コンテンツへスキップ
Merck
ホーム食品・飲料に含まれる脂肪類の分析

食品・飲料に含まれる脂肪類(脂肪酸、FAMEおよびグリセリド)の分析

脂肪類は、食品栄養および食品化学の研究分野において重要な役目を果たしています。対象化合物の種類、試料のタイプおよび関連する分析技術としては以下のようなものがあります。

  • 短鎖の揮発性脂肪酸は、通常、遊離酸の形でGCを用いて分析します。
  • より大きい(C8~C24+)脂肪酸(オメガ脂肪酸、トランス脂肪酸など)は、通常、脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換した後GCで分析します。
  • GCによる食用油の特性評価
  • GCによるステロール分析

メルクの脂質類の標準物質はこちら

遊離脂肪酸

通常、短鎖の揮発性脂肪酸は遊離脂肪酸の形で専用のカラムを用いて分析します。このグループの化合物は、遊離脂肪酸(FFA)、揮発性脂肪酸(VFA)あるいはカルボン酸と呼ばれることもあります。脂肪酸メチルエステルとしてではなく、遊離脂肪酸の形で脂肪酸を分析すれば、試料調製を容易かつ短時間で行うことができます。さらに、誘導体化を行えば本来存在しない物質が生じる可能性がありますが、その心配はありません。

遊離脂肪酸のGC分析では、活性なカルボキシル基の吸着を起こさない専用カラムが必要になります。Nukol™は酸としての特性を備えているため、この用途に最適であり、優れたピーク形状の分析が可能です。

FAMEへの脂肪酸の誘導体化

通常、オメガ脂肪酸、トランス脂肪酸などの、より大きい(C8~C24+)脂肪酸は脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換されます。

メルクのクロマトグラフィー・分光分析用試薬に含まれる誘導体化試薬をご覧ください

GCによる不飽和FAMEの分析

飽和、単価不飽和、多価不飽和およびシス/トランス立体配置のような接頭語はすべて脂肪酸部の構造を示します。これらの各脂肪酸は人間の健康に以下のような作用を及ぼすと考えられています。

  • 飽和脂肪酸(二重結合がない)はLDLコレステロールを上昇させます(心血管系疾患のリスクが上昇します)。
  • 単価不飽和および多価不飽和シス脂肪酸(≧1シス二重結合)はLDLコレステロールを減少させます(心血管系疾患のリスクが減少します)。
  • 単価不飽和および多価不飽和トランス脂肪酸(1トランス二重結合以上)は、LDLコレステロールを上昇させる(心血管系疾患のリスクが上昇する)とともに、HDLを減少させます(タイプII糖尿病のリスクが上昇します)。

このため、食品製造業者がこれらのレベルを測定して明示し、消費者が健康な食生活の方針を確立する機会を得られるようにすることが重要です。栄養面では飽和脂肪が特に懸念されます。食品で摂りすぎると心血管系に蓄積され、さまざまな健康上の問題につながるからです。そのため、食品製造業者は通常、飽和脂肪と不飽和脂肪の量を栄養明示し、より健康的な食生活を望む消費者が飽和脂肪の少ない食品を選ぶことができるようにします。

製品中の脂肪酸の不飽和度を測ることは容易でありません。食品には、さまざまな炭素鎖長を持つ飽和、単価不飽和および多価不飽和脂肪酸が複雑に混合して含まれていることがあるからです。

  • ミルクとバターには、C4からC20までの飽和脂肪酸、C16とC18の単価不飽和脂肪酸、C18の多価不飽和脂肪酸が含まれています。
  • 植物油には、C6からC24までの飽和脂肪酸、C16の単価不飽和脂肪酸、C18、C20、C22のシス単価不飽和脂肪酸が含まれています。
  • マーガリンには、植物油と同じ脂肪酸が含まれるとともに、C18、C20、C22のトランス単価不飽和脂肪酸ならびにC18の多価不飽和脂肪酸が含まれています。
  • 通常、魚および肉にはC12からC24+までの飽和および単価不飽和脂肪酸、多価不飽和のオメガ3 C18、C20、およびC22脂肪酸、ならびに多価不飽和のオメガ6 C18およびC20脂肪酸が含まれています。
  • 魚には多価不飽和のオメガ3脂肪酸が豊富に含まれる傾向があり、肉には多価不飽和のオメガ6脂肪酸が豊富に含まれます。

同定するには、多数のピークを分離できる高性能のキャピラリーGCカラムが必要になります。SPB™-PUFAカラムは、FAMEとしての多価不飽和脂肪酸(PUFA)の分析用に特別に開発した液相を使用しています。このカラムは広く用いられている「ワックス」カラムより液相の極性が低いため、選択性がわずかに異なるカラムになります。もう一つの選択肢はOmegawaxです。これは、FAME相当鎖長(ECL)値の再現性および重要な成分同士の分離に向けて特別にテストしたものであり、再現性の高い分析が可能です。

シス/トランスFAME異性体

自然界ではシス立体配置の脂肪酸が大部分を占めます。それに対応して、酵素は高度な特異性でこれらを効率的に消化および代謝するように進化しました。一方、トランス立体配置の脂肪酸は自然界では相対的に少ないですしかし、これを添加すると食品の貯蔵期限を伸ばして風味の安定性を増すことができるので、加工食品、特に揚げ物と焼き物に添加する合成添加物として非常に多く使われています。

残念なことに、植物油の部分的水素化によって生じるトランス脂肪酸は、自然な代謝過程の障害となり、LDL:HDL比のバランスを壊し、リポタンパク(a)レベルを上げます。これまでの研究では、その栄養上の作用が飽和脂肪酸のそれと同様であると関連付けられ、おそらく冠状動脈疾患のリスクを高める役割を果たす可能性があります。

