常37℃ですが、25℃でのSwaIのような例外を扱っていないか確認します)で反応物をインキュベーションし、アラーム時計をスタートさせます(カウントアップ)。40~60分、反応を実施します。アガロースゲル上で消化を行い(大量サンプルロード用の超大型ウェル付き)、シングルバンドの結果およびインサートのサイズを検査します。

DNAフラグメントのゲル切り出し

バンド切り出しのため、清浄なメスまたはカミソリ刃が必要です。DNAとともに取り出すアガロース量は重要な検討事項です。アガロースに対するDNA量の比率が高いほど、ライゲーションに持ち込む混入物量は少なくなります。

アガロースゲルからのDNA抽出に用いる標準的な手法は、UV光による臭化エチジウム(カタログ番号H5041)染色の可視化です。UVはDNAを損傷すると考えられ、変異を起こす可能性があり、ライゲーションの効率を低下させる可能性があるため、この手法は理想的ではありません。代替法として、Clare Chemical Dark Reader Trans-illuminatorの使用がありますが、ときに少量のバンドの確認が困難な場合があります。相当量のDNAをお持ちの場合、これらのシステムは理想的です。または、大きなウェルに隣接するレーンに少量の切り出されたDNAを実施させ、その位置を利用して隣のウェルの大量のDNAを切り出すことにより、blind excisionを行うことができます。一部のバンドではゲル内で縦方向/最上部~底部への方向に大変小さい可能性があり、精密に行わなければ見落とす可能性があるため、この技術については十分な注意が必要です。切り出し後、残りのゲルを観察してバンドの有無を確認することができます。DNAが得られなかった場合UVによる損傷は望ましくないため、速やかに行ってください。

互いに近接しているDNAフラグメントに注意します。この技術の重要な点は、汚染を防ぐためフラグメント由来のベクターバックボーンを分離することです。切り出しの際に何も見えないからとはいえ存在しないわけではなく、DNAのガウス分布のピークのみが見えています。バンドが分かれて見えるかもしれませんが、実際はそうではない可能性があり、偶然近接しているバンドからDNAを得る可能性があります。

コツ:分子生物学に関する限り、この手法は比較的危険です。UV光・発がん性の臭化エチジウム・メスがその原因です。施設ごとの安全に関する規則・規制をすべて遵守し、必要な予防措置について不明な点がある場合は、施設の安全管理者に相談してください。

コツ:DNA可視化のための安全な化学物質の選択について検討してください。Nancy 520(カタログ番号01494)・Syber Safe(カタログ番号S9305S9430)はいずれも、臭化エチジウムより変異原性が低いことが示されています。

ゲルフラグメントのクリーンアップ

アガロースゲルからのDNAフラグメントのゲル抽出には、通常ではGenElute™ゲル抽出キット(カタログ番号NA1111)のような調製済みキット以外は利用価値がありません。これらは比較的安価で非常に効果的です。キットを使用しない他の方法はあります(透析チューブの使用、パラフィルム間のゲルフラグメントを圧迫し溶液中にDNAを搾り出すなど)が、これらの方法の使用によりしばしば高レベルの汚染・DNA収量の低下がもたらされます。

DNAゲル抽出キットは、通常ビーズまたはスピンカラムで構成されています。各キットが対応できるDNAフラグメントのサイズは多様であるため、このキットがお客様が扱っているDNAサイズの範囲を抽出することを確認してください。大半のキットは100 bp~5 Kbをカバーしますが、カバーする能力が小さいものまたは大きいものがあります。

スピンカラムおよびビーズキットの原理はいずれも、DNAを何か(通常はシリカ樹脂)に結合させた後にビーズのペレット化またはカラム洗浄により汚染物を洗い流すことです。最終の溶出工程により、樹脂/ビーズ/カラムからDNAを遊離し、清浄なDNAフラグメントが得られます。しかしながら、最良の抽出キットでも一部の汚染物を保持することがあるため、ライゲーションでゲル抽出により産生された大量の溶出液を使用することは避けます。ライゲーションへのフラグメント添加に関しては、「添加量が少ないほど多く得られる」ことがあります。ライゲーションの構成が、ゲル抽出により単離された液体で容量の30%を超えないようにします。

ゲル抽出キットの変動性

私たちの業務に必須であるため、私たちの研究施設で6種のDNAゲル抽出キットを直接比較した検査をしました。一部のキットでは一貫して高い収量および高純度のDNAが得られましたが、他のキットでは高収量が得られるものの不成功となることがあり、また別のキットでは一貫してアンダーパフォームでした。

