- オルガノイドとは?
- オルガノイドバイオバンクとは?
- オルガノイドとスフェロイドの違いは?
- オルガノイドの作製方法は?
- iPSCとPDOの長所・短所は?
- がん研究において腫瘍オルガノイドをどのように活用しますか?
- オルガノイドの培養方法は?
- オルガノイド培養にマトリゲルは必要ですか?
- マトリゲルドームとは?
- オルガノイドからマトリゲルをどのように除去しますか?
- オルガノイドにはどのような培地や添加剤が必要ですか?
- オルガノイドはどれくらい長く培養できますか?
- オルガノイドはどのように継代しますか?
- オルガノイドは冷凍または凍結保存できますか?
- オルガノイドはどのように抗体で染色しますか?
- マトリゲルで培養したオルガノイドからRNA/DNAをどのように抽出しますか?
- オルガノイドには特殊なアッセイ法が必要ですか?
- オルガノイドを用いてどのように細胞毒性アッセイを行いますか?
- 培養したオルガノイドのバラツキをどのように低下させますか?
- 倫理的に調達されたヒトオルガノイドはどこで購入できますか?
図1a.マウス腸オルガノイド。
図1b.ヒト結腸オルガノイド。
図1c.ヒト肺オルガノイド。
オルガノイドバイオバンクとは?
医学研究の個別化された用途に対応するため、ヒトオルガノイドのバイオバンクが多様な細胞・分子レベルの表現型を含むさまざまな組織から作製されました。例えば、正常および罹患した消化管オルガノイドのコレクションを確立することで、結腸がんやクローン病、過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性大腸炎などのその他の消化管関連疾患の研究に役立っています。
図2.患者由来オルガノイド(POD)の分離・凍結保存を活用してオルガノイドバイオバンクを樹立します。
オルガノイド
スフェロイド
- 幹細胞または一次組織由来
- 複雑な構造の複数の細胞タイプ
- ハイドロゲル(マトリゲル)中で培養
- 薬剤スクリーニングのための生理的関連性が高い
- 限りない寿命
- 不死化細胞株由来
- 単純な構造の単一の細胞型
- 低接着プレートにおいて浮遊凝集物として培養
- 生理的関連性は低い(すなわち低酸素勾配)
- 限られた寿命
iPSCとPDOの長所・短所は? |
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図3.3dGRO™ヒト結腸直腸がん(CRC)オルガノイドを用いた薬剤スクリーニング。(A)CRCオルガノイドを融解し48時間回復させた後に、5日間にわたりDMSOコントロールとともにTrametinibを濃度段階的に投与した。次に、オルガノイドを核(青)および細胞骨格(赤)マーカーで染色し、共焦点イメージングを行った。(B)アッセイのエンドポイントであるオルガノイドの生存率を、CellTiter-Glo®3Dにより判定し、反応曲線およびIC50値を作成した。スケールバー:100 μm。CRC-A:ISO50(SCC504)、CRC-B:ISO68(SCC506)、CRC-C:ISO72(SCC507)。
オルガノイドの作製方法は?
オルガノイドを単離したら、成長因子低減マトリゲルなどの細胞外マトリックス(ECM)に富む基底膜抽出物ハイドロゲルに包埋した特殊培地で培養します。培地は1日おきに補充し、オルガノイドが大きくなりすぎたり壊死したりする前に週1回(7~12日に)継代します。オルガノイドは、物理的分離/酵素フリー継代試薬を用いて小さな細胞塊フラグメントまたはシングルセルとして継代可能です。オルガノイドの種類およびコンフルエンシーによるが、オルガノイドを継代する際の分割比は、約1:3~1:4を用いることができます。感受性の高いタイプのオルガノイドでは、ROCKi(Y27632)(SCM075)を継代時に添加すると、細胞の生存性を向上できます。
オルガノイド培養にマトリゲルは必要ですか?
はい、オルガノイドの適切な増殖にマトリゲルは不可欠です。マトリゲルのマトリックスにより、自然環境下に近いin vivo3D環境を模倣するために必要なシグナル伝達サイトカインおよびECM構造タンパク質が供給されます。マトリゲルは希釈なし(8 mg/mL以上)で使用されることが多く、オルガノイドを培養するために用いられるマトリゲルドームを作成します。最近では、マトリゲルドームを使用するのではなく培地に希釈済みマトリゲルを添加することで、さらにハイスループットのオルガノイド懸濁培養液を作成できるようになりました。
マトリゲルドームとは?
オルガノイドの増殖にドームを用いる手法では、1滴のマトリゲルECM内にオルガノイド断片を播種して、ゲルを重合化させます。マトリゲルECMが重合化したら、培地をドームの上からウェル内に添加します。通常は1ウェルに1個のマトリゲルドームを播種します。
図4.マトリゲルドームによるオルガノイド培養技術。
オルガノイドからマトリゲルをどのように除去しますか?
マトリゲルは、継代時に1100 rpmで5分間遠心分離することで除去できます。遠心分離後に、オルガノイド細胞ペレット上部にマトリゲルの薄層が視認できるので、これを慎重に吸引します。オルガノイドを培地またはPBSで洗浄し、再度遠心分離して、さらにマトリゲルを除去します。また、Corning®セルリカバリーソリューションを用いてマトリゲルドームからオルガノイドを回収することもできます。
オルガノイドにはどのような培地や添加剤が必要ですか?
