コンテンツへスキップ
Merck
ホームC–H 官能基化MCAT-53:水中で反応可能なルテニウム触媒

MCAT-53:水中で反応可能なルテニウム触媒

C-Cカップリングにおける余分なステップを省き、NMPなどの有機溶媒の使用を避けることができる、水中でのC-H活性化によるC-Cカップリング反応に有効な新しいルテニウム触媒MCAT-53™

近年の触媒による官能基化反応の目覚ましい発展により、有用な複素環化合物の合成がますます容易になっています。一方で、これらの反応には環境負荷の少ない反応条件が求められています。最近、Chicago Discovery Solutions社が、水の存在下でもC-H活性化反応とそれに伴うC-C結合形成を行う、リサイクル可能でリガンドフリーなルテニウム触媒としてMCAT-53™を開発しました。

MCAT-53™ structure

新しいルテニウム触媒MCAT-53™は、水中でのC-H活性化C-Cカップリング反応のためにChicago Discovery Solutions社により開発された触媒です。酸、共溶媒、界面活性剤、酸化剤、リガンドなどの添加や、触媒を活性化するための追加ステップも必要ありません。MCAT-53™を用いた反応によって、好ましくない毒性や廃棄コストの問題が改善されます2。反応終了後の後処理に使用した水性溶媒は別の触媒反応に再利用(リサイクル)することができます。

MCAT-53™を使った反応によって、好ましくない毒性や廃棄コストの問題が改善されます2。反応終了後の後処理に使用した水性溶媒は別の触媒反応に再利用(リサイクル)することができます。

代表的な応用例:水中でのヘテロビアリール化合物の合成

一般に、ビアリール化合物はよく知られたアリール-アリールカップリング反応により得られます。従来のアリールカップリングやC-H結合活性化法(鈴木-宮浦クロスカップリング反応、Stilleカップリング反応など)を行うには、不安定で毒性のある有機金属試薬の面倒な調製が必要であり、反応は環境負荷の大きい有機溶媒(DMF、NMP、DMSO、トルエンなど)中で行うのが一般的です1。現代の触媒的クロスカップリング分野では、多くの場合ホスフィンリガンドを利用する必要があるパラジウムベースの触媒が最もよく利用されています。

directing leaving subst

MCAT-53™は、基質の脱離基(ハロゲン化物など)を置換誘導体(ボロン酸やエステルなど)に変換する必要がなく、余分な合成ステップの省略が可能です。

MCAT-53™は普通の水中で作用するように作られた専用触媒であり、酸、共溶媒、界面活性剤の添加や、触媒を活性化するための追加ステップを行う必要はありません。MCAT-53™と塩基(K2CO33など)の存在下でハロゲン化アリールとカップリング対象の芳香族化合物を組み合わせるだけで、非常に高価なPd触媒や触媒前駆体3に代わる、安全でコスト効率の良い方法が利用できるようになりました。生成物が固体であれば沈殿してろ過するだけでよく、水中で反応を起こさせた後で生成物を抽出するための溶媒を利用する必要がないため、後処理工程も簡単です。

Organic Research and Development, 20185に掲載された最近の論文では、MCAT-53™が以下に挙げる臭化物、塩化物、重(多)置換ハロゲン化物に作用することが示されました。

Bromides chlorides structures

Bromides chlorides structures

さまざまなピリジン誘導体が優れた配向基として機能し、生成物としてオルト置換体が得られます。その他、イミン、オキシムエーテル、アゾベンゼン誘導体、含窒素複素環(例:ピラゾール、イソキサゾリン)などの窒素をベースとした配向基も利用できます5。比較的塩基性の酸素原子を有するアミドがこれらの反応の配向基として利用可能と考えられます。

Phenylpyrazol

Phenylpyrazol

論文報告されている結果:

  • C-H活性化によるC-Cカップリング反応のスケールアップは、12 mmolのMCAT-53™を使用するスケールまで成功しています。
  • C-H活性化によるC-Cカップリング反応を進行させるために使うMCAT-53™触媒の量はわずか1 mol%まで低減できます。
  • デカンテーションするだけで生成物を分離できる(生成物が水層から分離される)ため、C-H活性化によるC-Cカップリング反応(低触媒量)のスケールアップは極めて良好でした。
  • 生成物が固体であれば沈殿をろ過するだけでよく、水中で反応を起こさせた後で生成物を抽出するための溶媒を利用する必要がありません。
  • モノ体とジ体の比率を巧みにコントロール可能です。
  • MCAT-53™は他のRuベースの触媒と比較して単離収率の向上という点で、はるかに優れています。
  • 反応終了後、使用済み水層の利用(リサイクルおよび再利用)が可能です。
  • MCAT-53™が生成物の構造を主に決定します。
  • 2-フェニルピリジン、2-フェニルピラゾール、ベンゾ(h)キノリンといった多様な基質での反応例があります。

MCAT-53™触媒を使ってCETP阻害剤であるAnacetrapibの高度な中間体を水中で合成すると、単一の位置異性体が得られます5

MCAT53™ catalyst

MCAT53™ catalyst

最高水準の品質を備え、ベンチスケールで使えて空気中でも安定なMCAT-53™は、医薬品やその他の化学物質の製造プロセスにおいてコスト効率が良く環境に優しい代替品になります。

この新しい触媒MCAT-53™はSigma-Aldrichより販売されており、容易な輸送と使用を可能にする空気中での高い安定性により、他にもさまざまなタイプの合成に応用できるでしょう。

関連製品
Loading

参考文献

1.
Lyons TW, Sanford MS. 2010. Palladium-Catalyzed Ligand-Directed C?H Functionalization Reactions. Chem. Rev.. 110(2):1147-1169. https://doi.org/10.1021/cr900184e
2.
Arockiam PB, Bruneau C, Dixneuf PH. 2012. Ruthenium(II)-Catalyzed C?H Bond Activation and Functionalization. Chem. Rev.. 112(11):5879-5918. https://doi.org/10.1021/cr300153j
3.
Davies HML, Morton D. 2016. Recent Advances in C?H Functionalization. J. Org.Chem.. 81(2):343-350. https://doi.org/10.1021/acs.joc.5b02818
4.
2016. Ali Aiden KOOHANGAnita Mehta. Ruthenium-catalyzed synthesis of biaryl compounds in water. US20160263565A1
5.
Mehta A, Saha B, Koohang AA, Chorghade MS. 2018. Arene Ruthenium Catalyst MCAT-53 for the Synthesis of Heterobiaryl Compounds in Water through Aromatic C?H Bond Activation. Org.Process Res. Dev.. 22(9):1119-1130. https://doi.org/10.1021/acs.oprd.8b00141
ログインして続行

続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。

アカウントをお持ちではありませんか?