プラスミドからフラグメントをゲル抽出する場合、大きいプラスミド(おそらく約5 kb)で開始し、はるかに小さいサブフラクション(おそらく1 kb)に切断し、ゲルからのDNA抽出効率は100%にはならないので、おそらくDNA濃度の値(分光光度計使用の場合)は低いであろうと予測されます。このため、プラスミドDNA(5Kb)5 μgから単離した1 Kbフラグメントが濃度20ng/μLで35 μL得られれば収量としては決して悪くありません(DNAの70%回収)。

DNA収量そのものより汚染物濃度またはDNAの品質のほうがクローニング成否の重要な決定要因であることは、よくあります。また、ライゲーションへのフラグメントの添加量を増やすことは、添加量をわずかに減らした同じ反応と比べてクローニングの成功を減らす場合があることも一貫してみられています。これは単に過剰量のDNA末端でベクター末端のリガーゼが足りなくなったかもしれませんが、ゲル抽出された材料の過剰な添加による低濃度汚染物が寄与している可能性があります。

ライゲーションのためのDNAオリゴのアニーリング

オリゴのアニーリングの基本コンセプトは、2つのオリゴヌクレオチドを変性するまで加熱し、その後の冷却期間により2つのオリゴを塩基対化させることです。カスタムオリゴについては、OLIGOをご参照ください。多くの場合、この工程は短いDNAセクションを調製するのに使用されます。

  • ライゲーションのためのshRNA DNA領域の作製
  • ライゲーションのためのmicroRNA DNA領域の作製
  • 制限部位の除去または追加のためのリンカー添加
  • DNAタンパク質バインディングアッセイなど、小さな二重鎖DNA領域を要する研究

大量のリン酸化オリゴの購入費は法外なものになる可能性があります。このため、多くのグループは脱リン酸化されていないベクターにオリゴをライゲーションさせるのみです。この方法は、不適合な末端(べクターの自己閉環を防ぐ)を有する2つの別々の制限酵素により切断されたベクターにオリゴをライゲーションしなければいけない場合に特に有効です。ライゲーションからのバックグラウンドはまだ高い可能性がありますが、オリゴライゲーションにおいてオリゴは大いに過剰であることが多いため、反応はなお有効です。

また、ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)を用いて最初にオリゴをリン酸化することもできますが、その短さのためDNAクリーンアップカラムに結合しない可能性があることから、オリゴのクリーンアップは困難です。しかしながら、PNK反応はリガーゼバッファー中で行われるため必要ではない場合もありますが、オリゴをライゲーションに添加する前にPNKは熱不活化する必要があります。そうしなかった場合、PNKはベクターをリン酸化します。

ホスホアミダイト法は、一般的にオリゴを産生する方法であり、通常ではあまり失敗することなく40〜50塩基を産生することで信頼されていますが、この手法を用いて100塩基以上のオリゴを産生すると、しばしば変異をもたらします。よくあることですが、長いオリゴを、反対側のオリゴの中央で10〜15塩基対のオーバーラップを有する2つの短いオリゴに分割し、それらを結合できるようにするほうが良好です。後続のシークエンシングで起こる変異の頻度ははるかに低くなります。

ライゲーションのためのDNAオリゴのアニーリング

冷却工程を検討します。私たちは、オリゴを95℃に加熱した後に電源を切って冷却する、または三脚(旧式)上のビーカー中で100℃に加熱した後に冷却のためビーカーを氷水に入れる(チューブ中のオリゴをビーカー内に入れたまま)ことにより、シンプルにオリゴを水浴で冷却することを試みました。また、PCR装置にオリゴをセットし、30秒ごとに5℃刻みでの冷却を試みました。実際には、この方法は大きな差を生じません。高温で長時間放置することにより加水分解をもたらす可能性があるため、水浴の電源を切るのみとすることは避けます。私たちは通常、フロート上にオリゴの入ったエッペンドルフチューブを載せたビーカー内で、水浴で95℃に加熱します。その後、10分間氷水中にこれを静置します。この方法は私たちには十分有効であるようですが、他の方法が有効である可能性があります。

オリゴがインサートされる部位を再構成するオーバーハングを有するオリゴの設計は困難な場合があります。下図は、オリゴをどのように示すかの例を示しています。この例では、オリゴはNcoI・XbaI制限部位にライゲーションされます。

