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ホーム薬物送達NanoFabTx™:薬物送達向け製剤キットとマイクロ流体デバイスキット

NanoFabTx™:薬物送達向け製剤キットとマイクロ流体デバイスキット

NanoFabTx™プラットフォームによるドラッグデリバリー製剤のソリューション

従来の手法の課題

 

NanoFabTx™によるソリューション

バッチ間の変動が大きい

再現性のある安定したナノキャリア製造
粒子径が一定しない

粒子径の精密な制御
製剤のスクリーニングと選定に時間と労力がかかる

高度に設計された製剤スクリーニングキットにより、ナノキャリアの選択と最適化を迅速かつ容易に実施可能

図1  NanoFabTx™ドラッグデリバリー製剤プラットフォームは、粒子径の正確な制御が可能で、均質なナノキャリアを再現性よく製造できます。また、高度に設計された製剤スクリーニングキットにより、迅速かつ容易にナノキャリアの選択と最適化を行うことができます。

近年の核酸医薬の進歩に伴い、ドラッグデリバリー製剤は多くの医薬品有効成分(API:active pharmaceutical ingredient)の送達、有効性、安定性において極めて重要かつ不可欠なものとなってきています。しかし、APIに最適な製剤の開発は、往々にして手間と時間のかかるプロセスであり、試行錯誤を繰り返しながら最適化を図る必要があります(図1)。これら製剤化および粒子合成のプロセスを合理化するために、「NanoFabTx™プラットフォーム」が開発されました。  NanoFabTx™には、すぐに使用できる試薬キットとマイクロ流体デバイスキットがあり、ナノからマイクロサイズの粒子およびリポソームを高い再現性で合成可能で、速やかな医薬品開発を支援します。各キットには、初心者、専門家を問わず誰でもドラッグデリバリー製剤を調製できるように設計されたプロトコルが含まれています。

ドラッグデリバリー製剤と粒子合成の簡便化  

NanoFabTx™プラットフォーム:ドラッグデリバリーシステムのための迅速な製剤開発とスクリーニング

NanoFabTx™プラットフォームには、製剤スクリーニングキット、lipid mixおよびマイクロ流体デバイスキットがあります。低分子または核酸送達用の製剤キットおよびlipid mixは、製剤科学者によって開発および試験されたもので、様々な担体/賦形材料として入手可能です(図2)。各キットには、ナノ沈殿法や押出法などの汎用的な方法、あるいはNanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットを用いたマイクロ流体工学を基盤とした方法によるナノ粒子合成と薬物封入のプロトコルが含まれています。

NanoFabTX™キット

治療薬

キャリア材料

核酸

低分子化合物

NanoFabTx™ Lipid Mixes

リポソームのイメージ

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  • PEG化脂質
  • アミン修飾脂質
  • カルボキシル基修飾脂質
  • DC-コレステロール脂質
  • カチオン性DOTAP脂質

NanoFabTx™高分子製剤キット

高分子ナノ粒子のイメージ

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  • PLGA
  • PLA
  • PCL
  • PEG_PLA
  • PEG-PCL
  • PEG-PLGA

NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキット

デバイスキットのイメージ

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lipid mix・高分子薬剤製剤キットを用いたリポソームや高分子ナノ・マイクロ粒子の調製が可能

図2  NanoFabTx™の各キットの概要。低分子および核酸送達用のlipid mix・高分子製剤キット、マイクロ流体デバイスキットがあります。

ナノ粒子合成用NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキット  

デバイスキットの概略図

図3NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットの概略図

マイクロ流体工学を用いることによって、従来の調製方法では得られない、精密に制御されたマイクロおよびナノ粒子、脂質ナノ粒子、リポソームを迅速かつ再現性よく合成できます。NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットは、バッチ間の一貫性と低い変動性を実現できるように精密かつ柔軟な制御が可能で、従来の方法に共通する課題を解決できます(図3)。  

デバイスキットを用いた粒子サイズの調整

図4流量比によるNanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットを用いた粒子サイズの調整

マイクロ流体デバイスキットには、すぐに使えるように、組み立て済みのマイクロ流体チップ、チューブ、およびアクセサリが含まれており、ナノフォーミュレーションの実験をすぐに始められます。プロトコルには、所望の粒子径を得るための推奨される流速(図4)を含め、制御された粒子を合成するための詳細な手順が示されています。

