MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAおよびB:次世代サイトカインマルチプレックスアッセイ
サイトカインマルチプレックスアッセイにより、研究者は免疫系および炎症メカニズムを容易に調べることができます。マルチプレックスサイトカイン分析は、複数のサイトカインを同時に測定することによって、時間とリソースを節約します。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAおよびBは、質、ワークフロー、サンプル検出を改善させたマルチプレックスサイトカインパネルです。
サイトカイン、ケモカインおよび成長因子の役割
サイトカイン、ケモカインおよび成長因子は、オートクライン、パラクライン、エンドクラインのメカニズムを介してシグナル伝達を行う免疫系機能の重要なメディエーターです。これらの生体分子は、その多面的な免疫調節能により、多様な刺激に反応して、炎症を促進または抑制することにより免疫応答を制御します。 ヒトの健康と疾患のあらゆる相における免疫システムの役割に注目する研究がますます増えています。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAおよびBはそれぞれ、48種類のバイオマーカーの特有の組み合わせを少量のサンプル量で同時に測定できます。
MILLIPLEX®キットの品質
キットの開発・検証においては、測定サンプルの交差反応性が無視できるレベルであることを確認する選択性・特異性試験、ならびにシングルプレックスとマルチプレックスでアッセイ性能が一貫していることを確認する特異性試験が必要です。抗体の特異性を高めるため、バッファーと希釈液を最適化しており、サンプル中の目的のアナライトのみを検出します。また、血清/血漿サンプルを使う場合は、サンプルのマトリックスに最も近いSerum Matrixを慎重に選択し、標準タンパク質に加えてアッセイを最適化します。ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SAPE)濃度は、最適なシグナルになるように調製済みで、希釈不要ですぐに使える状態で提供しています。さらに、すべてのキットは、輸送時の安定性について厳しく試験が行われ、サンプルの温度や凍結/解凍に対する耐性についても試験が行われています。
バイオサンプルにおいて標準曲線のダイナミックレンジ内で検出できるように、キットのアナライトごとにサンプル希釈を最適化しています。本キットで試験されたサンプルには、正常および疾患の血清/血漿サンプルのほか、末梢血単核細胞上清(PBMC、各種薬剤による刺激/無刺激)があります。QCタンパク質として、各アナライトの組換えタンパク質(低濃度、高濃度)を同梱しています。2つのQCタンパク質(高濃度および低濃度)は、各標準曲線で適切なレンジを示すように製造されており、QCレンジシートを各キットに同梱しています。加えて、各アッセイで、毎回、実験に適したサンプルをコントロールとして加えることを推奨します。
詳しくは、MILLIPLEX®キットの品質に関する技術資料をご覧ください。
ワークフローの改善
1つのパネルに48種類のバイオマーカーを含むアッセイは、強力な研究用ツールです。すべてのアナライトを選択することができ、プロジェクトが進行するにしたがって、一部のアナライトに絞ることもできるため、研究者はフレキシブルに効率よく研究を進めることができます。ロット間で変化しない標準曲線を用いてpg/mLレベルでサイトカインを検出するため、非常に使いやすいアッセイです。ロット間で標準曲線が変化しないため、プロジェクト全体にわたって一貫した測定結果が得られます(図1)。
図1.パネルAおよびBの48プレックス標準曲線はSerum Matrixを用いて作成。ただし、*RANTESはAssay Bufferで作成。MILLIPLEX®のオーバーナイトプロトコルで各キットを試験。
また、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAおよびヒトサイトカインパネルBのプロトコルは、一般的なワークフローでわかりやすく、使いやすいように各ステップを記載しています。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルAのもう1つの改善点として、PDGF-AAおよびPDGF-AB/BBがいずれも希釈なしの血清/血漿サンプルで測定できるようになりました。これにより、従来のMILLIPLEX®キットやその他の市販のLuminex®テクノロジーベースのキットと同様にサンプルの希釈が不要になりました。血清/血漿サンプル中で発現量の高いRANTESについては、引き続き血清/血漿サンプルを1:100に希釈する必要があります。
ビーズ番号とアナライト名を数字とアルファベット順に配置したことにより、以前より簡単に、結果ファイルから目的のアナライトをすばやく見つけることが可能になりました。
サンプルの検出性
ヒトサイトカインパネルA
MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAでは、比較対照パネルと比べて標準曲線が改善しました。さらに、サンプル検出の点でも性能の向上が見られました。このパネルの開発目標の1つは、比較対照のMILLIPLEX®キット(カタログ番号:HCYTOMAG-60K、HCYP3MAG-63K、HTH17MAG-14K)と、サンプルの数値を近づけることでした。注目すべきことに、3種類のアナライトは文献上の値により近くなりました(GROα1,2、IL-41、IL-223,4,5)。図2および図3は、このパネルを使用してそれぞれ疾患サンプルと刺激したPBMCサンプルを解析した結果を示しています。
図2.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAを用いて、健常者の血清/血漿サンプル(BioIVTより入手)および敗血症患者の血清/血漿サンプル(BioIVT、Discovery、BioChemedより入手)を希釈せずに(25 μL/ウェル)測定した結果。健常者の血清/血漿サンプル、N=20。敗血症の血清/血漿サンプル、N=16。
図3.ヒトPBMCサンプル(BioIVTより入手)を106 cells/mL、10% FBSおよび1% Penicillin/ Streptomycin含有RPMI、1 μg/mL LPSまたはCon Aで、37℃で48時間インキュベーションした。その後、無細胞上清を採取し、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAを用いて測定した。
