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ウェスタンブロッティング用Prestige Antibodies®

ウェスタンブロッティング

ウェスタンブロッティング(WB)は、最も感度が高く、シンプルで、明確な免疫検出アプリケーションと考えられています。その理由は、ターゲットタンパク質の分子量や定量的および定性的情報など、性能に応じて得られる情報量が豊富であることにあります。

Human Protein Atlas

Human Protein Atlas(HPA)プロジェクト1,2は、抗体ベースのプロテオミクスを用いてヒトプロテオームを体系的に調べられるようにするために発足されました。これを実現できたのは、高スループットのPrestige Antibodies®生成に、大量のヒト組織および細胞のタンパク質プロファイリングを組み合わせたことによります。Prestige Antibodies®の標準的な評価法は、免疫組織染色もしくは免疫細胞染色(IHC、ICC)ですが、すべての抗体はWBと免疫蛍光染色(IF)でも試験されます。得られたIHC、WB、ICC、およびIF画像は、Human Protein Atlasウェブポータルで公開され3、毎年、約2,500の新しいタンパク質の発現データと局在性データが追加されます。すべてのヒトプロテオームの局在性データの最初のドラフトは、2015年までに公開されています。

Prestige Antibodies®は、全タンパク質ライセートを用いた標準的なサンプルセットアップのWB(図1)で試験されています。試験の試行は1回で、得られたブロット画像はHPAポータルで公開されます。ほとんどのPrestige Antibodies®のHPAタンパク質サンプルセットアップは、肝組織、扁桃組織、膀胱移行上皮がん細胞株RT-4、神経膠芽腫細胞株U-251MG、およびIgG/HSA-枯渇ヒト血漿のライセートです。単独のバンドを示す、バンドを示さない、または複数のバンドを示すことに関係なく、全5つのサンプルレーンを含むブロット全体が提示されます。

Human Protein Atlasプロジェクトで使用されているWBプロトコルの模式図。

図1.Human Protein Atlasプロジェクトで使用されているWBプロトコルの模式図。タンパク質は電気泳動により分子量に応じて分離される。Prestige Antibodies®は、メンブレンへの転写および固定化後、ターゲットタンパク質を検出するための一次抗体として使用される。抗体の結合は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識済みの二次抗体を用いて、CCDカメラシステムで化学発光検出によって可視化される。

WB検出への生物学的特徴の影響

検出できない、またはバックグラウンドしか検出しないなどの失敗は、技術的問題だけでなく、解析対象タンパク質の生物学的特徴が関係していることがあります。たとえば、ターゲットタンパク質が、短い細胞過程やステージの間のみ、あるいは特定の細胞や組織内に存在する場合のみ発現しているかもしれません。また、存在するタンパク質の量が少なすぎて検出できない場合もあります。

実際のバンドサイズが予測と異なるのはなぜか?

ゲル中のタンパク質の移動は、タンパク質のサイズ以外の要因からも影響を受けます。たとえば、以下のような要因があります。

  • スプライスバリアント:選択的スプライシングで1つの遺伝子が異なるサイズのタンパク質を生成
  • 翻訳後修飾によるタンパク質分子量の増加
  • プロタンパク質の翻訳後切断活性化によるタンパク質分子量の減少
  • 二量体と多量体の存在によるタンパク質分子量の増加

Human Protein Atlasのスコアシステム

WBにおけるPrestige Antibodies®の性能は、HPAのスコアシステムによりバリデーションされ、その結果から検証済み、未定、および未検証のいずれかに割り当てられます。検証済みは、追加バンドがあるかどうかにかかわらず予測サイズのバンドが得られた場合です(図2および3)。未定は、空ブロット(バンドなし)の場合または各シングルバンドの予測サイズ(kDa)からのずれが±20%を超える場合です。最後の未検証は、予測サイズに該当しないバンドがブロットに存在する場合、または予測サイズのバンドが弱い場合で、より高い強度の追加バンドが存在する場合です。

HPAでは、検証済みおよび未定として割り当てられたWB画像を見ることができ、データ評価は自由に行えます。未検証として割り当てられたWB画像は表示されません。

kDa(±20%)の予測サイズに該当するシングルバンドを示すバリデーション済みのWB画像の例

図2.kDa(±20%)の予測サイズに該当するシングルバンドを示すバリデーション済みのWB画像の例

A) HPA000898 抗HSPA9 ターゲット分子量:74 kDa。レーン1:マーカー[kDa]:206,113,82,49,32,26,17.8、レーン2:RT-4、レーン3:U-251MG sp、レーン4:A-431、レーン5:肝臓、レーン6:扁桃腺

