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フローサイトメトリー検出のためのDuolink PLAトラブルシューティングガイド

Duolink PLAテクノロジーとフローサイトメトリーを組み合わせることにより、統計学的検出力の高い、タンパク質間相互作用、タンパク質翻訳後修飾、タンパク質発現の定量的検出が可能になります。最良の結果を得るためには、入念な計画、準備作業、トラブルシューティングが必要です。このガイドでは、フローサイトメトリーのためのDuolink PLA実験で成果を上げるために、正しく実験を行うための一般的なヒントやコツ、問題を特定するための有用な情報と解決策を提供します。

一般的なヒントやコツ

トラブルシューティング

よくあるお問い合わせ

ヒントとコツ

このセクションではフローサイトメトリーのためのDuolink PLA実験をスムーズに進めるために有用な一般的な検討事項および重要事項について説明します。

事前検討事項

  • 解析するサンプルにおいて、一次抗体のパフォーマンスが最適になる条件を検討します。これらの条件には、サンプル処理パラメータ(固定・透過処理)、一次抗体の力価やインキュベーション条件(温度、時間)などが挙げられます。Duolink PLA実験において、2つの一次抗体を使用する場合は、サンプルの処理条件が両方の一次抗体に対し最適なパフォーマンスを両立させるものであることを確認してください。
  • 最初に、従来の免疫蛍光染色法(IF)によるフローサイトメトリー(推奨)または顕微鏡観察によって、一次抗体の力価を測定します。直接標識抗体では必要な抗体量が適切に示されない可能性があるため、最初の最適化の過程では間接検出法を用いることを推奨します。適切に測定されれば、Duolink PLAテクノロジーに適用する際に必要な最適条件の変更が最小限で済みます。
  • Duolinkブロッキング溶液および抗体希釈液は、Duolink PLA試薬と使用すると、PLAプローブと検出オリゴの非特異的結合を最小限に抑えるように最適化されています。従来のフローサイトメトリーにおいて一次抗体のパフォーマンスを発揮させるために代替の溶液を最適化した場合は、Duolink PLA実験にこれらを使用できると思われますが、ユーザーによる確認が必要です。
  • Duolink PLAテクノロジーをマルチカラーフローサイトメトリーのためのIFと組み合わせて使用する場合は、スペクトルの重なりが最小限に抑えられ、かつ最も発現量の低いシグナルの光度が最も高くなるように蛍光色素を選びます。
  • 結果を適切に評価するため、常に技術的コントロールを設定し、可能であれば生物学的コントロールも設定します。

共通する実験パラメータ

  • サンプルから余分な洗浄バッファーをできるだけ取り除いてください。洗浄バッファーが残っていると抗体がさらに希釈されたり、ライゲーション効率や増幅効率が低下する可能性があります。
  • 最良の結果を得るには、特に酵素を用いる手順(ライゲーション反応と増幅反応)では、すべての手順を適切な温度とインキュベーション時間で実施してください。
  • 低発現のタンパク質を検出するためには、増幅時間や検出時間の延長が必要な場合があります。
  • 十分量の洗浄バッファーを用いて室温で洗浄してください。
  • 使用前に、ライゲーションバッファー、増幅バッファー、および検出バッファーが完全に解凍され、ボルテックス済みであることを確認してください。

保存条件

  • Duolink PLAプローブはすべて2~8℃で保存しなければなりません。Duolink Probemaker(PLUSまたはMINUS)を用いて作製したプローブも同様です。PLAプローブは凍結しないでください。凍結すると結果の質が著しく低下します。
  • Duolink flowPLA検出試薬は、すべて-20℃で保存してください。使用中の酵素はフリーザーブロックに入れた状態にしてください。
  • 希釈後のDuolink PLA試薬は保存しないでください。
  • 洗浄ステップが終了したら、解析前に細胞を1×PBS中に再懸濁してください。続けて直ちに細胞を分析することが可能ですが、2~8℃の暗所で最長1週間保存することもできます。
Duolink™ PLAのシグナルは安定している。1週間保存後でも、直後に分析した細胞と同じ結果が得られる。