詳細は、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAに関するアプリケーションノートをご覧ください。
ヒトサイトカインパネルB
MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルBの48プレックスキットを、他のLuminex® Brandキット[ディスカバリーアッセイおよび性能アッセイ(高度のアッセイ検証を含むと報告されている)を実施できるBrand 1を含む]と対比して試験しました。
この比較では、Brand 1のディスカバリーアッセイをBrand 1D、性能アッセイをBrand 1Pと呼びます。MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBを、その他のLuminex®パートナーキット(Brand 2およびBrand 3と呼ぶ)とも比較しました。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBのグランザイムBは、健常者血清・患者血清および健常者血漿・患者血漿サンプルのいずれでも、100%のサンプル検出能を示しました(図4A)。対照的に、Brand 1Pでは、2つの患者サンプルで検出可能であったのみで、いずれの健常者サンプルでもバックグラウンドを超える検出はみられませんでした。同じBrandのディスカバリーアッセイは、良好なサンプル検出能を示し、MILLIPLEX®ヒトパネルBと比較して、健常者サンプルと患者サンプルの検出範囲は同程度でした。文献検索によると、一般的なグランザイムB値は2~50 pg/mL6,7と考えられ、MILLIPLEX®パネルの健常者血清および健常者血漿サンプルでは平均8.9 pg/mLでした。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBを用いたところ、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TNF-related apoptosis-inducing ligand:TRAIL)は、すべての健常者・患者サンプルで検出可能でした。Brand 1Pでの患者サンプルでの検出は9/16(56%)でした。敗血症の免疫反応調節因子であるTRAIL値は、敗血症時に低下すると、予後は不良となります。8 MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBは、敗血症を含む患者サンプルにおいて、このTRAIL濃度の低下傾向を追跡できました。この傾向は、やや劣りますが、他のブランドのマルチプレックスパネルでも確認されました(図4B)。健常者のTRAILの平均値は、約50~100 pg/mLであることが明らかになっており、それはMILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBの結果と一致します。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBキットにより、MIP-3βは100%の健常者血清・健常者血漿サンプルで検出可能でした。他のブランドキットと比較したところ、結果の平均はBrand 2およびBrand 3のキットと同程度であり、文献の範囲9とも一致しました。Brand 1Dおよび1Pのキットは、2つのサンプルで偽陽性結果を示し、その結果は、5つのマルチプレックスキット全体の他の健常者サンプルのほぼ3倍でした(図4C)。Brand 2および3のキットはいずれも、患者サンプルを含めて血清・血漿サンプルの89%でMIP-3βを検出可能でした(データ非表示)。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBキットにより、CXCL6/GCP-2は100%のサンプルで検出可能であり、その平均値はBrandキット2および3と一致しました。MILLIPLEX®パネルBは、40~350 pg/mLという文献範囲とも一致しました10。他のアナライトと同様、Brand 1Dのキットは再び偽陽性結果を示し、健常者サンプルの平均濃度は、他のアッセイのほぼ4倍となりました(図4D)。Brand 2のマルチプレックスアッセイを使用したとき、健常者サンプルでの検出能は55%のみであり、患者サンプルを検討したときも、Brand 2の全体のサンプル検出能は58%でした(データ非表示)。
いくつかの例で、MILLIPLEX®ヒトパネルBのサンプル濃度は、過去のキットと一致しないものもありますが、これまでのところ、文献範囲とより高い一致性を示しています。このような例には、BAFF11、HMGB112、SCF13、IL-28A14、およびIL-2315があります。
図4.MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルBと他のLuminex® Brandのマルチプレックスキットのサンプル濃度の比較。(A) グランザイムB、(B) TRAIL、(C) MIP-3β、および(D) CXCL6/GCP-2の代表的なデータを示す。テストサンプルは健常者(n=20)および患者(敗血症およびRA、n=16)の血清・血漿サンプルを含む。
詳細は、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルBに関するアプリケーションノートをご覧ください。
研究目的での使用に限定されます。診断目的には使用できません。
MILLIPLEX®ヒトサイトカインパネルを使用した最近の文献
- Cytokines and Immune Cell Phenotype in Acute Kidney Injury Associated With Immune Checkpoint Inhibitors.Farooqui N, Zaidi M, Vaughan L, McKee TD, Ahsam E, Pavelko KD, Villasboas JC, Markovic S, Taner T, Leung N, et al. 2022.8(3):628–641. doi:https://doi.org/10.1016/j.ekir.2022.11.020.