オリゴはNcoI・XbaI制限部位にライゲーションされます。

DNAオリゴのアニーリングのプロトコル

コツ:オリゴ・プライマーストックは、しばしば100 μM(100 pmol/μL)の濃度で再懸濁されます。

  1. ヌクレアーゼフリー水(カタログ番号W4502)25 μLにストックオリゴ10 μL(2つアニーリングすると仮定)を添加し、1.5 mLマイクロチューブに移します。
  2. 制限酵素消化バッファー5 μL(100mM NaCl(カタログ番号S3014)、50 mM Tris-HCl(カタログ番号93362など)、10 mM MgCl2(カタログ番号M0250)、1 mMジチオトレイトール(カタログ番号D0632)、pH 7.9を添加します。このバッファーは、DNA安定性に適正なpHを維持するのに有用であり、塩はアニーリングを促進します。現在のオリゴ濃度は20 pmol/μLです。
  3. 95℃に予熱した温水で5分間、ビーカー内でチューブを浮かせます。
  4. 氷水で満たしたアイスボックスにビーカーを入れ、ビーカーを10分冷却します。
  5. ビーカー内の水が冷めたら、オリゴを水で10倍および100倍に希釈します。このうち1 μLを標準ライゲーション反応液20 μLに添加します。さらに追加したいところですが、これはベクター末端に作用するリガーゼを減らし過剰なオリゴを増やすのみであり、ライゲーションの効率を低下させる可能性があります。ライゲーション時のオリゴの最終濃度は、約2または0.2 pmol/μLになると考えられます。この濃度はベクターには大いに過剰なオリゴとなります。

DNAに5'リン酸を添加

T4 DNAリガーゼは、DNAと結合するために、ライゲーションするDNA分子の一つに5'リン酸を必要とします。この理由により、例えばPCR産物の平滑クローニング時など、ライゲーションに添加する前にしばしばDNA分子のリン酸化が必要となります。

DNAリン酸化プロトコル

ヌクレアーゼフリー水(カタログ番号W4502):4.5 μL
PCR産物またはその他のDNA(クリーンアップ):4 μL(PCR産物が5'陥凹または平滑末端を有する場合、反応液添加前に70℃に5分加熱し、氷冷します)
10 x T4 DNAリガーゼバッファー:1 μL(ATPを含有するためリガーゼバッファーを使用)
T4ポリヌクレオチドキナーゼ:0.5 μL

キナーゼ反応液を37℃で30分インキュベーションします。その後、リン酸化したPCR産物をクリーンアップすることなく直接ライゲーション反応液に使用します(例えば部位特異的変異誘発実施時)。PCR産物を脱リン酸化ベクターにライゲーションする場合、PNK酵素の熱不活化により、バックボーンベクターのリン酸化・高いバックグラウンドへの誘導を防ぐことができます。これは65℃で20分、反応液をインキュベーションすることにより達成されます。

DNAの脱リン酸化

ベクターの脱リン酸化の目的は、ホスホジエステルDNA骨格と結合するためにDNAリガーゼに必要とされる5'リン酸基を除去することにより、ライゲーション工程中にベクター自身のライゲーションを防ぐことです。仔牛腸由来ホスファターゼ(CIP)・Shrimp phosphatase・Antarctic phosphatasesなど、様々なアルカリホスファターゼが存在します。CIP(カタログ番号P4978)は、最も汎用されていますが、熱不活化が困難です。異なる酵素では温度・バッファーは異なります。製造業者の指示をご参照ください。

制限酵素消化反応液中でDNAを脱リン酸化するためのDNA脱リン酸化プロトコル

DNA(5μg)50~100 μL、制限酵素消化反応液/溶液
CIP酵素(1 unit/μL)1~2 μL

  1. 制限酵素消化反応液にCIP1~2 μLを添加します。CIPは、大半の制限酵素消化バッファーで安定であり活性を示します。
  2. 37℃で30~60分、インキュベーションします。

TEまたはH2O中でDNAを脱リン酸化するためのDNA脱リン酸化プロトコル

DNA(5µg)20~40 μL、TE(カタログ番号T9285)またはヌクレアーゼフリーH2O(カタログ番号W4502
10xCIPバッファー5 μL
CIP酵素(1 unit/µL)1~2 μL
50 μLにします。

