プリンテッドなフレキシブル有機熱電素子:可能性と課題
Xuyi Luo1, Bob C. Schroeder2*, Chong-an Di3*, Jianguo Mei1*
1Department of Chemistry, Purdue University, 560 Oval Dr. West Lafayette, IN, 47907, USA., 2The Organic Thermoelectric Laboratory, Materials Research Institute and School of Biological & Chemical Sciences, Queen Mary University of London, Mile End Road, London E1 4NS, United Kingdom., 3Beijing National Laboratory for Molecular Sciences, CAS Key Laboratory of Organic Solids, Institute of Chemistry, Chinese Academy of Sciences, Beijing 100190, China.
Material Matters 2017, Vol.12 No.3
b.c.schroeder@qmul.ac.uk, dicha@iccas.ac.cn, jgmei@purdue.edu
はじめに
人口増加や生活水準の向上に応じた需要のため、持続可能エネルギーを促進する技術に対する関心が今までになく高まっています。米国エネルギー省によると、米国内で消費される全燃料のエネルギーの50%が排熱として環境に放出されています1。商業活動や工業活動からの排熱を回収して電気に変換することができれば、米国の全電力需要の最大20%が満たされることになります。熱電素子は熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換するもので、再生エネルギー技術の中で最も有望視されている技術の1つです。
熱電材料に熱勾配を加えると、ゼーベック効果により電位が発生します(図1)。逆の過程はペルティエ効果として知られています。温度勾配が電荷キャリアの拡散を引き起こすため、得られる電位は材料の両端に与えられた温度差に直接比例します。
ここで、S はゼーベック係数です。熱電性能指数ZT は次式で定義されます。
ここで、σ は電気伝導率、k は熱伝導率です。ゼーベック係数S は、電荷輸送あたりの平均エントロピーに関わる係数で、温度勾配から大きな電圧差を得るためには大きな値である必要があります。ただし、最大のZT を得るために最適化が必要なパラメータはゼーベック係数だけではありません。電荷輸送のジュール熱によるエネルギー散逸を最小限に抑えるため、電気伝導率σ は大きくなければなりません。上記2つのパラメータに加えて、優れた熱電材料を得るには、熱流を抑えて熱伝導率k を低減する必要があります。電気伝導率と熱伝導率はキャリア濃度の関数であり独立した制御ができないため、高性能熱電材料の設計は容易ではなく、一方のパラメータを最適化するともう一方が悪影響を受けることになります2。この相互依存性は、長年にわたって熱電材料開発における障害となっています。無機ナノ構造材料を使用した進展が見られていますが、材料設計の複雑性が増加し、高い製造コストと高度な製造工程のため、代替エネルギー技術としての熱電発電デバイスの市場への導入は困難になっています。
図1A)熱電発電素子およびB)ペルティエ素子の動作原理。一般に、熱電素子は電極を介して直列に接続されたp型とn型の熱電材料で構成されます。
有機熱電材料は、従来の熱電材料に代わるものとして注目が高まっており、急速に開発が進んでいます。特に、低質な排熱の回収において有望です。従来の有機半導体には良好な熱電性能を示すものが複数あり、p型とn型の有機熱電材料で、0.1を超える高いZT 値が得られています3,4。無機および有機熱電材料の開発には、「Electron Crystals and Phonon Glasses」と呼ばれる設計指針があります。無機熱電材料とは対照的に、有機半導体は本質的に熱伝導率が低いため、有機熱電材料の研究では「electron crystal」の実現が目指されています。S2すなわちパワーファクター(PF)を増加させることが、有機熱電材料の性能を向上させる重要な戦略となっています。電気伝導率(σ )は、各キャリアの電荷e、移動度μ 、キャリア濃度n を用いて次式で表されます。
