メソポーラス分子ふるいとしても知られるメソポーラス材料は、メソスケール(直径2~50 nm)の細孔を持つ3次元ナノ構造体の一種であり、1000 m2/gを超える表面積を示す多孔質材料です1。特徴的な(場合によっては)秩序性を有する構造という点では、結晶性ゼオライトと、他のタイプの3次元構造体材料(例えば100 nmを超える構造を持つ3DOM(3D ordered mesoporous)や直接描画法による材料など)との間のユニークな位置を占めています。メソポーラス材料は、自己組織化プロセスによって、ゾル-ゲル前駆体(金属アルコキシドなど)と構造規定性両親媒性物質(通常はブロックコポリマーや界面活性剤)の混合液から形成されます(図1)2,3。自己組織化鋳型法による「ワンポット合成」は柔軟性が高いため細孔のサイズと3次元形状(中間相)を同時に制御することができます。さらに、有機シロキサン(RSi(OR’)3)やビス(有機シロキサン)((R’O)3Si-R-Si(OR’)3)など、有機官能基で修飾された前駆体を最初の反応混合物に加えることで、細孔表面の官能性を変更することもできます4。他方、自己組織化構造の規則性や配向性を広い範囲で制御することは比較的難しいため、この種の材料は通常、3DOM材料や直接描画材料と比較すると、欠陥が多く、構造正確性が劣ります。
このように、3次元構造の作製方法によって得られる材料の利点が異なるため、最適な用途がそれぞれ決まってきます。「柔らかい」両親媒性物質の鋳型で作られた秩序的なメソポーラス材料は、ゼオライトのもつ細孔サイズの制約を克服し、かさ高い分子を拡散しやすくします。この材料は、広い範囲における材料の秩序性がそれほど重視されない触媒技術や吸着技術に向いています。例えば、酸性アルミノケイ酸塩は、流動接触分解(FCC:Fluid Catalytic Craking)や凝縮媒体中での化学変換プロセスへの利用について研究が進められています5。表面に官能基を導入したメソポーラス分子ふるいはセンサーの活性素子として用いられます6。色素などの大型の光学活性分子(例:ローダミン6G)7や共役ポリマー(例:MEH-PPV)8をメソ細孔に組み込んで、独特の光電子特性を有する複合材料を作ることもできます。
アルカリ水熱条件下におけるメソポーラスケイ酸塩の作製には、カチオン性四級アンモニウム系界面活性剤がしばしば用いられます。一方、メソポーラスアルミナの水系合成や、正電荷の対イオンまたは構造規定性の補助剤を追加したアルカリ性条件下での合成には、アニオン性界面活性剤が用いられます9,10。また、秩序性のないワームホール型(虫食い)シリカ(HMS、MSU)の調製や、酸性条件下での規則性構造をもつシリカの合成には、非イオン性界面活性剤を用いることもできます3。細孔径が5 nm以上で均一な秩序性の高いメソポーラス材料は、酸性の水性媒体中で、PEG-PPG-PEG(プルロニック)トリブロックコポリマーを鋳型として用いて作製できます11。
References
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