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Merck

ナノ粒子の限外ろ過

ナノ粒子の精製と製造

ナノサイズの粒子(NP)は、バイオイメージング、バイオセンシング、標的薬物送達、および治療薬の制御放出のための重要なシステムへと発展を遂げてきました。ナノ粒子の効率的な回収と調製は、ナノマテリアルを製造する上できわめて重要です。合成後のナノ粒子の調製と精製には、限外ろ過(UF)が広く使われてきました(図1)。古くは加圧式限外ろ過デバイス(pUF)によってろ過が行われてきました。しかし遠心式限外ろ過(cUF)法が導入されたことで、ナノ粒子の調製と精製において少量での作業が可能となりました。

ナノ粒子の調製と精製における限外ろ過アプリケーション例

図1.ナノ粒子の調製と精製における限外ろ過アプリケーション例

ナノ粒子は、有機または無機の材料、ポリマーおよび金属で作製することができます。それらは表面の官能基化により、特定の生体機能が付与され、生物学的応用のための生体適合性が向上します2 。磁気ナノ粒子、量子ドット、金属ナノ粒子、シリカナノ粒子およびポリマーナノ粒子は生物医学的に重要です3。多くのナノ粒子は製造後にそのまま使用することはできません。水溶性マトリクス製剤には、除去する必要がある非結合薬が含まれている可能性があります。また、ライセート、体液、血清、バッファー、培地、その他試薬から、生体分子、化学物質その他夾雑物をさらに分離する必要があるかもしれません。周囲の生物環境に有害な影響をもたらすものもあります3 。ナノ粒子の信頼できる濃縮、エンリッチメント、洗浄および精製法が不可欠です。

ナノ粒子の分離、精製および濃縮における限外ろ過法

遠心式限外ろ過デバイスを使うことで、ナノ粒子をそのサイズに基づいて精製、洗浄および濃縮することができます。Amicon UltraとCentricon Plusの遠心式限外ろ過ユニットのほか、Amicon Pro精製システム(同時に洗浄と濃縮が可能)を、次の用途に使用できます。

  • ナノ粒子の分離と精製
  • ナノ粒子の濃縮
  • ナノ粒子のエンリッチメント
  • 脱塩
  • バッファー交換
  • 官能基化後の精製
  • 大量のタンパク質の除去

大容量のサンプルを加式限外ろ過(pUF)で処理するために、Amicon 攪拌式セルと適切なUltracel®ろ過ディスクメンブレンを組み合わせて使用することができます。Amicon攪拌式セルにより、穏やかな限外ろ過が実現します。

一次ろ過の後、ナノ粒子をさらに洗浄とバッファー交換のため遠心したり、再濃縮したりすることができます。保持されている、または通過した溶質を回収して分析し、ナノ粒子の純度、カプセル化効率、結合、および薬物濃度を測定できます。

ナノ粒子に応用するメンブレンの選定

限外ろ過による分子の分離と濃縮は、サイズ排除の機構に基づいて行われます。生体分子の大多数は500,000 Da未満の分子量であり、ナノ粒子はこのカテゴリーにぴったり当てはまります。Amicon Ultra遠心式限外ろ過ユニット、大容量用のCentricon Plus遠心式限外ろ過ユニット、および洗浄と濃縮を同時に行うAmicon Pro精製システムは、それらのフィルターメンブレンにより規定される特定の公称分画分子量(NMWL)があります。NMWLは、微粒子の90%超が保持される粒子径のカットオフ値を示しています。これらのフィルターシステムは、NMWLが3,000、10,000、30,000、50,000および100,000 Daというメンブレンと併せて提供されます。特定のナノ粒子径と用途に対して適切なメンブレン孔径を選定することは、既報論文の調査から認められているように、紛らわしいものかもしれません(図2)。

公表されているナノ粒子タイプ別のメンブレンサイズの比較。

図2.公表されているナノ粒子タイプ別のメンブレンサイズの比較。メンブレンの孔径は、ナノ粒子径と用途(複雑なサンプルからの精製、濃縮、バッファー交換、脱塩など)の両方に基づいて選定するべきである。

限外ろ過法およびメンブレンの孔径を選定する際に考慮すべき要素は以下のとおりです。

  1. ナノ粒子のサイズ:粒径は、公表されている情報源、または顕微鏡検査、レーザー回折法、動的光散乱法などの測定技術により推定できる。
  2. 溶液中の主な分離ターゲットのサイズ:分離する必要があるタンパク質、抗体、薬剤、化学物質およびその他の粒子のサイズは、メンブレンサイズの選択に影響を及ぼす。
  3. サンプル量:遠心式限外ろ過(cUF)デバイスには0.5 mL以下~70 mLの範囲の処理量が適合する。大容量の場合は、加圧式限外ろ過(pUF)デバイスが有効かもしれない。

ナノ粒子を保持するためには、フィルターメンブレンの分子量カットオフはそのナノ粒子よりも小さい(ナノ粒子の分子量の約2分の1)必要があります。ただし、ろ過すべき成分が通過できるほどの大きさでなければなりません。

表1.ナノ粒子径に基づく限外ろ過メンブレンのNMWL選定

まとめ

遠心式限外ろ過(cUF)と加式限外ろ過(pUF)は、ナノ粒子の精製と調製に重要な役割を果たします。ナノ粒子に限外ろ過を用いる用途として、分離、濃縮、バッファー交換、薬物のモニタリング、さらにナノ粒子調製液からの色素、酵素および非結合成分の除去があります。多くの論文が、ナノ粒子と高分子の精製および濃縮におけるAmicon およびCentricon 遠心式限外ろ過デバイス、さらに加圧式限外ろ過のAmicon攪拌式セルの有用性を引用しています。不純物にはイオンや分子、微粒子なども考えられるため、最適なフィルターを選択することで、収量、再現性、およびろ液の質に重大な差が生じる可能性があります。Amicon とCentriconフィルターユニットには、Ultracel® 再生セルロースフィルターメンブレンが使用されています。その複雑な構造によりサンプルから生物学的および化学的な重要な決定、ダウンストリーム解析および分析性能に影響する不純物が除去されると考えられます。限外ろ過法により、ラボスケールのナノ粒子調製のための分離、精製およびエンリッチメントのステップが行われます。遠心式限外ろ過(cUF)と加圧式限外ろ過(pUF)処理はいずれも少量の構成成分とろ液側に移動する液体からナノ材料を分離するための迅速、簡単かつ効率的な方法です。フィルターを選定する際は、物理的組成、径、および形状が重要属性です。Amicon の製品群は、ナノ粒子の精製と製造のための多数の限外ろ過膜デバイスを提供しています。

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参考文献

1.
Fang RH, Aryal S, Hu CJ, Zhang L. 2010. Quick Synthesis of Lipid?Polymer Hybrid Nanoparticles with Low Polydispersity Using a Single-Step Sonication Method. Langmuir. 26(22):16958-16962. https://doi.org/10.1021/la103576a
2.
Reddy LH, Arias JL, Nicolas J, Couvreur P. 2012. Magnetic Nanoparticles: Design and Characterization, Toxicity and Biocompatibility, Pharmaceutical and Biomedical Applications. Chem. Rev.. 112(11):5818-5878. https://doi.org/10.1021/cr300068p
3.
Weingart J, Vabbilisetty P, Sun X. 2013. Membrane mimetic surface functionalization of nanoparticles: Methods and applications. Advances in Colloid and Interface Science. 197-19868-84. https://doi.org/10.1016/j.cis.2013.04.003
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