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迅速測光試験による工程用水およびボイラー水中のケイ酸塩の高感度定量

Katrin Schwind,1, Gunter Decker2

1Application Scientist, Analytical Point-of-Use R&D;, 2Senior Manager, Analytical Sciences Liaison, Spectroscopy

経済効率は、これまでにも増して日々の生活の重要な側面になりつつあり、工場や設備の効率性は、持続可能な経済運用にとって基本的前提条件の一つとなっています。効率性が失われる原因となりうる一つの避けられない問題は、パイプ、ボイラー、タービンの内部スケールなどの望ましくない沈積の形成によって引き起こされます。

このような機器の内部スケールの主な原因はケイ酸塩です。特に、高圧タービンの内部のような高圧下では、内部表面にケイ酸塩が沈積します。この問題は、主に蒸気中に溶解されたケイ酸塩が原因で生じます。1

蒸気が膨張するとケイ酸塩の溶解能が低下し、これが原因でタービン翼などの周囲表面で固形物の二酸化ケイ素が形成され、ひいては工場効率の低下を招きます。2

手間がかかる上に機械の稼働を妨げる清浄作業の必要性を最小限に抑えるために役立つ方法の一つが、ボイラーやボイラー給水のケイ酸塩濃度の定期点検です。

指針となる値は、ボイラーのさまざまな稼働条件(蒸気容量、加熱表面負荷、作動圧など)によって異なります。高圧タービンの場合は、蒸気中のごくわずかなケイ酸塩濃度でも沈積を引き起こすおそれがあります。このような沈積を避けるには、蒸気のケイ酸塩濃度が20 µg/L SiO2を超えないようにすることがほとんどの場合に推奨されます。3,4 稼働条件によっては、ケイ酸塩を10 µg/L SiO2以下まで低く制限することもあります。2

分析方法

このような低い範囲のケイ酸塩濃度を測定するには、きわめて高感度の検出法が必要です。よく選択される方法に黒鉛炉原子吸光分析(GF-AAS)があり、比較的低いppb範囲のケイ酸塩濃度を検出できます。元素分析法に加えて、従来の測光分析も信頼性の高い方法であることが実証されています。

この方法は、酸性溶液中のケイ酸イオンとモリブデン酸イオンとの反応による、黄色いシリコモリブデン酸の生成に基づいています。さらに適切な還元剤を添加すると濃い青色のシリコモリブデンブルーが生成され、これを測光分析法で測定します。5

ケイ酸塩テストキット

モリブデンブルー法は、メルクのSpectroquant®テストキットシリーズの測光ケイ酸塩テスト(製品番号101813)にも使用されている測定原理です。

この試験の長所は、迅速かつ容易に使用でき、高価な装置が不要なことです。必要なすべての試薬は、そのまま使用できる形でテストキットに同梱されて供給されます。従来の測光分析とは異なり、対応するSpectroquant®光度計を使用すれば測定方法が予めデバイスにプログラムされているため、時間のかかる校正手順が不要になります。Prove 600分光光度計に100 mmセルを使用すれば、0.25 µg/L SiO2までの低いケイ酸塩濃度を測定できるため、極めて少量の溶解ケイ酸塩を確実に検出できます。テストキットの総合的な測定範囲は0.25~500.0 µg/L SiO2です。

Spectroquant<sup>®</sup> Prove 600光度計

図1.Spectroquant® Prove 600光度計

Spectroquant®ケイ酸塩テストの測定性能

工程用水サンプルのケイ酸塩含有量は、テストキットの測定範囲の低い領域に相当します。実験の過程で、試薬Si-1およびSi-2を滴状ではなくピペットを用いて添加すれば測定範囲の低い領域の精度を高められることが判明しました。

これに応じて、この手順をテストに採用しました。さらに、可能な限り高い精度を確保するために、製品に同梱されている使用説明シートに記載の手順を、滴下からピぺッティングに変更しました。また、手順全体でガラス器具を絶対に使用しないよう注意を払いました。サンプル溶液に濁りが生じたら、事前にろ過する必要があります。

ケイ酸塩テストは、20 mLのサンプル溶液をプラスチック製テスト容器にピぺッティングすることから始まり、次に200 µLの試薬Si-1を添加します。溶液を混合してから5分間放置します。放置時間が経過したら、200 µLの試薬Si-2を添加してから溶液を混合し、さらに1.00 mLの試薬Si-3を添加します。溶液を再度混合し、5分間放置して反応させてから、超純水を用いて同じように調製した試薬ブランクを対照として光度計で測定します。

手順の詳細な説明は、「工程用水およびボイラー水中のケイ酸塩の高感度定量」アプリケーションに記載されています。このアプリケーションは、Spectroquant®ケイ酸塩テスト101813の製品ページでオンライン閲覧できます。

Spectroquant®ケイ酸塩テストによる標準添加

工程用水中のケイ酸塩含有量の測定に対するSpectroquant®ケイ酸塩テストの適合性を表現する記述を得るための実験において、標準添加法を5種類のサンプルに適用しました。各サンプルを3つの異なる濃度のケイ酸塩でスパイクしました。回収ケイ酸塩濃度を求めるために、ケイ酸塩テストを使用して得られたサンプルのケイ酸塩濃度を、スパイクされたサンプルの測定結果から減算しました。評価のために、目標値(スパイク濃度)と回収濃度の偏差を求めました。その結果を表1に示します。

