PDMS表面改質キット
アルドリッチはクレムソン大学とペンシルバニア州立大学と共同で 表面改質キットを開発しました。このキットで、さまざまなポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)表面を長期間親水性に改質することができます。
このキットは I. Luzinov教授(クレムソン大学、米国)のグループによって開発された、疎水性のPDMS表面を親水性のポリマー層でグラフト処理する「高分子固着層法(macromolecular anchoring layer approach)」に基づいています。
親水性PDMS表面を用いた応用例の一つがマイクロコンタクトプリンティングです。 図1 に親水性インクのナノインプリント処理の比較を示します。それぞれ、未処理、酸素プラズマ処理、本キットで改質したPDMS表面の写真です。

未処理の表面

酸素プラズマ処理した表面:1回スタンプ

酸素プラズマ処理した表面:4回スタンプ

本キットで処理した表面:1回スタンプ

本キットで処理した表面:10回スタンプ
図1. 異なるPDMS表面処理により作製された金属基板への親水性電子セラミックインク(electroceramic ink)のインプリント(写真はペンシルバニア州立大学のSusan Trolier-McKinstry教授より提供)。
本キットの技術的情報および応用については、次の文献を参照してください。
- Zdyrko, B.; Klep, V.; Luzinov, I. Material Matters, 2008, 3(2), 44.
- Nagata, S.H.; Ko, S.W.; Hong, E.; Randall, C.A.; Trolier-McKinstry, S. J. Am. Ceram. Soc., 2006, 89, 2816.
- Nie, Z.; Kumacheva, E. Nature Materials, 2008, 7(4), 277.
<キット内容>
製品番号: 701912
キット構成
・ Solution A (Glycidyl methacrylate based polymer):10 mL
・ Solution B (Acrylamide/acrylic acid based polymer):4 mL
※推奨溶液(このキットには含まれていません)

図2PDMS表面親水性処理の模式図
実験手順
- 前処理 - PDMSの表面を、1分間の低周波空気プラズマ処理によって活性化します(推奨プラズマクリーナー: 製品番号: Z561673、 Z561681、 Z561657、 Z561665)。
- 予備すすぎ - プラズマで活性化されたPDMSサンプルを、エタノール(製品番号: 270741)で少なくとも10分間洗浄してすすぎます。すすぎは3回繰り返します。その後、サンプルを少なくとも15分間空気乾燥させます。このようにして得られた活性化PDMS表面に対する水の接触角は、25~40°の範囲であると予測されます。
- 最初の改質ステップ - 前ステップで調製したサンプルを水平に置き、その表面を溶液A(一般的に、表面1平方インチ[=6.45平方センチ]につき約1 mL)で被覆します。サンプルを周囲条件で20~30分間乾燥させた後、窒素またはアルゴン中で30分間、110℃でアニールします。
- すすぎ - アニールしたサンプルを、メチルエチルケトン(製品番号: 34861)で10分間ずつ3回すすぎます。その後、サンプルを少なくとも30分間空気乾燥させます。
- ポリマーグラフト - 6 mLのエタノールを、溶液Bが入った容器に加えます。混合物を注意深く撹拌し均一化します。前ステップで調製したサンプルを水平に置き、改質しようとする領域を均質な溶液で完全に被覆し表面処理します。通常、溶液は表面1平方インチ(=6.45平方センチ)あたり約1 mLを使用します。サンプルを周囲条件で20~30分間乾燥させ、その後80℃で14時間にわたってアニールします。最後に、サンプルを水(製品番号: 320072)で十分すすいで残ったポリマーを洗い流し、室温で空気乾燥させます。
処理後、水で効果的に表面を濡らした場合、水の接触角は25~35°の範囲であると推測されます。得られたPDMS表面は親水性インクと親和性が高くなり、多くのプリント用途に適したものとなります。
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