ただし、通常ゼーベック係数S はキャリア濃度の増加に伴い減少します。このS とσ にトレードオフの関係があるため、パワーファクターの最適化が必要となり、現在はドーピングレベルの精密な調節によって達成されています。
有機熱電材料の進展
有機半導体は、本質的に低い熱伝導率(≈ 0.3 W m–1 K–1)と高い電気伝導率(> 1,000 S cm–2)にもかかわらず、熱電材料として研究の対象にはほとんど取り上げられてきませんでした5–6。有機熱電素子の開発における2つの課題は、キャリア濃度とデバイス構造です。まず、高い電気伝導率とゼーベック係数を得るためには、ドーピングにより有機半導体の電荷キャリア密度を制御することが不可欠です。次に、最も一般的な熱電発電素子の構造は、p型とn型半導体の各単素子を熱的に並列、電気的に直列に接続した構造です。代表的なp型およびn型の半導体ポリマーとドーパントを図2に示します。
図2代表的なp型およびn型の半導体ポリマーおよびドーパント
今までに開発された最も成功を収めているp型材料は、言うまでもなく、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)であり、正に帯電したPEDOTと負に帯電したPSSで構成されます。PEDOT:PSSは水分散液として市販されているため処理が容易であり、このことも広く使われている理由になっています。PEDOT:PSSは多様な堆積法を用いて処理が可能で、その電気伝導率は、堆積の手順と使用する添加剤に大きく影響され、10–2から103 S cm–1の値をとります7。最も広く使用されている添加剤は、高沸点共溶媒や界面活性剤(ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、Zonyl®など)で、PEDOT領域の秩序性が向上し伝導率が高くなります8。共役系PEDOTとは対照的に、飽和したPSSは絶縁性で電荷輸送を妨げます。そのため、堆積したPEDOT:PSSフィルムからPSSを除去することで、フィルム中の導電性PEDOTの重量分率を増加させ、伝導率を約1,000 S cm–1まで向上させることができます4。さらに、フィルムの堆積を十分に制御することでPEDOT:PSS膜中の相分離の制御が可能になり、PEDOT骨格に沿った乱れを抑え、PEDOT:PSSの電子特性を向上させることができます。その結果、伝導率として最高の4,600(±100) S cm–1が得られています9。継続的なPEDOT:PSSの伝導率向上によって、熱電用途への利用可能性も高まっています。PEDOTフィルムのドープ/脱ドープは容易であるため、電気伝導率だけでなくゼーベック係数の調節にも適用可能です。Crispinらは、高伝導率PEDOT:tosylateをtetrakis(dimethylamino)ethyleneで脱ドープすることで、300 μW m–1 K–2のパワーファクターと0.25のZT 値が得られたことを報告しています10。PEDOT:PSSの脱ドープの他には、熱電特性の調節方法としてカーボンナノチューブやグラフェンの添加が多用されています11。複合フィルムを慎重に構築することで、伝導率105 S m–1およびゼーベック係数120 μV K–1が測定されており、熱電パワーファクターは2710 μW m–1 K–2に達しています。これは、有機熱電材料に関して報告されている最高値の1つです12。
有機半導体のp型ドープは比較的容易ですが、n型ドープを行うにはより困難が伴います。電子不足性有機半導体は電子親和力が大きいため(–3~–4 eV)、負に帯電した分子が周囲の水や酸素と反応しやすくなります13,14。熱電用途で最初に利用されたn型有機半導体の1つが電荷移動塩です。テトラチアフルバレン(TTF)とテトラシアノキノジメタン(TCNQ)の共結晶は、有望な熱電特性を示す電荷移動塩としておそらく最も研究されている材料で、その電気伝導率は500 S cm–1で、パワーファクターは最大40 μW m–1 K–1という値が得られています。ただし、以下の欠点から、電荷移動塩を熱電材料として使用できる可能性は大幅に制限されています。