- Clinical and biochemical short-term effects of hyperbaric oxygen therapy on SARS-Cov-2+ hospitalized patients with hypoxemic respiratory failure.Keller GA, Colaianni I, Coria J, Di Girolamo G, Miranda S. 2023.Respiratory Medicine.209:107155.Doi:https://doi.org/10.1016/j.rmed.2023.107155.
- Plasma Cytokines/Chemokines as Predictive Biomarkers for Lymphedema in Breast Cancer Patients.Vang AR, Shaitelman SF, Rasmussen JC, Chan W, Sevick-Muraca EM, Aldrich MB.2023.Cancers.15(3):676. doi:https://doi.org/10.3390/cancers15030676.
- Serum proteomic networks associate with pre-clinical rheumatoid arthritis autoantibodies and longitudinal outcomes.O’Neil LJ, Meng X, Mcfadyen C, Fritzler MJ, El-Gabalawy HS.2022.Frontiers in Immunology.13:958145. doi:https://doi.org/10.3389/fimmu.2022.958145.
- The effect of serum IL-2 levels on the prognosis of primary biliary cholangitis-related liver failure and the preliminary exploration of its mechanism.Wang Q, Wang Y, Qiao W, Xu B, Liu Y, Zhang X, Li W, Zhao J, Liu M, Zhang Y, et al. 2022.Frontiers in Immunology.13:995223. doi:https://doi.org/10.3389/fimmu.2022.995223.
- Transcriptomic Profiling Reveals a Role for TREM-1 Activation in Enterovirus D68 Infection-Induced Proinflammatory Responses.Li J, Yang S, Liu S, Chen Y, Liu H, Su Y, Liu R, Cui Y, Song Y, Teng Y, et al. 2021.Frontiers in Immunology.12. doi:https://doi.org/10.3389/fimmu.2021.749618.
- Integrative immune transcriptomic classification improves patient selection for precision immunotherapy in advanced gastro-oesophageal adenocarcinoma.Cabeza-Segura M, Gambardella V, Gimeno-Valiente F, Carbonell-Asins JA, Alarcón-Molero L, González-Vilanova A, Zuñiga-Trejos S, Rentero-Garrido P, Villagrasa R, Gil M, et al. 2022.British Journal of Cancer.127(12):2198–2206. doi:https://doi.org/10.1038/s41416-022-02005-z.
- Epigenetic state determines inflammatory sensing in neuroblastoma.
Wolpaw AJ, Grossmann LD, Dessau JL, Dong MM, Aaron BJ, Brafford PA, Volgina D, Pascual-Pasto G, Rodriguez-Garcia A, Uzun Y, et al. 2022.Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A..119(6): https://doi.org/10.1073/pnas.2102358119. - Regulatory T Cells Control Effector T Cell Inflammation in Human Prediabetes.Liu R, Pugh GH, Tevonian E, Thompson K, Lauffenburger DA, Kern PA, Nikolajczyk BS.2022.71(2):264-274. https://doi.org/10.2337/db21-0659.
- Inhibition of tumor necrosis factor improves conventional steroid therapy for Stevens-Johnson syndrome/toxic epidermal necrolysis in a cohort of patients.Ao S, Gao X, Zhan J, Ai L, Li M, Su H, Tang X, Chu C, Han J, Wang F. 2022.Journal of the American Academy of Dermatology. https://doi.org/10.1016/j.jaad.2022.01.039.
参考文献
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