図1.Duolink™ PLAのシグナルは安定している。1週間保存後でも、直後に分析した細胞と同じ結果が得られる。

データ解析

  • 使用する装置のレーザーと検出器に基づいてDuolink flowPLA検出試薬を選んでください。表1に、Duolink flowPLA蛍光色素の仕様を示します。
  • Duolink PLAをマルチカラーフローサイトメトリーのためのIFと組み合わせて使用する場合は、スペクトルの重なりが最小限に抑えられ、かつ最も発現量の低いシグナルの光度が最も高くなるように蛍光色素を選びます。
  • 固定細胞をゲーティングし、細胞片を除去するために前方散乱光および側方散乱光パラメータを用います。
  • 重要性を理解し、集団の正確な分布を得るために、特に非常に少ないイベントの場合は、解析において必ず十分な数のイベントを収集するようにしてください。
  • コントロール細胞を適切にゲーティングして、陽性シグナルが正しいことを確認してください。
製品番号製品名励起波長(nm)励起レーザー光(nm)*蛍光波長(nm)
DUO94005Duolink™ flowPLA Detection Kit - Violet390405476
DUO94002Duolink™ flowPLA Detection Kit - Green495488527
DUO94003Duolink™ flowPLA Detection Kit - Orange554532, 561579
DUO94001Duolink™ flowPLA Detection Kit - Red594532, 561624
DUO94004Duolink™ flowPLA Detection Kit - Far-Red644638, 640, 642669
表1.Duolink™ flowPLA蛍光色素の仕様

*励起レーザー光は、蛍光色素の励起レーザーとして一般に使用されているものを表します。必ずしも、個々の装置で使用可能なレーザーを反映するものではありません。

トラブルシューティング

あらゆる注意を払っても、期待通りの結果が得られないこともあります。ポジティブコントロールでシグナルが確認できない、またはバックグラウンドが高いといった2つの問題は、免疫検出実験で最も一般的にみられるもので、Duolink PLAテクノロジーでも生じる可能性があります。下記表は、考えられる原因と、こうした一般的問題を回避するために推奨される解決策の一覧です。

バックグラウンドシグナルが高すぎる

考えられる原因推奨される解決策
一次抗体の濃度が高すぎる
  • 最初に従来の間接法によるフローサイトメトリーを用いて、各一次抗体を滴定してください。明確なシグナルが得られて、かつバックグラウンドが最小になる希釈率を選んでください。
  • 一次抗体はそれぞれバックグラウンドシグナルに対して異なる影響を及ぼすため、技術的コントロールとして、1つの一次抗体のみを用いてDuolink PLA実験を行ってください。それに応じて、再度、抗体の滴定を実施してください。
  • 補正が必要な場合は、シグナル強度が最適化され、スペクトルの漏れ込みが最小限に抑えられるようにしてください。
一次抗体の非特異的結合
  • アッセイ条件(固定、透過処理、抗体価)を慎重に決定したにもかかわらずバックグラウンドが持続する場合は、別の一次抗体を試してください。
  • 免疫細胞を用いる場合は、Fc受容体に対する抗体の結合を抑えるため、ブロッキング溶液にFcブロッカー2.5~10 μgの添加を検討してください。
  • 一次抗体による非特異的バックグラウンドレベルを測定するために、一次抗体と同じ動物種由来のアイソタイプIgGを使用してください。
ブロッキングが不十分
  • ブロッキング溶液にサンプル全体が浸っていることを確認してください。
  • ブロッキングのインキュベーション時間を延長してください。
  • 付属の抗体希釈液で一次抗体とPLAプローブを希釈してください。希釈液はDuolink PLAテクノロジー用に最適化されたブロッキング剤を含んでいます。
  • 2次コントロール(一次抗体なし)でもバックグラウンドが高い場合は、検出オリゴの非特異的結合を抑えるため、検出バッファーにサケ精子DNAの添加(15 μg/mL)を検討してください。