それぞれのオルガノイド細胞型には、特有の無血清培地が必要です。通常使用される培地および添加剤には、Advanced DMEM/F12(SCM162)、N-2(SCM012)、N-27(SCM013)、Niacinamide、N-Acetyl-L-cysteine、Gastrin、 WNT、R-Spondin-1、Noggin、FGF、EGFまたはCHIR99021、SB202190、A-83-01などの低分子阻害剤などがあります。
オルガノイド培地に補給する高価な組換えタンパク質のコストを低減するために、L-WRN(WNT、R-Spondin、Noggin)(SCM105)、R-Spondin-1(SCM104)、WNT馴化培地が安価な代替物として使用されています。
オルガノイドはどれくらい長く培養できますか?
LGR5+幹細胞集団が適切な培地および継代技術を用いて維持される場合、ほとんどのオルガノイドは際限なく増殖できます。オルガノイドの品質および同一性を確認するために、5~10継代ごとにマーカー発現と核型の分析を実施することが推奨されます。
オルガノイドはどのように継代しますか?
オルガノイドは、物理的分離/酵素フリー継代試薬を用いた小さな細胞塊フラグメントまたはシングルセルとして継代可能です。
オルガノイドは冷凍または凍結保存できますか?
はい。オルガノイドの細胞型に応じて、最適化されたオルガノイド細胞凍結用培地(SCM301)をオルガノイドの凍結保存に使用できます。多くの患者由来オルガノイド型は凍結保存可能です。しかし、一部のiPSC由来の成熟オルガノイド細胞型(例えば肺オルガノイド)はうまく凍結できません。オルガノイドは、凍結前にROCKi(Y27632)(SCM075)で前処理して、細胞の生存性を向上させる必要があります。細胞凍結用のMr. Frosty freezing containerなどのコンテナーを用いて1本のクライオバイアルに5~10個のマトリゲルドーム分のオルガノイドを凍結することをお勧めします。細胞の生存性を最大限にするために、ドームごとの平均オルガノイド密度は凍結時点で約90%とします。
オルガノイドはどのように抗体で染色しますか?
オルガノイドは、ホールマウントまたはパラフィン包埋切片を用いて、免疫細胞染色(ICC)/免疫組織染色(IHC)が可能です。オルガノイド染色用に認証済みの抗体を使用することが重要です。
結腸オルガノイド
肺オルガノイド
図5.抗体によるオルガノイド染色。SARS-Cov2関連抗体(ACE2およびTMPRSS2)で染色した結腸および肺オルガノイド。
マトリゲルで培養したオルガノイドからRNA/DNAをどのように抽出しますか?
従来のDNA/RNA分離キットを用いてシーケンシング(RNA-seq、scRNA-seq、WGS、CHIP-seq)用のゲノム材料を調製することができます。大きなオルガノイドを用いる一部のアプリケーションについては、組織特異的なDNA/RNA抽出用キットが推奨されます。RNA抽出前に分離済みオルガノイドにTRI試薬(T9424)を添加すると、のちの使用まで-80℃で保存できます。
オルガノイドには特殊なアッセイ法が必要ですか?
オルガノイドは性質が変化しやすいため、ほとんどの従来のアッセイ法ではさらに実験を最適化する必要があります。例えば、一般的なLive/Dead細胞生存率アッセイ(CBA415)はオルガノイドなどの3D培養用に最適化されています。このアッセイはカルセイン-AM(生細胞)、ヨウ化プロピジウム(死細胞)、Hoechst 33342(全細胞)を使用します。別の一般的なオルガノイドアッセイはフォルスコリン誘発性オルガノイド膨潤アッセイであり、CFTR機能を測定します。
図6.Live/Dead細胞生存率アッセイキットにより染色したヒトiPSC由来結腸オルガノイド。上の列の画像は、カルセイン-AM(A)、ヨウ化プロピジウム(B)、Hoechst 33342(C)で染色した生細胞培養およびマージした明視野画像(D)を示す。下の列の画像(E~H)は、70%エタノールで固定し、カルセイン-AM(E)、ヨウ化プロピジウム(F)、Hoechst 33342(G)で染色したオルガノイド、およびマージした明視野画像(H)を示す。
オルガノイドを用いてどのように細胞毒性アッセイを行いますか?
オルガノイド培養を用いて薬剤化合物の細胞毒性作用を解析するために、細胞生存率ルシフェラーゼアッセイ(SCT149)またはCellTiter-Glo®3D細胞生存率アッセイなどのATPを測定するルシフェラーゼを用いたアッセイがよく使用されます。
図7.ヒト結腸オルガノイドを使用したフラボピリドールの細胞毒性試験。100 µMフラボピリドールはヒト結腸オルガノイドに対し細胞毒性作用を引き起こす。CellTiter-Glo®3D細胞生存率アッセイを使用して解析した。
オルガノイドのバラツキをどのように低下させますか?
ヒト結腸などの一部のタイプのオルガノイドは、TrypLE Express分離試薬を用いてシングルセル継代を行えます。1ウェルあたりの播種オルガノイド数を均等にすることで、従来の物理的または酵素による細胞塊継代技術よりも均一なオルガノイドが得られます。シングルセルで継代する場合、ROCKi Y27632(SCM075)を最終濃度10 μMで培地に添加し、細胞生存率を維持することが重要です。アッセイのバラツキを低減するための別の方法は、オルガノイドを少数に保ちながら異常な形状のオルガノイドを手作業で除去することです。
倫理的に調達されたヒトオルガノイドはどこで購入できますか?
私たちは、倫理的に調達された高品質の消化管PDO、ならびにiPSC由来結腸および肺オルガノイドをラインアップしています。
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