単層カーボンナノチューブ:剥離および単一本化の方法
単層カーボンナノチューブの分散液
CoMoCAT®プロセスにより製造された単層カーボンナノチューブ(SWCNT:single-walled carbon nanotube)の分散およびバンドルとよばれる束状構造の剥離は、幅広く研究されています1。SWCNTの分散に用いられる手順は、溶液濃度、安定性、個々のナノチューブの割合などの最終分散液の特性に大きな影響を与えます。バンドルの一部分しか剥離していない状態のナノチューブの分散液が得られるとしても、目的としては剥離したナノチューブの分散液を調製する点にあります。SWCNTの共有結合的および非共有結合的安定化を含めた多くのアプローチを用いることで、SWCNTの安定で均一な分散液を調製することができます。非共有結合的アプローチは、ナノチューブの表面構造と性質をそのまま残すことができるため、特に関心を集めています。
一般的な分散手順では、界面活性剤をSWCNT表面に吸着させ、溶液を超音波処理することで、カーボンナノチューブの一本化または剥離を行います。界面活性剤分子に覆われた個々のナノチューブの密度は水とほぼ同じであるため、単離したSWCNTから炭素質不純物とSWCNTバンドルを分離するには、20,000~170,000 x g での遠心分離が必要になります。より小さなバンドルは、追加の超音波処理(任意)で分離することが可能で、分散液に含まれる分離したナノチューブの割合を増やすことができます(図1参照)。
図1ナノチューブのバンドルからの分離機構の提案2
調製手順の概要
界面活性剤原液 - コール酸ナトリウム(C6445)の脱イオン水溶液を調製します(2 mg/mL)。代わりに使用できる界面活性剤には、デオキシコール酸ナトリウム(D6750)やドデシル硫酸ナトリウム(SDS、436143)があります。
- 超音波処理によりバンドルの末端がほつれます。
- バンドルの末端から、界面活性剤がさらに吸着していきます。
- このプロセスはunzippering(ファスナーを開ける)方式で進んでいきます。
- 最終的に、界面活性剤で被覆された単離したナノチューブが溶液中に放出されることで終了します。
手順
- 1~2 mgのSWCNTを7 mLの界面活性剤原液に加えます。
- 超音波ホモジナイザーとマイクロチップを使って、出力密度1 W/mLで1時間、超音波処理します。超音波処理中は溶液を冷却する必要があります。
注記:過剰な超音波処理によってSWCNTは短くなります。 - 相対遠心力(RCF:relative centrifugal force)25,000~32,000 xgで30分間、遠心分離します。遠心分離処理は、SWCNTの分散に加えて、グラファイト、残留触媒およびアモルファスカーボン、さらには大きなバンドルをペレットにして除去することで生成物の品質を高めることができます。CoMoCATカーボンナノチューブ製品の場合は、これら不純物の量は最小限となっています。
注意:遠心分離時間を延長し、RCF値を高めることで、小さなバンドルを除去し、最終分散液中のナノチューブの分布を狭めることができます。 - ダブルビーム分光計とタングステンフィラメント電球を備えた装置を用いて、標準的な光学ガラスキュベット(光路長1 cm)における780 nmでの吸光度が1 AUを下回るまで分散液を界面活性剤原液で希釈します。
図2剥離したカイラリティ(6,5)および(7,6)の単層カーボンナノチューブ(それぞれ704148、704121)の光学吸収スペクトル
参考文献
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