Duolink™ flowPLA検出バッファーにサケ精子DNAを添加すると、バックグラウンドを減少させることが可能です。 

図2.Duolink flowPLA検出バッファーにサケ精子DNAを添加すると、バックグラウンドを減少させることが可能

洗浄が不十分
  • 洗浄回数、洗浄時間、および/または洗浄量を増やしてください。
  • 新鮮な洗浄バッファーを使用してください。
  • サンプルが洗浄中に完全に浸かっていることを確認してください。
  • 代替の洗浄バッファーを使用する場合は、厳密さを高めるため、弱い界面活性剤(例えば、Tween®-20、CHAPS)をバッファーに添加してください。
サンプルの乾燥
  • 洗浄後、また試薬を添加する前にサンプルまたはフィルター(フィルターカップまたはフィルタープレートの使用時)が乾燥しないようにしてください。
ライゲーションバッファー中の沈殿
  • 必ずリガーゼバッファーを完全に解凍し、使用前にボルテックスしてください。
塵埃、塩、固定液の沈殿によって強い蛍光を発する粒子が生じた
  • 細胞を2回以上洗浄し、固定液を加える前に培地が除去されていることを確認してください。
  • 調製直後の洗浄バッファーを使用してください。問題が解決しない場合は、すべての洗浄バッファーを滅菌ろ過してください。
  • サンプルが適切な解析用バッファー(例えば、界面活性剤不含PBS)に再懸濁されていることを確認してください。

シグナルが低いもしくは検出できない

考えられる原因推奨される解決策
反応量が適切でない
  • ターゲットタンパク質の発現量または相互作用に関する情報が、適切な反応量を決定するために有用なことがあります。
  • 相互作用量が高い場合に推奨される1,000細胞あたりの反応量は1μL(100 μL中に100,000細胞)です。細胞数および/またはターゲットタンパク質の発現量に従い、反応量を適切に調整してください。
  • サンプル全体を覆うのに十分な反応量があることを確認してください。

図3.反応ごとに細胞数が異なると結果に影響する

一次抗体結合がない、または不十分
  • 一次抗体のパフォーマンスを発揮させるためのサンプルの処理条件が最適化されていること、ならびにターゲットの存在部位を確認してください。
  • 一次抗体を2種類使用する場合、両方の一次抗体に対応したサンプル処理が必要です。
  • 単独識別によるPLA法を用いて一次抗体を個別に滴定してください。

Duolink PLA試薬の希釈率が不適切

  • Duolink flowPLA試薬は濃縮ストック溶液として供給されます。推奨(ライゲーションバッファー、増幅バッファー、および検出バッファーは1:5、リガーゼは1:40、ポリメラーゼは1:80)通りに希釈してください。

図4.Duolink flowPLA試薬を推奨以上に希釈すると、結果に悪影響を及ぼす

Duolink PLA試薬の保存が不適切

  • すべてのDuolink PLA試薬の推奨保存条件を守ってください。
  • 希釈後のDuolink™ PLA試薬は保存しないでください。
インキュベーション温度が不適切
  • 最良の結果を得るには、特に酵素を用いる手順(ライゲーション反応と増幅反応)では、全手順を適切な温度で実施してください。
ライゲーション反応が不十分
  • ライゲーション反応において推奨されるインキュベーション時間および温度を守ってください。
  • ライゲーション試薬の添加前に、サンプルに余分な洗浄バッファーが残っていないことを確認してください。
  • リガーゼが活性を維持しており(すなわち-20℃で保存されている)、試薬が正しく希釈されていることを確認してください。
  • 使用直前に新しい希釈液を調製してください。使用前に酵素と混和後5分以上放置しないでください。
増幅反応または検出反応の効率が悪い
  • ターゲットタンパク質の発現量または相互作用に関する情報が、適切な増幅時間や検出時間を決定するために有用なことがあります。増幅時間や検出時間は調整可能です。
  • 相互作用量が高い場合に推奨される増幅時間は37℃で100分です。ターゲットの発現量または相互作用量が低い場合は、増幅時間を37℃で一晩まで延長可能です。
  • 検出時間の範囲は10~60分です。予備実験を経て、最適な検出時間を決定する必要があることもあります。
  • 増幅バッファーまたは検出バッファーを添加する前に、サンプル中に余分な洗浄バッファーが残っていないことを確認してください。
  • ポリメラーゼが活性を維持しており(すなわち-20℃で保存されている)、試薬が正しく希釈されていることを確認してください。
  • 使用直前に新しい希釈液を調製してください。使用前に酵素と混和後5分以上放置しないでください。

