樹枝状ポリマーについて
デンドリマー(図1)およびデンドロンは、高度に分岐した構造が中心部から放射状に広がった高分子であり、分岐点の数はコアから表面に向かって増加していきます。分岐したトポロジーにより、ユニークな材料特性が付与されます。
- ナノスケール構造により、高い溶解性と低い溶液粘度を備えています1。
- 表面には複数の末端基が密集して存在しており、Generation(世代)とともに表面基の数が増加していきます。この多価性を利用することで、表面に薬剤やイメージング用標識を結合するが可能です2。
- 内部と表面が化学的に異なるコアシェル型の分子構造のため、触媒、薬剤、発色剤などをカプセル化して放出することができます3。
各種末端表面基を持つ異なる化学構造の単分散デンドリマーを幅広く提供しています。さらに、bis-MPAをベースとしたポリエステルデンドロンや超分岐ポリマー、および多官能性PEGポリマーも取り揃えています。
図24 bis-MPA デンドロン(generation 4)の構造
デンドロン
デンドロン(図2)はくさび形をした単分散デンドリマーのセグメントであり、複数の末端基と、中心部分(focal point)に反応性の高い官能基を1つ持ちます。デンドリマー特有の性質に加えて、性質の異なる中心の官能基と表面基を利用したオルトゴナル(orthogonal)反応を行うこともできます。例えば、デンドロンをある表面や他のデンドロン4、または他の高分子5にグラフトすることが可能です。シグマ アルドリッチの2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(bis-MPA)デンドロン製品は、アルキンまたはカルボン酸の中心官能基を持つ様々なgenerationでご提供しています。アルキン官能基は、アジド化合物との触媒的な付加環化反応「クリックケミストリー」(Scheme 1)に適しています。カルボン酸は、EDCを媒介としたカップリングなどでアミンと選択的に反応します。表面にある多数の水酸基は、無水物やハロゲン化アシルとの反応によってさらに誘導体化することが可能です(Scheme 2 )。
超分岐ポリマー
超分岐ポリマー(図3)は、デンドリマーに似た性質を持つ多分散の樹枝状高分子ですが、1段階の重合反応で合成されます。これはデンドリマーに比べると分岐が不完全で、末端官能基の数は平均的(正確ではなく)ですが、完全なデンドリマー製品に比べてコスト効率に優れています。
図3Generation 3の超分岐 bis-MPA polyester(製品番号:<b>686581</b>)
完全な構造が必要ない場合に超分岐ポリマーを用いることで、はるかに低コストで利用することができます。シグマアルドリッチのbis-超分岐ポリマー製品は、純度が高く(97%以上)、溶解しやすい凍結乾燥粉末の状態でお届けします。
超分岐ポリマーの特徴と利点
超分岐ポリマーの主な利点を下記に挙げます。
- 多数の末端水酸基(-OH)を持つため、無水物やハロゲン化アシルとの反応などによって、さらに化学的機能化を進めることができます。
- 樹枝状/直線状のハイブリッド材料の汎用的な前駆体として応用できます6。
- 高度に枝分かれしているので、高溶解性かつ低粘性です(溶液および溶融状態において)。
- 開環重合と熱硬化において、多官能性開始剤および架橋剤として有用です。
- 紫外-可視光領域の波長に対して透明性を持ちます。
いずれのポリエステルデンドロンと超分岐ポリマーも、水と極性有機溶媒(メタノール、THF、DMF、DMSO)に可溶です。bis-MPA樹枝状高分子は生体適合性と生分解性を持ち、有害な分解生成物を出さないことが確認されています。そのため、薬物輸送やその他の生体材料への応用に特に適しています7。
参考文献
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