表1.ケイ酸塩の回収量

回収されたケイ酸塩スパイクは、すべて3.33 µg/L SiO2の95%信頼値の範囲内でした。それぞれのスパイクからの偏差値は0.14~2.40 µg/L SiO2の範囲内であり、平均値は0.93 µg/L SiO2でした。

予めプログラムされた方法の精度は、多くのユーザーにとって十分なものです。ただし、予めプログラムされた方法の誤差率がユーザーにとってまだ大きすぎる場合は、各自のカスタム検量線をプロットする、つまりバッチに固有の変動とユーザー独自の系統誤差を解消することにより測定方法の精度を高めることができます。

Spectroquant®ケイ酸塩テストのための検量線を0.50~25.00 µg/L SiO2の範囲でプロットしました。図2を参照してください。

0.50~25.00 µg/L SiO2の測定範囲のSpectroquant<sup>®</sup>ケイ酸塩テスト101813の検量線

図2.0.50~25.00 µg/L SiO2の測定範囲のSpectroquant®ケイ酸塩テスト101813の検量線

ケイ酸塩テストに関しては、カスタム検量線によって、ISO 8466-1とDIN 38402 A51のそれぞれに従って得られる性能特性を改善できました。予めプログラムされた方法とカスタム校正の性能特性比較を表2に示します。

表2.性能特性の比較

1.44%というメソッド変動係数の値は、予めプログラムされた方法の2.5倍です。これは相対的に見て、カスタム校正の結果として、偏差への影響が低い測定範囲の方で強く現れたという事実に起因する可能性があります。しかし絶対的に見れば、カスタム校正手順の標準偏差と信頼区間の値から分かるように、この手順の結果としてメソッド誤差が大幅に低減されています。カスタム校正のメソッド標準偏差とP=95 %の信頼区間は、予めプログラムされた方法よりも76%(標準偏差)および86%(信頼区間)低下しています。

ユーザーに固有の校正関数を使用して標準添加を評価すれば、偏差を期待値まで低減できます。これにより偏差の平均値は0.29 µg/Lとなり、元の値の0.94 µg/Lより約70%低減されたことが示されました。測定値を表3に示します。

表3.ケイ酸塩の回収量、カスタム校正に対する評価

GF-AASおよびSpectroquant®ケイ酸塩テストの測定方法比較

標準添加試験に加えて参照分析を実施しました。具体的には、5種類の水サンプルのケイ酸塩含有量をGF-AAS法により定量しました。GF-AAS法の定量限界(LOQ)をブランクの10倍の標準偏差を使用して測定した結果、1.93 µg/L SiO2という値が得られました。表4に、GF-AAS法の結果と、予めプログラムされた方法およびカスタム校正を使用して計算された測光測定法の結果との比較を示します。

表4.Spectroquant®ケイ酸塩テスト101813およびGF-AAS参照分析の結果比較

3種類のサンプルについては、GF-AAS法で測定したケイ酸塩濃度は1.93 µg/L SiO2のLOQを下回りました。この所見は、Spectroquant®テストキットによる測定でも確認できました。

発電所のサンプルはLOQを上回り、GF-AAS法の結果はSpectroquant®テストキットの結果と同等でした。すべての偏差は、予めプログラムされた方法およびカスタム校正の95%信頼区間の範囲内でした(表2を参照)。標準添加の場合も同様でしたが、誤差をさらに低減するためにカスタム校正が有用なことが明らかになりました。

まとめ

上記の結果から、Spectroquant®ケイ酸塩テストは、工程用水中および低いppb範囲の脱イオン水中のケイ酸塩濃度の定量値を提供できることが示されました。このテストのケイ酸塩測定精度で十分なユーザーは、予めプログラムされた方法を使用してサンプルのケイ酸塩含有量を迅速かつ容易に測定できます。さらに精度の高い測定方法が必要な場合は、ユーザー自身のカスタム検量線の作成が推奨されます。これにより、スパイク量が約70%増加されて、スパイク量の平均偏差を低減できることが示されました。

使用した装置

すべての測定は、Prove 600分光光度計のアプリケーションに従って実施されました。参照方法には、Agilentが提供するSpectrAA 280Z装置の黒鉛炉原子吸光分析法を使用しました。

入手可能なすべてのSpectroquant®テストキットは、SigmaAldrich.com/test-kitsのリストに掲載されています。

Spectroquant® Prove Spectrophotometerに関する詳細については、SigmaAldrich.com/spectroquantをご覧ください。

関連製品
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Bahadori A, Vuthaluru HB. 2010. Prediction of silica carry-over and solubility in steam of boilers using simple correlation. Applied Thermal Engineering. 30(2-3):250-253. https://doi.org/10.1016/j.applthermaleng.2009.07.010
2.
2013. The International Association for the Properties of Water and Steam, Technical Guidance Document:. Steam Purity for Turbine Operation.
3.
Zhou S, Turnbull A. 2002. Steam Turbine Operating Conditions. Chemistry of Condensates, and Environment Assisted Cracking – A Critical Review, NPL Report MATC (A) 95.
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Castellá M. 2007. Tratamiento quirúrgico de la fibrilación auricular. Cirugía Cardiovascular. 14(3):195-199. https://doi.org/10.1016/s1134-0096(07)70248-6
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Koch OG, Koch-Dedic GA. 1974. Handbuch der Spurenanalyse. https://doi.org/10.1007/978-3-642-65423-7
6.
April 2016. Package leaflet for the Spectroquant® Silicate (Silicic Acid) Test, Cat. No. 101813.
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