図5.低発現のターゲットを検出する場合は、増幅時間の延長が有用な場合がある

洗浄バッファーの使用が不適切
  • 洗浄バッファーの温度が結果に悪影響を及ぼす可能性があります。使用前に洗浄バッファーが室温であることを確認してください。
  • 洗浄はすべて室温で行ってください。
  • 新たな試薬の添加前に適切に余分な洗浄バッファーを除去してください。洗浄バッファーが残っていると抗体がさらに希釈されたり、リガーゼやポリメラーゼの機能が阻害されたりする可能性があります。
画像取得に使用したフィルターを間違えている
  • Duolink flowPLA Detection Reagent Violetの蛍光色素は、励起波長390 nm、発光波長476 nmであり、波長405 nmのレーザー光で励起することが可能です。
  • Duolink flowPLA Detection Reagent Greenの蛍光色素は、励起波長495 nm、発光波長527 nmであり、波長488 nmのレーザー光で励起することが可能です。
  • Duolink flowPLA Detection Reagent Orangeの蛍光色素は、励起波長554 nm、発光波長579 nmであり、波長532 nmまたは561 nmのレーザー光で励起することが可能です。
  • Duolink flowPLA Detection Reagent Redの蛍光色素は、励起波長594 nm、発光波長624 nmであり、波長532 nmまたは561 nmのレーザー光で励起することが可能です。
  • Duolink flowPLA Detection Reagent Far Redの蛍光色素は、励起波長644 nm、発光波長669 nmであり、波長638 nm、640 nmまたは642 nmのレーザー光で励起することが可能です。
  • マルチカラーフローサイトメトリーを実施する場合は、適切に補正し、蛍光シグナルの重なりによる漏れ込みを抑えるようにしてください。
  • 使用する装置が適切にキャリブレーションされていることを確認し、フロー解析前に洗浄してください。

細胞の回収率

考えられる原因推奨される解決策
細胞数の減少
  • 溶液を除去する際にペレットに触れないようにしてください。
  • 細胞回収率を高めるために遠心速度を上げてください。注記:過剰な遠心分離は細胞凝集を引き起こす可能性があります。
  • 洗浄バッファーにBSAまたはFBSの添加を検討してください。
  • フィルタープレートまたはフィルターカップを使用してください。Multiscreen® HTS HVフィルタープレート および Ultrafree® MC-HVフィルターカップ が推奨されます。
  • セルウォッシャーを使用してください。
細胞凝集
  • 細胞ペレットを洗浄バッファーに完全に再懸濁してください。
  • カルシウム・マグネシウム不含バッファー(任意で1~5 mM EDTAを添加)を使用してください。
  • 泡立たないようにし、強くボルテックスせず、過剰な遠心分離を避けてください。
  • 開始サンプルが末梢血の場合は、抗凝固剤を用いてください。

データ取得

考えられる原因推奨される解決策
自家蛍光
  • 自家蛍光シグナルが細胞や組織サンプル由来の場合もあります。可能であれば、検出色を緑から遠赤などに変更してみてください。
  • 検出反応後の洗浄回数または洗浄バッファーによる洗浄量を増やしてください。
細胞数が不十分
  • 細胞減少率を算出するために染色前後で細胞数をカウントしてください。
  • 解析における細胞濃度およびフロー速度に関して推奨される装置の仕様を用いてください。細胞濃度が高いとフローサイトメーターに目詰まりが生じたり、解像度に影響が出たりすることがあります。
  • セルストレーナーまたはメッシュフィルターを用いてサンプルをろ過してください。
PMTの電圧設定が不適切
  • S/N比(シグナル/ノイズ比)を最大にするためPMT電圧を適切に設定してください。
  • 染色細胞の集団が測定限界を超えることはありません。
  • 検出器をlinearモードで使用してください。
  • 陽性と陰性が良好に分離されていることを確認してください。
シグナルが融合している
  • フロー後またはフロー中に画像を取得する場合、増幅時間の延長によりシグナルが融合する場合があります。ライゲーションおよび増幅の推奨時間を守ってください。
  • 一次抗体価が高すぎると、シグナルが融合する場合があります。単独識別によるPLA法を用いて一次抗体を個別に滴定してください。

図6.増幅時間の延長によりPLAシグナルが融合する場合がある

よくあるお問い合わせ

Duolink PLAテクノロジーに関するよくあるお問い合わせについては、Duolink PLAトラブルシューティングガイド を参照してください。

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