トランス脂肪酸は健康に悪影響がある上、他の脂肪を上回る栄養上の利点が知られていないことから、消費者団体は製造業者やレストランにそれを使用しないよう喚起しています。現在では世界の多くの規制当局によって、食品や一部の栄養補助食品の「トランス脂肪」レベルを購入者に知らせる成分表示ラベルを付けることが要求されています。

同一の炭素長と不飽和度を持つシス異性体FAMEとトランス異性体FAMEの違いは非常に小さいので、高極性液相を持つ非常に高性能なキャピラリーGCカラムが必要です。

  • 高極性SP™-2560カラムは、FAMEの幾何学的位置(シス/トランス)異性体の分離専用に設計されたカラムであり、水素化植物油試料中のFAMEの分離など、特別なFAME用途に対して極めて有用です。定評があるこのカラムは多くの方法で指定されています。
  • 著しく極性の高いSLB™-IL111カラムは、あらゆるGC液相の中で最高の極性を示し、FAME用途に一般に用いられるSP™-2560およびSP™-2380カラムとは別の選択性を示します。SP™-2560またはSP™-2380カラムでは分解できないいくつかの主要な異性体の分解が可能です。
  • 高極性SP™-2380カラムでは、幾何的(シス/トランス)異性体をグループとして分離することができます。この液相は安定なので、一般的なSP™-2560カラムより許容最高温度がわずかに高くなっています。SP™-2560よりカラム長が短いので、詳細な分解能が不要な短い分析に役立ちます。

FAME分析の技術資料やプロトコルをご覧ください

モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド

トリグリセリド(トリアシルグリセロール、トリアシルグリセリド、TAGとも呼ばれます)は、植物油および動物脂肪の主成分であり、人間が消化する脂肪の大半を構成しています。トリグリセリドは、脂溶性ビタミンの摂取および輸送を可能にする点で重要な成分です。また、代謝においても役目を果たしています(使用されない飽和または単価不飽和脂肪酸は、トリグリセリドとして身体によって蓄えられます)。しかし、トリグリセリドの摂取量をモニターする必要があります。高レベルのトリグリセリドは、心臓病および脳卒中のリスク増加と関連付けられているからです。モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドは以下のように脂肪酸と関係しています。

  • モノグリセリドは1つの脂肪酸とグリセロールとの縮合体です。
  • ジグリセリドは2つの脂肪酸とグリセロールとの縮合体です。
  • トリグリセリドは3つの脂肪酸とグリセロールとの縮合体です。

適切に同定するには十分な分解能のある効率的なキャピラリーGCカラムが必要です。トリグリセリドは大きな化合物であり、妥当な時間内に溶出させるには、最終オーブン温度をある程度高い温度にする必要があります。Cool-on-column(COC)注入を用いる必要があります。加熱注入ポートは、使用すると試料の分別が起きる可能性があるので推奨されません。使用するシリンジ針の直径は、内径0.53 mmのガードカラムの内部に入るように小さくなければなりません。一貫性を確保するために、自動注入を用いることが強く推奨されます。

グリセリドの分析に向いたもう一つの技法は、C18液相を用いたHPLCです。

  • HPLCシステムでの分析を高速化するには、AscentisExpress C18標準カラムをご使用ください。Fused-Core技術に基づくこのカラムは、2 μm未満の粒子の性能を示しますが、3 μm粒子の背圧を示します。
  • AscentisExpress C18は従来の5 μm粒子でも提供しています。Fused-Core技術により性能が上がっていますが、5 μm粒子によって背圧が抑えられているので、標準の2.7 μm Ascentis™ Express粒子で使用できる長さより長いカラムを使用できます。
  • Ascentis Express C30 では、TAG分離で卓越した効率と分解能を達成できます。

メルクのすべてのHPLCカラムはこちら

ステロールと食用油

食用油業界は百億ドル単位で表される収益を誇っています。したがって、利益を増やすことを目的にした犯罪的な詐欺行為の対象となる可能性があります(高価な高級油の量を増やそうとして安価な低品質の油を加えます)。GCフィンガープリンティング技術は、製品への不純物添加をモニターしたり、未知の試料に含まれる油の起源を同定したりするのにも利用できます。脂肪酸をFAMEに変換するために誘導体化してからGC分析を行います。この素早いフィンガープリンティング技術を用いれば、試料油のFAME比を参照標準油のFAMEと比較することで、油の種類と純度を特定できます。

オリーブオイル、卵、マーガリン、大豆油およびチョコレートはステロールを含む食品の数例に過ぎません。ステロールは動植物中に自然に発生し、食品の一部として摂取されます。この化合物は、さまざまな細胞機能や、いくつかのホルモン、ビタミンの前駆体として人体で多くの役割を果たします。興味深いステロールとしては、ブラシカステロール、カンプエステロール、コレスタノール、コレステロール、コプロスタノール、デスモステロール、エルゴステロール、ラノステロール、b-シトステロールおよびスチグマステロールが挙げられます。

通常、ステロールを分離するには、試料中の脂肪を抽出してけん化する必要があります。ステロールは、けん化できない留分中にその他の高分子量アルコール、脂溶性ビタミンおよび炭水化物とともに入っています。植物油はほぼ純粋な脂肪なので、けん化前に抽出を必要としません。AOAC Method 970.51で概説されている一般的なけん化手順は、ほとんどの試料調製に役立ちます。通常、GCによる分析は誘導体化せずに実行できます。

メルクのSAC™-5キャピラリーGCカラムはこちら

ログインして続行

続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。

アカウントをお持ちではありませんか?