  1. 無菌1.5 mLエッペンドルフチューブ内で、DNA、CIPバッファー、CIP 1~2 μLの順に添加します。
  2. ピペットチップを使って十分に混和し、37℃で30~60分、インキュベーションします。

コツ1:脱リン酸化ベクターにライゲーションするフラグメントが5'リン酸基を有することを確認します。標準オリゴ/プライマー・PCR産物は一般的にリン酸化されておらず、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理する必要があります(5’末端リン酸化を参照)。PCR産物末端(さらに末端にいくつかの追加塩基対)に制限部位を追加することは、通常は、リン酸化フラグメントよりも容易です。

コツ2:CIPは安定性のためグリセロールバッファー中に保存されていますが、これは水溶液の底に沈んでいることを意味しています。CIP添加の際、正面にチューブを掲げて、DNA混合物中に滴下するのを観察し、インキュベーション前に適切に再懸濁されているか確認してください。

DNA平滑クローニングプロトコル

ときにDNA分子の末端を平滑にする必要があります。例えば、

  • DNAライブラリー作成時
  • ベクターにクローニングされる必要がある、不規則な末端を有する剪断されたDNA

適合する制限部位の選択が不可能な状況では、ライゲーション前にベクターおよびインサートまたはその両方を平滑化する必要があります(最後の手段である場合もあります)。DNAポリメラーゼ(KlenowまたはT4)またはマングビーンヌクレアーゼいずれかを使用する2つの選択肢があります。KlenowおよびT4 DNAポリメラーゼはいずれも5’オーバーハングを埋め、3’オーバーハングを削ります。5’オーバーハングを埋める必要がある場合はいずれの酵素でも良好ですが、3’オーバーハングを除去する場合は、強力な3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を有するためT4のほうが優れている可能性があります。マングビーンヌクレアーゼは5’および3’オーバーハングの両方を削ります。

Klenow平滑化プロトコル

  1. DNAは、各dNTP 33 μM[最終濃度]を添加した1x制限酵素消化バッファーまたはT4 DNAリガーゼ反応バッファーに溶解します。
  2. Klenow 1 unit/DNA μgを添加し、25℃で15分インキュベーションします。
  3. EDTAを最終濃度10mMまで添加することにより反応を停止した後、75℃で20分加熱します。

T4平滑化法

  1. DNAは、dNTPs 100 μM[最終濃度]を添加した1x制限酵素消化バッファーに溶解します。
  2. T4 DNAポリメラーゼ1 unit/DNA μgを添加し、12℃で15分インキュベーションします。
  3. EDTAを最終濃度10 mMまで添加することにより反応を停止した後、75℃で20分加熱します。

マングビーンヌクレアーゼ平滑化法

  1. 1xマングビーンヌクレアーゼバッファーまたは制限酵素消化バッファーでDNA(0.1 μg/μL)を懸濁します。
  2. マングビーンヌクレアーゼ1.0 unit/DNA μgを添加します。
  3. 30℃で30分間インキュベーションします。

酵素が不活化される前にDNAの1本鎖領域が現れ、意図しない分解がもたらされるため、マングビーンヌクレアーゼの熱不活化を試みないでください。スピンカラム精製またはフェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により酵素を不活化してください。

DNAライゲーションプロトコル

クローニングプロセス中は、すべての経路がライゲーションにつながっているため、先行するすべての工程が効率に大きく影響する可能性があります。ライゲーション反応の前に各セクションのコツおよび注釈を読むことは重要です。

ライゲーション反応は、コントロールとともにセットアップされます。通常、以下の2つのコントロールを使用します:

  • リガーゼなし、ベクターのみ(切断されていないベクターのコントロール)
  • リガーゼを有するベクター(コントロール1と使用したときの不十分な脱リン酸化のコントロール)。
  • 実際のライゲーションは、ベクター+フラグメント+リガーゼです。

コントロール1でコロニーが認められた場合、リガーゼなしでコロニーが形成されたため、ベクターの制限酵素消化は有効ではありませんでした。コントロール2でコロニーが認められたもののコントロール1で認められなかった場合、アルカリホスファターゼ処理は有効ではありませんでした。これは、制限酵素は十分有効でしたが(コントロール1でコロニーが認められなかった)、脱リン酸化の際に5’リン酸が除去されなかったことによりリガーゼがプラスミドを再び環状化することができたためです。コントロール3でコロニーが認められ、コントロール1および2で認められなかった(または少なく認められた)場合、成功ですので、いくつかコロニーをピックアップしてください。