まず、共結晶の化学量論性を厳密に守らなければならないため、組成変更の余地がほとんどなく、キャリア密度の調節が困難です。次に、共結晶の物理的性質が等方的ではなく、結晶軸に大きく依存してしまう点にあります15。熱電用途向けn型導電体の開発に関する他の手法として、ペリレンジイミドやナフタレンジイミド構造を含む有機半導体が注目されています。Segalmanらは、3級アミンを含む側鎖で修飾されたペリレンジイミド(PDI)系分子半導体を開発しました16。熱アニールの際に、分子内の3級アンモニウム水酸化物の脱水反応を介して、官能基化PDI部分が自己ドープします。興味深いことに、自己ドープしたPDI化合物は、高い環境安定性と熱電特性を示します17。側鎖を慎重に設計することで、自己ドープしたPDI部分では伝導率0.5 S cm–1が得られ、パワーファクターは最高で1.4 μW m–1 K–2に達します。自己ドープしたPDIのX線回折パターンによると、電荷キャリアの輸送が結晶間の欠陥により制限されている可能性が高く、材料の最適化の余地は大きいと考えられます。Chabinycらは、高性能n型ポリマーであるP(NDIOD-T2)(poly{[N,N’ -bis(2-octyldodecyl)-1,4,5,8-napthalenedicarboximide-2,6-diyl]-alt-5,5’-(2,2’-bithiophene)})を、分子ドーパントのN-DMBI(4-(1,3-dimethyl-2,3-dihydro-1H-benzoimidazol-2-yl)phenyl)でドープしています18。ドーパント添加量の増加に伴い伝導率が最初は上昇しますが、さらに添加すると伝導率は急激に低下します。この理由は、ポリマー相におけるN-DMBIドーパントの混和性が限られているため、高い添加量ではドーパントの結晶化によりポリマーマトリックスから相分離が起き、ドーピング効率が減少すると考えられます。形態の不安定性はあるものの、ゼーベック係数が–850 μV K–1、パワーファクターは0.6 μW m–1 K–2の値が得られています。最近では、PeiらがBDOPVを基盤としたFBDPPVポリマーを使用して28 μW m–1 K–2のパワーファクターを報告しています19。さらに興味深いことに、Huangらの報告によると、ビスマスを用いた界面ドーピングによって、チオフェン-ジケトピロロピロール系キノイダル(TDPPQ)で113 μW m–1 K–2という大きなパワーファクターが得られています。この値は、n型低分子で報告されている最高記録です20。
有機熱電デバイスの進歩
有機熱電研究は、依然として最先端材料の開発を中心に行われていますが、次の2つの主な理由から、デバイス設計も重要な研究対象になっています。有機材料の構造と性質との関係を研究するためにパワーファクターとZT の値が広く用いられていますが、熱電性能を評価してこれら関係性を明らかにする最終的な方法として、デバイスの電力出力を用いることができます。さらに、応用を目指した研究の観点から見た場合、熱電デバイスの変換効率は素子構造や界面特性に強く依存します。したがって、デバイス構造の新たな設計、フレキシブルな熱電モジュールの作製、溶液プロセス(ロール・ツー・ロール方式およびインクジェット印刷)法の開発を進めることは、発電、ペルティエ冷却、その他多くの用途の実現につながります。
これまでのところ、有機材料を使用した発電システムの例はまだ少数しかありません。一例として、Crispinらは、55本の単素子からなる縦型構造の有機発電デバイスについて報告しています21。この場合、マイクロピペットで前駆体溶液をくぼみに充填して、寸法が1 ×1.5 × 0.03 mmの単素子を作製します。注目すべきは、p型素子がEDOTの化学重合によって堆積したPEDOT-Tosで構成されるのに対して、n型素子はTTF-TCNQとPVCのブレンドで構成されている点です。この熱電モジュールでは、ΔT が10 Kで最大電力出力0.128 μWが得られています。この結果は興味深いものの、n型材料のZT 値が低く、厚さが限定されるためΔT が小さくなることから、電力のさらなる向上は制限されます。Zhuのグループによって、異なる縦型構造の有機熱電発電デバイスが報告されています(図3A、3B)22。poly-(metal-1,1,2,2-ethenetetrathiolate)のような金属-有機導電性ポリマーをn型およびp型の材料として使用し、ポリマー粉末をペレット状に固め、寸法が5 × 2 × 0.9 mmの大型素子が作製されました。この方法により、熱電モジュールが高電力発電用のロバストなデバイスとして機能します。単素子の熱電性能のバランスが良く、厚さが増加しているため、35本の単素子からなる熱電モジュールではΔT を82 Kに維持したときに最大出力750 μW、0.26 VのVocが得られています。電力出力密度は30 Kで1.2 μW cm–2に達しています。
