はじめに
臭素は酸化剤であり、特にスイミングプール、温泉、冷却塔の水を殺菌するために、消毒剤として用いられます。水性サンプル中の臭素測定は、主に殺菌の有効性を保証し、ヒトの健康に悪影響を及ぼさないようにするために行われます。
ANSI/APSP/ICC-11「公共のプールの水質の標準」によれば、理想的な臭素の範囲は、プールでは2~4 ppm、温泉では4~6 ppmです1。
臭素は公共の飲料水処理には使われていませんが、米国環境保護局が一部の海軍艦艇や石油掘削プラットフォームでの飲料水用途に登録している殺菌剤です2。40CFRの180.519項によれば、処理水中の臭素濃度の最終濃度は1.0 ppmを超えてはなりません3。
本アプリケーションノートでは、現在製造中止されているSpectroquant®臭素テスト(1.00605)として過去に利用可能であった方法について記載します。なお、この方法は、Spectroquant®光度計および比色計Prove 100/300/600、NOVA 60およびMove 100であらかじめプログラムされた方法として使用でき、Spectroquant®塩素テスト(1.00598)の試薬を用いて実施できます。
カタログ番号1.00598のSpectroquant® 塩素テストの試薬Cl2-1の試薬組成は、製造中止されたカタログ番号1.00605のSpectroquant® 臭素テストの試薬Br2-1と同じです。
この方法は測定範囲が0.020~10.00 mg/L Br2であり、飲料水、スイミングプールの水、廃水、殺菌溶液中の臭素濃度の測定に適しています。
実験方法
弱酸性溶液中では、遊離臭素がジプロピル-pフェニレンジアミン(DPD)と反応して赤紫色色素を形成します。これを測光法で測定します。
サンプル物質:
飲料水、スイミングプールの水、廃水、殺菌溶液
異物の影響
目的の分析対象物Br2以外のサンプル中の成分が、ここに記載した検出化学に干渉する可能性があります。その一部を、3.5および0 mg/LのBr2を含む溶液で試験しました。この表に示した異物の濃度までは、測定は干渉を受けません。累積的影響は試験しませんでしたが、そのような影響を否定することはできません。
試薬・装置・関連製品
試薬
- Spectroquant®塩素テスト (1.00598)
装置
臭素の測定には、以下のSpectroquant®光度計のうち1つが必要です:
- Spectroquant® VIS Spectrophotometer Prove 100(173016)
- Spectroquant® UV/VIS Spectrophotometer Prove 300 (173017)
- Spectroquant® UV/VIS Spectrophotometer Prove 600 (173018)
- Spectroquant® Photometer NOVA 60A (1.09752)
- Spectroquant® Colorimeter Move 100 (1.73632)
注記:データメンテナンスのためのソフトウェア(Prove装置のみ)
Spectroquant® Prove Connect to LIMSソフトウェアパッケージを使用すると、既存のLIMSシステムにデータを簡単に転送できます。このソフトウェアは以下で購入できます。
Prove Connect to LIMS (Y.11086)
関連製品
- 角型セル(幅10 mm) (1.14946)
- 角型セル(幅20 mm) (1.14947)
- 角型セル(幅50 mm)(1.14944)
- ねじ蓋付き空セル24 mm(12 pcs) (1.73650)
- ピペッティング容量10.0 mLのピペット
その他の試薬・アクセサリー
分析前処理
- サンプル採取直後に分析してください。
- pHは4~8の範囲でなければなりません。必要に応じて、水酸化ナトリウム溶液か硫酸で調整してください。
- 濁ったサンプルはろ過してください。
測定溶液の調製
- カタログ番号1.00598 Spectroquant®塩素テストの試薬Cl2-1を、ブルーマイクロスプーン(試薬ビンのキャップ内にあります)の1レベル分だけ試験管に加えます。試薬ビンは使用後直ちに閉めてください。
- 前処理したサンプル(5~40℃)10 mLを加え、試薬が完全に溶解するまでしっかりと振盪します。
- 1分間静置し(反応時間)、セルにサンプルを満たし、光度計で測定します。
測定
作業日ごとに、ゼロ調整を行うことをお勧めします。ゼロ調整に関する詳細は、装置のユーザーマニュアルに記載されています。
ゼロ調整とサンプル測定には、同一のセルを使用することを推奨します。ゼロ調整では、セルに蒸留水(または分析用水)を満たし、装置のユーザーマニュアルに従ってください。
1.Prove・NOVA装置
- 方法一覧から方法146を選択します。
- 前処理したサンプルを10 mm、20 mm、または50 mm角型セルに満たし、そのセルをセルコンパートメントに入れます。自動的に測定が行われます。
- 臭素含有量(mg/L Br2 )がディスプレイに表示されます。
2.Move 100
- 方法一覧から方法90を選択します。
- 24 mmセルに約10 mLの蒸留水を入れ、ねじ蓋を閉めます(ブランクセル)。
- ブランクセルをセルコンパートメントに入れます。
- セルのマークと光度計のマークを合わせます。
- “Zero”を押します。
- 調製した測定溶液を24 mmセルに満たし、ねじ蓋を閉めます(サンプルセル)。
- サンプルセルをセルコンパートメントに入れます。
- セルのマークと光度計のマークを合わせます。
- “Test”を押します。
- 臭素含有量(mg/L Br2 )がディスプレイに表示されます。
測定のコツ
- 50 mmセルを使う場合は、精度を上げるために、自分で調製したブランクサンプル(サンプルの代わりに蒸留水を用いて、測定サンプルと同様に調製する)を対照として測定することをお勧めします。ブランク測定用に光度計を設定します(Prove・NOVA装置のみ)。
- 光度測定のためには、セルを清浄にしておく必要があります。必要に応じて、清潔な乾いた布で拭いてください。
- 濁った溶液の測定では、誤って高い測定値が得られます。
- 測定溶液のpHは4.0~5.0の範囲でなければなりません。
- 測定溶液の色は、前述の反応時間終了後30分間は安定です。
- 臭素濃度が50 mg/Lを超える場合は、他の反応生成物が形成され、誤って低い値が得られます。このような場合は、サンプルを希釈して(1:10、1:100)、測定結果の妥当性を確認することをお勧めします。
分析品質保証
注記:各測定シリーズの前にお勧めします。
光度測定システム(試薬、測定装置、取扱い方法)や作業様式を確認するために、5.00 mg/L Br2を含む新たに調製した臭素標準液(適用はウェブサイト参照)を使用できます。サンプルに依存する干渉(マトリックス効果)を、標準を添加することで評価できます。
参考文献
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