反応条件は研究施設によって異なることがあります。最良の結果は16℃オーバーナイト反応により達成されますが、このことは全プロセスに1日追加することを意味しています(4日間のクローニングサイクルになります)。室温で1~2時間のライゲーション実施は、通常は良好な結果をもたらし、クローニングを完全なサイクルで3日間に短縮します。この方法は、初日の作業が長いことが問題ではない場合に実施されます。

2つの最も困難なタイプのライゲーションは、PCR産物のライゲーションおよび平滑末端のライゲーションです。これらはベクターからベクターへの標準的なフラグメントクローニングと比べて効率が低いことを予測すべきです。

通常の反応は以下のとおりセットアップできます。

  1. すべての反応で共有するコンポーネントの追加により反応を開始します。すなわち、水・バッファー・ベクターの順で各チューブに追加します。
  2. それから、ライゲーションチューブにフラグメントを添加します。
  3. 最後に、ライゲーションチューブおよび適切なコントロールチューブにリガーゼを添加します。DNAリガーゼは剪断されやすいため、反応液をボルテックスしないでください。代わりに、リガーゼを添加したチップでよくかき混ぜる、および/または指で繰り返し優しくはじくことにより混和します。
  4. 室温で1~2時間、または16℃でオーバーナイト、インキュベーションします。65℃で20分、ライゲーションを熱不活化する人もいますが、厳密には必要ではありません。
  5. ライゲーションが完了したら、プラスミドを用いて細菌を形質転換し、直接タンパク質を発現する、またはさらなる使用のためプラスミドDNAを増幅します。

コツ1:リガーゼバッファー中のBSAは、凍結融解時に沈殿し、バッファー底部に白い沈殿として認められます。ボルテックスし、および指の間でまたは37℃で一時的に加温することにより再懸濁します。

コツ2:リガーンゼバッファーはATPを含有しますが、ATPは複数の凍結融解サイクル後に分解します。バッファーストックを少量保管しておき、3サイクル超の後に廃棄します。

コツ3:1つの制限部位ライゲーション使用時に、粘着末端を開くためにライゲーション(酵素添加前)を37℃に数分間加熱することは、一時的に再環状化したベクターの線状化に役立ちます。酵素添加前にライゲーション液を室温に戻し、添加時にリガーゼを損傷するのを回避します。私たちはこれを実施しませんが、実施している他の研究者からは有用となりうると聞いています。

コツ4:ライゲーション前にプロテイナーゼKとともにPCR産物を処理することがライゲーションとともに有用であると報告されています。PCRクリーンアップキットを精製に使用することと同様、PCR産物のゲル抽出をすれば上記の操作は不要となります。

コツ5:ゲルから抽出する際にDNAをUVに曝露することは避けてください。これは一部の例でライゲーション効率を劇的に低下させる可能性があります。

コツ6:ゲル精製材料のライゲーション総容量(通常の総容量は20 μL)の20~30%を超える使用は避けます。これを実施した場合、反応において過剰な塩・他の汚染物が存在する可能性があり、ライゲーション効率が低下する可能性があります。

コツ7:アガロースゲルで反応を実施した場合、ベクター量はおそらくかろうじて見える程度であるため、約20~30 ngです。フラグメントはより豊富に存在する必要がありますが、濃度はベクターと比べて5~10倍を超えない必要があります。私たちは通常、ベクター対フラグメント比で1:2または1:3で使用しています。

インサート対ベクター比の算出

インサート対ベクターの分子比は、ライゲーションおよびその後の形質転換工程の転帰に重大な影響を及ぼす可能性があります。インサート対ベクターの分子比は、1:1から10:1にまで変動する可能性があります。最良の結果のためにいくつかの比率を並行して試行する必要があるかもしれません。下記の計算により、6:1(フラグメント:ベクター)の比率で計算したベクターに対するフラグメントの量が分かります。この式の3は、数値変更により別の濃度を算出します。

ライゲーション計算器

部位特異的突然変異誘発プロトコル

部位特異的突然変異誘発(SDM)は、特定の変異をプラスミドの特定の部位に導入するのに有用な技術です。この変異は、置換・挿入・欠失である可能性があります。SDMには多数のアプリケーションがあり、例えば酵素内の特定のアミノ酸の機能を評価する、プロモーター内の塩基の変化またはプラスミドからの制限部位の除去の影響を調査するといったものが挙げられます。

