PEDOT/PSSおよび有機溶媒分散PEDOT
PEDOT/PSS
PEDOTは、導電性が良好なこと、ドーピングされた(導体)状態での環境安定性が優れていること、および薄膜として使用した場合の光透過性が妥当であることから、最も一般的に使用されているICP(Intrinsically Conducting Polymer)のひとつです1,2。PEDOTコーティングの一般的な方法は、PEDOTとポリアニオンポリ(スチレンスルホン酸塩)すなわちPEDOT-PSSの混合物からなる水分散液を使用します。弊社では、分散液をはじめとするいくつかの種類のPEDOT/PSS製品を販売しております(表1)。低導電性グレードは有機ELおよび有機太陽電池の正孔注入層としての使用に適しており、また高導電性グレードは仕事関数が約5.1eVの透明導体として評価されています3,4。
有機溶媒分散PEDOT
PEDOT/PSSは商用ベースで成功していますが、溶媒が水であること、ドーパントであるPSSが吸湿性で強酸性であるために、デバイスの寿命と性能を損う可能性があることが問題となっています5-7,17。近年のフレキシブルな印刷電子デバイスの進歩に伴い、非吸湿性溶媒から処理でき、疎水性プラスチック基板を湿潤させる光透過性導電性ポリマー材料に対する関心が高まっています。
TDA Research社は、有機溶媒分散型PEDOT「Aedotron™ポリマー」を販売しています。ドープされたPEDOTとポリ(エチレングリコール)などのフレキシブルな可溶性ポリマーとのブロック共重合体であり8、複数のタイプのブロック共重合体と、有機溶媒中で安定なコロイド分散体を形成するための精製・プロセス法を開発しました。
表2に、2種類の代表的なAedotron™材料の特性をまとめました。ブロックの組成、分子量、ブロック比、およびドーパントの種類を注意深く制御して、共重合体のバルク導電性を10-4 S/cmから60 S/cmまで変化させることができます。Aedotron™材料は酸性でも腐食性でもないため、さまざまな無機および有機基板上にこの共重合体の非吸湿性薄膜をスピンキャスト法またはその他の方法で塗布することが可能です。これらのコロイド分散は、PEDOTブロックの凝集を分子中の原子の立体配列によって制限する、高度に溶媒和されたPEG鎖によって安定化されています。この共重合体は、極性非プロトン溶媒中で容易に分散します。そして、高沸点溶媒を必要とする用途には炭酸プロピレンを、揮発性溶媒を必要とする用途にはニトロメタンを用いています。
この新規PEDOTのコロイド安定化メカニズムはポリマーのドーピングに依存しないため、ドーパントを制御しながら共重合体のバルク導電性と仕事関数を調整することが可能です。一般に、p-トルエンスルホン酸(PTS)をドープした共重合体は導電性が低いため、帯電防止/電荷散逸用途やOLEDの電極界面層として使用できます。
また、過塩素酸塩をドープした共重合体(Aedotron™ C 649805)は、透明度が高く、薄膜での導電性が向上します。トリブロック共重合体(Aedotron™ C3-NM 687316)を使用すると、透過率が80%(400~800 nmでの平均値)でシート抵抗が1000Ω/□の、ポリカーボネートやその他のプラスチックフィルム上で良好なぬれ性を持つ薄膜をスピンキャストできます。図1に、ガラス上に1000 RPMでスピンコートした1層、2層、および3層膜の紫外・可視透過率スペクトルを示します。
図1Aedotron™ C3-NM薄膜の紫外・可視スペクトル。
(上から順に1層、2層、および3層の膜のスペクトル。それぞれの抵抗値も併記しています。)
このスペクトル特性から、タッチセンサー式ディスプレイやELランプおよびELディスプレイに使用できる透明導電体の要件を満たしていることがわかります。トリブロック共重合体は、マルチブロック共重合体より懸濁液中での粒径が小さいため(290 nm)、接触モード原子間力顕微鏡で測定した表面粗さが少ない(<10 nm)薄膜を作成することができます。
多層デバイスの設計では、さまざまな層の中での材料の相対的なエネルギーバンド構造を考慮することが重要です。XPS(X線光電子分光法)を用いて測定したマルチブロック共重合体の仕事関数は、PEDOT-PSS混合物の仕事関数よりも低いことが明らかになっています(Aedotron™ Cポリマーでは4.3 eV)9。薄膜電子デバイスを作製する際に、エネルギーバンドの位置合わせや重なりが非常に重要な場合、この低い仕事関数を考慮する必要があります。
製品リスト
PEDOT/PSS
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有機溶媒分散PEDOT
その他関連製品10-16
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