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環境水中のトリクロサンの測定
ポリマーSPEクリーンアップおよびHPLC-質量分析検出法

Olga Shimelis, Michael Halpenny, Ken Espenschied, Kristen Schultz

Reporter US Volume 32.2

はじめに

トリクロサンは、多くの石鹸や、その他のさまざまな消費者向けおよび個人向けケア商品の抗菌剤として長年にわたり使用されている化学物質です。その使用が広範囲であり生産量が高い(1998年の米国EPAアセスメントによれば年間100万ポンドを超える)ことから、米国FDAは「この原料の科学的および規制上のレビュー」に参画しています[1]。米国疾病予防管理センターは2003~2004年に、検査対象者の75%の尿からこの化学物質を検出しました[2]。最近の動物試験では、トリクロサンが内分泌かく乱物質である可能性が示されています。トリクロサンの環境への影響に関しては、モニタリングプログラムで多くの試験対象河川からこの化学物質が検出されています。これは、廃水処理場からの排水によるものです[3]。トリクロサンは、医薬品および個人向けケア商品のLC/MS/MSによる測定のために開発されたEPA Method 1694に含まれています[4]。

この試験では、Supel™-Select HLBポリマーSPEによるクリーンアップとAscentis Express C18 HPLCカラムによる検出によって、地域水の環境サンプルに含まれるトリクロサンを検出しました。

実験

地域の廃水処理場の排水から水サンプルを採取しました。また、排出場所から約400ヤード下流の河川でもサンプルを採取しました。

測定方法は、トリクロサンを分析するための標準のEPA Method 1694を応用し、さらにSupel™-Select HLB SPEカートリッジ(製品番号54182-U)を使用して開発されました。Method 1694の修正内容には、代替溶出溶剤(1:1アセトニトリル:メタノール)の採用が含まれます。この方が、HLBカートリッジから得られる分析物の溶出に適しています。また、サンプルローディング量は500 mLから50 mLへ減量され、溶出量は標準法で使用される6 mLから3 mLへ減量されました。トリクロサンを検出するための最終的な測定方法を図1に示します。

UVおよびMS/MSの両方の検出法を、環境水サンプルでテストしました。廃水工場の排水に含まれる高濃度のトリクロサンはUVで検出できましたが、河川に含まれる低濃度のトリクロサンを正確に定量するにはMS/MS検出が必要でした。HPLC法は、Ascentis™ Express C18 HPLCカラムを使用して開発されました。Fused-Core技術により、サンプルのバックグラウンドピークとトリクロサンピークの間の良好な分解能が得られ、結果としてトリクロサンの鋭いピークと低い検出限界が得られました。また、Ascentis™ Expressカラムにより、既存のHPLC装置(Agilent® 1200およびAgilent® 1100のスタック)を用いた低背圧での分離が実行可能になりました。

Supel™-Select HLB SPE 60 mg/3 mLを用いた水サンプルのトリクロサン分析のためのサンプル調製法

図1.Supel™-Select HLB SPE 60 mg/3 mL(54182-U)を用いた水サンプルのトリクロサン分析のためのサンプル調製法。

結果

図2に、結果として得られた水サンプルのUVクロマトグラムを示します。
図3に、同じ水サンプルのMS/MSクロマトグラムを示します。

水中のトリクロサンの280 nmでのUVクロマトグラム

図2.水中のトリクロサンの280 nmでのUVクロマトグラム。

条件:カラム:Ascentis™ Express C18、15 cm x 内径2.1 mm、2.7 µm(53825-U);移動相:40%メタノール、40%アセトニトリル、20%三塩基性リン酸カリウム、pH 2.5;流量:0.150 mL/min;温度:30℃;検出器:UV 280 nm;カラム圧:112 bar;注入:10.0 µL;装置:Agilent® 1200 Series HPLC-UV

水中のトリクロサンのLC/MS/MSクロマトグラム

図3.水中のトリクロサンのLC/MS/MSクロマトグラム。

条件:カラム:Ascentis™ Express C18、15 cm x 内径2.1 mm、2.7 µm(53825-U);移動相:40%メタノール、40%アセトニトリル、20%水(0.1%ギ酸含む);流量:0.150 mL/min;温度:30℃;検出器:Q1/Q3 286.8/35.0 ESI negative;注入:10.0 µL;装置:Agilent® 1100/1200 HPLCおよびAB SCIEX QTRAP® 3200

考察

50 mLの水サンプルローディングを使用した場合、UV法によるトリクロサンの検出限界は100 ng/Lと推定されました。EPA Method 1694は、500 mLのSPEローディング量とMS/MS検出を用いたトリクロサンの検出限界を94 ng/Lと規定しています。Ascentis™ Expressカラムの使用は、鋭いピークをもたらし、また比較的低感度のUV検出技術の使用に対応できる低検出限界をもたらしました。

廃水工場由来の水サンプルに含まれるトリクロサンの濃度は、約1000 ng/Lの高値であることが分かりました。この濃度は、UV法によって容易に検出できました。MS/MS法により、UV法から得られた濃度結果が正しいことが確認されました。

400ヤード下流で採取されたサンプルに含まれるトリクロサンのレベルは、河川水によってさらに希釈されたことでUV法の検出限界を下回る結果となりました。廃水処理場からの排水場所よりも下流の河川に含まれるトリクロサンは、MS/MS法で検出できました。50 mLの水サンプルを使用した場合、MS/MS法によるトリクロサンの検出限界は50 ng/Lと推定されました。

表1.水中のトリクロサンの測定方法バリデーションの結果(n=3)。
表2.環境水中のトリクロサン特定の結果(n=3)。

結論

環境水サンプル中のトリクロサンを検出するための測定方法が、Supel™ Select SPEクリーンアップと扱いやすい50 mLローディングサンプル量を使用して開発されました。Fused-Core™ Ascentis™ Express C18 HPLCカラムにより、鋭いピークと、低背圧による低い検出限界が可能になりました。また、既存のHPLCシステムでカラムを使用しました。廃水工場の排水中のトリクロサンはUV法とMS/MS法の両方で検出され、約1000 ng/Lのレベルでした。トリクロサンは河川水中に63 ng/Lのレベルで存在し、このレベルにはMS/MS検出が必要でした。

参考文献

  1. http://www.fda.gov/forconsumers/consumerupdates/ucm205999.htm
  2. http://www.dailyfinance.com/2010/04/09/fda-epa-to-review-safety-ofcommon-antibacterial-ingredient/
  3. http://www.epa.gov/oppsrrd1/REDs/factsheets/triclosan_fs.htm
  4. US EPA Method 1694 “Pharmaceutical and personal care products in water, soil, sediment and biosolids by HPLC/MS/MS” http://water.epa.gov/scitech/methods/cwa/bioindicators/upload/2008_01_03_methods_method_1694.pdf

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