ここでは、PCRに基づく部位特異的突然変異誘発法について述べています。基本原理は、プラスミド全体がPCRにより増幅されるよう、1対のPCRプライマーを背中合わせ(back to back)でデザインすることです。これらのプライマーの一つは、目的の変異を組み入れています。PCRは直鎖状の産物を生成し、その末端はその後DNAリガーゼにより結合します(リン酸化の後)。環状化ベクターは、E. coli.に形質転換されます。

ステップ1突然変異誘発のプロセス・プライマーデザイン

プライマーの一つの5'末端に要望する変異を組み入れた1対のプライマーをデザインします。相補領域のTmが約60℃になるようデザインします。

例:

突然変異誘発

フォワードプライマーのみが変異を有するため、リバースプライマーを同じままで異なるフォワードプライマーを使用することにより、容易に一連の多様な変異を作ることができる点に注意すべきです。上記例は3塩基対の置換ですが、同じ方法で挿入が可能です。きわめて大きな規模の置換または挿入を要する場合、変異塩基を両プライマーの5'末端に導入します。

あらゆるサイズの欠失は、テンプレート上にフォワードプライマーとリバースプライマーを離れて置くことにより作ることができます。

PCRプライマーは通常、その合成方法により5'末端にリン酸基がありません。このことは、PCR産物の末端は単にライゲーションすることはできず、最初にリン酸化される必要があることを意味しています。これには主に2つの選択肢があります。1)5'末端にリン酸塩が付加済みのプライマーを注文することが可能です。または2)ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)によりPCR産物をリン酸化することができます。リン酸化プライマーは、少数のSDMを実施するのみであり冷凍庫にPNKを持っていない場合に有効です(また、工程を省略できます)。PNKの使用は、多数のSDMを実施する場合に費用対効果がより高いです(おそらく10回以上)。

ステップ2:PCR

他の変異の導入を避けるため、チェック済みのポリメラーゼの使用は重要です。したがって、変異の導入になお不安がある場合、突然変異誘発後、同じバックボーンに変異フラグメントをサブクローンすることができます。

この方法はPCRに基づいているため、小さいプラスミドのほうが有効に作用する傾向があります。ポリメラーゼに付属する説明書に従うことが最善ですが、この例に類似したPCRをセットアップします。

水35.5 μL
10xポリメラーゼバッファー5 μL
フォワードプライマー1.5 μL(最終濃度0.3 μM)
リバースプライマー1.5 μL(最終濃度0.3 μM)
dNTPs 5 μL(最終濃度200 μM)
テンプレートDNA1 μ(mini-prepの100倍希釈)
ポリメラーゼ0.5 μL

氷上に反応液を静置し、反応液を混和直後に予熱したPCRブロックにチューブを移します。

PCRプログラム:

  1. 98℃、60秒
  2. 98℃、8秒
  3. 55~65℃、20秒
  4. 72℃(伸長時間はプラスミドのサイズおよび使用したポリメラーゼの種類によって変動します)、ステップ2~4をさらに27~30回反復/循環します
    572℃、5分

室温で保持します。

ステップ3:PCR産物をクリーンアップする

アガロースゲル上で反応液全体を電気泳動します。バンドを切り出し、ゲル抽出キットを用いてDNAをクリーンアップし、30 μLで溶出します。

ステップ4:5'末端をリン酸化する

*PCRでリン酸化オリゴを使用した場合、このステップは省略可能です。

ヌクレアーゼフリー水4.5 μL(カタログ番号W4502
PCR産物
10x T4 DNAリガーゼバッファー*1 μL
T4ポリヌクレオチドキナーゼ0.5 μL

37℃で40分間インキュベートします。

*リガーゼバッファーが使用される理由は、すでにATPを含有しており、PNKはバッファー中で活性を有しているためです。

ステップ5:DNA末端をライゲーションする

ライゲーション反応液を氷上に静置します。

ヌクレアーゼフリー水6.7 μL(カタログ番号W4502
PNK反応液(ステップ5より)2 μL
10x T4 DNAリガーゼバッファー0.8 μL
T4 DNAリガーゼ0.5 μL

16℃でオーバーナイト、または室温で2時間、インキュベーションします。

ステップ6:コンピテントセルE. coliに形質転換する

ステップ7:DNA配列決定により変異を確認

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