さらに、NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットは、マイクロおよびナノキャリアの製造、最適化および選択において、NanoFabTx™製剤キットおよびlipid mixと共に使用できるように設計されています。  

低分子送達用NanoFabTx™高分子製剤キット

高分子製剤ナノ粒子のイメージ

高分子ナノ粒子は、薬剤の安定性、バイオアベイラビリティおよび標的送達を良好に高めるための重要なツールです。用いる高分子は、生分解性や機能性などの特性を目的に応じて多様な中から選択、調整できるため、低分子薬の制御された放出に理想的な材料です。NanoFabTx™製剤キットは、望んだサイズの薬物封入ポリマーマイクロおよびナノ粒子を合成できるように設計されています。この製剤スクリーニングキットは、PEG化および非PEG化PLA、PLGA、PCLなど、さまざまな生分解性ポリマーを選択できるため、ポリマーの選択と最適化が容易になります。

NanoFabTx™製剤キットによるナノ粒子径のスクリーニングと選択

PEG-PLGA製剤キットを用いて作製した、再現性のある制御された薬物封入高分子ナノ粒子

図5NanoFabTx™ PEG-PLGA製剤キットを用いて作製した、再現性のある制御された薬物封入高分子ナノ粒子

NanoFabTx™ PEG-PLGA製剤スクリーニングキット(917796)を用いたマイクロ流体法によって、60~180 nmの様々なサイズのポリマーナノ粒子を合成しました(図5)。ナノ粒子サイズはナノ粒子製剤に依存し、ポリマー種(PEGPLGA-50L、-50H、-75L、-75H)およびポリマー濃度(1~5%)によって変化しました。

ドセタキセルを封入したNanoFabTx™ナノ粒子の流体力学サイズとその再現性

図6ドセタキセルを封入したNanoFabTx™ナノ粒子の流体力学サイズとその再現性

NanoFabTx™製剤キットによるナノ粒子サイズの再現性に優れる低分子薬のカプセル化

マイクロ流体法を用いて、様々な薬剤濃度(2.5および5%)およびポリマー濃度(1~5%)のPEG-PLGAポリマーナノ粒子にドセタキセル(DTX:Docetaxel)をカプセル化しました(図6)。薬物の有無にかかわらず、制御されたナノ粒子を再現性よく合成できたため、ナノ粒子サイズの差の影響を排除して、薬物を封入した粒子と封入していない粒子を直接比較することが可能です。

DTXを封入したNanoFabTxナノ粒子の薬物送達スクリーニングにおける細胞生存率

図7DTXを封入したNanoFabTxナノ粒子の薬物送達スクリーニングにおける細胞生存率

NanoFabTx™ナノ粒子のドラッグデリバリー効率のスクリーニングと条件選択

NanoFabTx™ PEG化ナノ粒子製剤スクリーニングキット(915408)を用いて様々な組成のDTX封入ナノ粒子を調製し、in vitroでの抗癌剤の送達およびPC3癌細胞の死滅能力を評価しました(図7)。48時間後、すべてのナノ粒子製剤においてDTXの送達に成功し、約80%の細胞死をもたらしました。未封入のナノ粒子は生体適合性があり、細胞毒性がなく、細胞の生存率に影響を与えませんでした。

低分子送達用NanoFabTx™ Lipid Mix

リポソームおよび脂質ナノ粒子は、低分子化合物を含む様々な治療薬の効果的な送達システムとして十分に確立されています。

リポソームおよび脂質ナノ粒子は、低分子化合物を含む様々な治療薬の効果的な送達システムとして十分に確立されています。低分子治療薬に向けて、PEG化および官能基化(アミンおよびカルボキシル基)された、標的送達および放出制御用のさまざまなNanoFabTx™ lipid mixを提供しています。