フレキシブルな熱電モジュールのプロトタイプ作製は、有機熱電材料の実用化に向けて非常に重要です。Zhuらは最近、220本の単素子を使用した高度に集積されたフレキシブルモジュールを検証しています23。このデバイスでは、開放電圧が1.51 Vで短絡電流は2.71 mAの値が得られています。最大電力出力は1 mWを超えており、これまでに報告されている有機熱電モジュールの最高値です。作製されたモジュールは比較的高い出力電圧と大きな電力出力を示し、液晶電卓の動作が可能です。興味深いことに、富士フィルムは最近、わずか1Kの温度差でも数ミリワットの発電容量をもつフレキシブルな熱電変換素子を発表しています24。このデバイスに手を置くことで生じた温度差により、玩具のミニカーを動かすのに十分な電力が得られます。このモジュールは、健康モニタリングデバイス用のウェアラブル電源としての使用や、他のエネルギーハーベスティング素子との組み合わせが期待されています。
従来の発電素子だけでなく、多機能用途に向けた有機熱電デバイスに対する関心が最近高まっています。例えば、有機熱電デバイスを光エネルギーの直接回収に使用し、光熱電(PTE:photo-thermo-electric)変換素子とすることも可能です。KimらおよびHuangらによる最近の2件の研究では、フォトセレノフェン誘導体(hexyl-3,4-ethylenedioxyselenophene、EDOS-C6)およびpoly[Cux(Cu-ett)]を使用したPTEデバイスがそれぞれ独自に作製されています25,26。これらのPTEデバイスでは、光熱(PT:photothermal)駆動と熱駆動の熱電変換が1つの素子で行われ、PTE変換が可能になります。EDOS-C6を使用したデバイスでは、中程度のNIR光照射下(808 nm @ 2.33 W cm–2)で最高900 μVという高いゼーベック電圧が得られています。このPTE変換に加えて、有機活性材料の光誘起励起も起こり、熱電特性への明らかな影響が見られます。Huangらの研究(図3C、3D)では、poly[Cux(Cu-ett)]:PVDFフィルムにNIR光を照射し、ゼーベック係数が52 ± 1.5から79 ± 5.0 μV K–1まで上昇しています。poly[Cux(Cu-ett)]:PVDFの顕著なPTE効果により、12 mVのPTE電圧を得ることができます。このように、太陽エネルギーからの発電やNIR検出に有機熱電材料を利用できる可能性が生まれています。
センシングは、有機熱電材料の用途で関心を集めているもう一つの領域です。これに関して、熱電デバイスは温度センサーの有望な候補となっています。興味深いことに、Zhangらによる最近の研究では、MFSOTE(microstructure-frame-supported organic thermoelectric)が、自己発電型電子皮膚(e-skin)の用途で圧力と温度のデュアルパラメータセンサーとして利用できることが示されています(図3E、3F)27。このデバイスでは、デバイスと対象物との間の温度差をゼーベック効果で検出し、デバイス抵抗の変化から圧力の偏りを検出します。圧抵抗的(piezoresistive)機構と熱電的機構を組み込むことで、追加の分離処理を必要とせずに、温度と圧力の刺激を同時に検出することが可能になり、さらに、圧力感度と温度検出の精度はそれぞれ>20 kPa–1と<0.1 Kです。注目すべき点として、このフレキシブルなデュアルパラメータセンサーは自己発電型であり、アレイに集積することが可能で、ロボット工学や健康モニタリング製品などにおいて優れたアプリケーションを可能とします。