B) HPA007292 抗SLC27A5 ターゲット分子量:75,67 kDa。レーン1:マーカー[kDa]:230,130,95,72,56,36,28,17,11、レーン2:RT-4、レーン3:U-251MG sp、レーン4:ヒト血漿、レーン5:肝臓、レーン6:扁桃腺

kDa(±20%)の予測サイズのバンドを示し、さらに追加バンドが存在するバリデーション済みのWB画像の例

図3.kDa(±20%)の予測サイズのバンドを示し、さらに追加バンドが存在するバリデーション済みのWB画像の例

A) HPA002877 抗PGRMC1 ターゲット分子量:22 kDa。レーン1:マーカー[kDa]:206,113,82,49,32,26,17.8、レーン2:RT-4、レーン3:U-251MG sp、レーン4:A-431、レーン5:肝臓、レーン6:扁桃腺

B) HPA004125 抗MARS ターゲット分子量:101,49 kDa。レーン1:マーカー[kDa]:230,110,82,49.3,32.2,25.5,17.6、レーン2:RT-4、レーン3:U-251MG sp、レーン4:ヒト血漿、レーン5:肝臓、レーン6:扁桃腺

過剰発現ライセートでのWB

全タンパク質ライセートを用いて以前に未定または未検証として評価された抗体に対して過剰発現ライセート(Origene Technologies社)の試験を実施しており、90%の解析結果が検証済みと評価されています。

免疫ブロッティングプロトコル

電気泳動およびブロッティング

サンプル調製

タンパク質サンプル(選択した組織ライセート、細胞ライセート、または過剰発現ライセート)をLaemmliバッファー(最終ローディング濃度が2% SDS、10%グリセロール、0.002%ブロモフェノール・ブルー、0.0625 Mトリス塩酸)と混合し、DTTを添加して最終濃度を50 mMとし、さらに95℃で5分間インキュベートします。

手順

  1. タンパク質サンプルを4~20%ポリアクリルアミドのCriterion TGXプレキャストゲルにロードします。製造元のプロトコルに従って電気泳動を実行します。
  2. Trans-Blot Turbo転写システム(Bio-Rad社)を使用し、製造元のプロトコルに従って、タンパク質を半乾燥転写によってゲルからPVDFメンブレンへ転写します。

免疫検出法

すべてのインキュベーションと洗浄のステップを、撹拌しながら室温で行います。

手順

  1. 前のステップで乾燥させたメンブレンをメタノールに20秒間浸けて活性化させます。一次および/または二次抗体のメンブレンへの非特異的バックグラウンド結合を防ぐために、ミルクベースのブロッキングバッファー(0.1%(v/v)TWEEN® 20を含むTBSで希釈した5%(w/v)脱脂粉乳)で45分間メンブレンをブロッキングします。
  2. 一次抗体をブロッキングバッファーで希釈してから、ブロッキングしたメンブレンを1時間インキュベートします。

    注記:一次抗体の推奨希釈倍率は、あくまでガイドラインとしてご参照ください。最適な希釈倍率は、予備実験を経てご自身で決定してください。

  3. 一次抗体残留物を除去するために、メンブレンをTBST(0.1%(v/v)TWEEN® 20を含むTBS)で5分間ずつ3回洗浄します。
  4. 二次抗体(モノクローナル抗体の場合はHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン、ポリクローナル抗体の場合はHRP標識ブタ抗ウサギ免疫グロブリン)をブロッキングバッファーで1:3,000に希釈してから、メンブレンを30分間インキュベートします。
  5. 二次抗体残留物を除去するために、メンブレンをTBSTで5分間ずつ4回洗浄します。
  6. メンブレンを検出試薬で1分間インキュベートします。
  7. CCDカメラで画像を撮影します。

まとめ

  • Prestige Antibodies®の60%は、ウェスタンブロットへの適用が推奨され、HPAでは検証済みとして評価されています。
  • Prestige Antibodies®は、標準的な免疫ブロッティングプロトコルと、4種類の全タンパク質ライセートおよびヒト血漿からなるサンプルセットアップを用いた、1回のWBで解析されています。
  • Human Protein Atlasポータルでは、ウェスタンブロット全体を表示して自由にデータ評価を行えます。
  • WBへの使用が確認されている各Prestige Antibodyは、IHCへの使用も確認されています。広範囲に及ぶさまざまな正常組織とがん組織におけるタンパク質の発現と局在性を示すIHC画像は、1抗体あたり500を超えます。Human Protein AtlasポータルではすべてのIHCデータを確認できます。

参考文献

1.
Nilsson P, Paavilainen L, Larsson K, Ödling J, Sundberg M, Andersson A, Kampf C, Persson A, Szigyarto CA, Ottosson J, et al. Towards a human proteome atlas: High-throughput generation of mono-specific antibodies for tissue profiling. Proteomics. 5(17):4327-4337. https://doi.org/10.1002/pmic.200500072
2.
Berglund L, Björling E, Oksvold P, Fagerberg L, Asplund A, Al-Khalili Szigyarto C, Persson A, Ottosson J, Wernérus H, Nilsson P, et al. 2008. A Genecentric Human Protein Atlas for Expression Profiles Based on Antibodies. Mol Cell Proteomics. 7(10):2019-2027. https://doi.org/10.1074/mcp.r800013-mcp200
3.
The Human Protein Atlas. [Internet]. Available from: http://www.proteinatlas.org
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