薬剤を封入したNanoFabTx™リポソームの押出法およびマイクロ流体法による調製

薬物封入リポソーム直径の比較

図8NanoFabTx™ PEG lipid mixとデバイスキットを用いた制御された薬物封入リポソームの合成

PEG化リポソームの合成に適したNanoFabTx™-PEG lipid Mix(922420)を用い、付属のプロトコルに従ってドキソルビシン(Dox:Doxorubicin)封入リポソームを調製しました。その結果、直径約120 nmのPEG化リポソームが得られました。NanoFabTx™マイクロ流体ナノデバイスキット(911593)を用いたマイクロ流体法での調製では、流速比などのマイクロ流体パラメータの最適化によりリポソーム径の制御が可能となり、Dox添加・非添加ともにリポソームの大きさを小さくすることに成功しました(図8)。

薬剤充填NanoFabTx™リポソームによる細胞内へのドキソルビシンの送達

Doxを封入したPEG化リポソームの細胞生存率グラフ

図9ADoxを封入したPEG化リポソームの細胞生存率グラフ

がん細胞の小胞体の写真

図9Bがん細胞の小胞体の写真

PC3癌細胞に対して、Dox封入PEG化リポソームの細胞内デリバリーを評価しました。PEG化リポソームの細胞内への取り込みが観察され、ドラッグデリバリーの重要なターゲットである小胞体(ER:endoplasmic reticulum)への集積が確認されました。活性なDoxがリポソームから放出され、50%のがん細胞を死滅させました。ブランク(未封入)のPEG化リポソームには生体適合性があり、細胞毒性はないことがわかりました(図9)。

核酸送達用NanoFabTx™ Lipid Mix

NanoFabTx™ lipid mixは、核酸(mRNA、siRNA、DNA)のデリバリーにも使用することができます。NanoFabTx™ DOTAP lipid mixおよびNanoFabTx™ DC-Cholesterol lipid mixは、カチオン性リポソーム調製用に精密に設計されており、製剤科学者によってsiRNA送達がテストされています。

NanoFabTx™ DOTAPリポソームで送達されたsiRNAのトランスフェクション

図10NanoFabTx™ DOTAPリポソームで送達されたsiRNAのトランスフェクション

NanoFabTx™ lipid mixで調製したリポソームによる、核酸の分解からの保護、細胞への取り込み、エンドソームからの脱出、およびトランスフェクションの促進

NanoFabTx™ DOTAP lipid mixで調製したカチオン性リポソームに蛍光標識FAM-siRNA(Lipo-FAM-siRNA)を封入させてA549肺癌細胞に送達したところ、蛍光の増大により90%のトランスフェクションが確認されました。リポソームに封入させていないnaked FAM-siRNAでは、トランスフェクションは観察されませんでした(図10)。

NanoFabTx™ Lipid MixによるsiRNAの迅速なスクリーニングと選択プロセスの簡素化

DOTAPリポソームにおけるトランスフェクション効率のスクリーニング

図11様々な配列のsiRNAを封入したNanoFabTx™ DOTAPリポソームにおけるトランスフェクション効率のスクリーニング

複数の配列のsiRNA(A、B、C)をNanoFabTx™ DOTAP lipid mixで調製したカチオン性リポソームに封入し、in vitroでGFP標識HeLa細胞に対するサイレンシング能をスクリーニングしました(図11)。siRNA-AとsiRNA-Bのトランスフェクション効率は、相対蛍光測定から40~60%であることがわかりました。siRNA-Cには効果がなく、GFP遺伝子はサイレンシングされませんでした。さらに、調製方法(マイクロ流体または押出法)は、トランスフェクション効率に影響を与えませんでした。

上記の研究により、NanoFabTx™ドラッグデリバリー製剤プラットフォームが、多様で高度に制御された高分子マイクロ・ナノ粒子およびリポソームの合成に適していることが実証されました。NanoFabTx™プラットフォームの柔軟性により、調製法や流速などのパラメータをスクリーニングして最適化し、所望のサイズ、カプセル化効率、および送達を達成することが可能です。各製剤キットおよびlipid mixは、低分子、核酸(mRNA、siRNA、DNA)、その他APIなどのさまざまな治療薬に適用でき、NanoFabTx™マイクロ流体デバイスキットを使用して前臨床評価用にスケールアップすることもできます。NanoFabTx™プラットフォームにより、薬物送達研究をかつてないほど容易に行うことができます。

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