図3A)熱電モジュールの概略図。B)Thot = 373 KおよびΔT = 50 Kで動作する熱電モジュールの電力出力安定性。C)PTE効果に基づくフレキシブルなNIR検出器の写真。D)強度2.3 W.cm–2のレーザー照射下でのフレキシブルデバイスによるNIR検出のサイクル特性。E)MFSOTEデバイスを使用した温度-圧力センサーの概略図。F)温度勾配が5 Kで圧力負荷が異なるMFSOTEデバイスのI–V曲線。文献22,25,27より許可を得て転載。
結論および展望
有機熱電デバイスの分野は、過去数年間に開発が急速に進んだ後、注目すべき進歩を遂げています。p型(PEDOT:PSS)およびn型(poly[Kx(Ni-ett)])の材料を使用して、室温で0.2を超える高いZT 値が得られることが明らかになっています。この値は、無機系熱電デバイスの低温での性能に匹敵するものです。さらに、複数の有機熱電デバイスが印刷法ですでに作製されており、この最先端分野が急速に進歩していることを示しています。
これら成果があるものの、有機熱電素子は依然として初期の開発段階にあり、いくつかの課題に直面しています。課題の1つは、高いZT 値を示す有機熱電材料をより多く見つけ出す必要がある点です。今までのところ、熱電研究で有望な材料として探索されている有機化合物は少数に留まっており、構造と特性との関係性は未解決の問題として残されています。共役系骨格、側鎖、ポリマーの分子量、エネルギー準位が果たす重要な役割の理解を深めることで、最先端の有機熱電材料の開発が可能になるでしょう。高移動度有機半導体の多くは、基本的に熱電用途でも有望な候補となります。一般的には、低いキャリア密度が電気伝導度の改善を制限するため、熱電用途での使用を困難なものとしています。有機半導体における電荷キャリア濃度の制御が重要な課題として浮上しており、したがって、高効率なドープ方法の開発により、有機半導体から高性能熱電材料の実現が加速されることが予想されます。
第2の課題は、有機熱電素子の基本的メカニズムの理解が不足している点が挙げられます。熱電変換には、電荷輸送、フォノン輸送、フォノン散乱をはじめとする多数の物理プロセスの影響が複合的に関与しているため、その動作機構は複雑になっています。現在、解決が期待されている多くの重要な疑問があります。例えば、電荷輸送の立場から、どのような電荷キャリアが有機材料における電荷輸送に強く影響しているのか。多種多様な有機半導体やそのドープされた系において本質的な電荷輸送を最もよく表すモデルは何か。有機半導体の熱輸送特性を決定するキャリアやフォノンの重要な役割を、どうすればより明らかにすることができるか。さらに、S -σ のトレードオフの関係、σ -k の関係、エネルギー準位とS の関係など、有機熱電材料に関する幾つかの疑問を存在し、より詳細な研究が必要です。これらメカニズムを理解し、トレードオフの関係をどのように調整するかが難題として残されています。
第3の課題は、高出力密度のフレキシブルな有機熱電デバイスの開発です。有機熱電デバイスの出力電力は、材料の性質に支配されるだけでなく、材料の凝集構造や電極との界面の性質とも強く関連しています。デバイスの出力電力を最大化するために、精密に制御されたマイクロ/ナノ構造および機能性界面に注目する必要があります。低コスト用途向けのフレキシブルデバイスの作製を必要とする機会も存在しています。これらの要件を満たすためには、非常に多数の熱電単素子からなるフレキシブルな集積モジュールを溶液プロセス法で作製する必要があります。しかし、素子構造や有機熱電デバイスの統合は、どちらもまだ十分には開発されていません。
有機熱電研究における第4の課題は、S 、σ 、k などの主要な熱電特性の精密な測定です。無機系熱電素子の特性評価方法が確立されているのに対して、有機熱電材料の標準的プロトコールは存在しません。熱電性能を正確に評価するためには、有機材料および電極のサイズと形状や基板の性質が明確に報告されていなければなりません。面内熱伝導率が簡単な方法で得られないことから、有機材料の性能評価には通常パワーファクターが用いられていることに注意が必要です。この数年の間に、有機熱電材料に対して3ω 法が適用されていますが、デバイス作製や測定準備が困難なため、この方法はまだ広く受け入れられてはいません。
参考文献
続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。
アカウントをお持ちではありませんか?