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SuFEx:次世代クリック反応として期待のスルホニルフルオリド

SO2F基の簡易導入法としてのESF試薬

はじめに

硫酸(VI)フルオリド(SuFEx)は、HとS(VI)に対するフルオリド結合が非常にバランスの良い特性を持つことから、次世代クリック反応を担う試薬と目されています。私たちはK. Barry Sharplessらと共同で各種スルホニルフルオリド試薬を提供しています。これらの試薬を使用して新たに定義されたクリックケミストリーを実践することができます1。SuFExビルディングブロックが提供する「コネクティブ」化学は化学合成、材料科学、化学生物学、医薬品開発を含む各種の応用分野で幅広い有用性を発揮すると考えられています1-4

図1 メカニズム
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利点

これまでのクリックケミストリーと同様に、SuFExはシンプルで、水と酸素との親和性の高い反応を提供し、収率が高く、しかもほとんど精製を必要としません。このような利点に加えて、スルホニルフルオリドは安定性と反応性との間に明確な関連性を持つことが特徴です。以下の特性がこの関連性をもたらします1

耐還元性:他のハロゲン化物とは対照的に、スルホニルフルオリドの開裂はヘテロ環開裂のため還元耐性を示す。<sup>1</sup>

1.耐還元性:他のハロゲン化物とは対照的に、スルホニルフルオリドの開裂はヘテロ環開裂のため還元耐性を示します1

熱力学的安定性:スルホニルフルオリドは加熱分解や求核置換に対して安定であり<sup>1</sup>、アニリン中での還流に対しても不活性である<sup>2</sup>。

2.熱力学的安定性:スルホニルフルオリドは加熱分解や求核置換に対して安定であり1、アニリン中での還流に対しても不活性である2

硫黄選択的な反応:スルホニルフルオリドは反応が迅速であることに加え、高い化学選択性(スルホニルクロリドと比較して)を持ちスルホニル化化合物のみを生成する<sup>1</sup>。

3.硫黄選択的な反応:スルホニルフルオリドは反応が迅速であることに加え、高い化学選択性(スルホニルクロリドと比較して)を持ちスルホニル化化合物のみを生成する1

特異な性質を示すフルオリド-プロトン相互作用:フルオリドイオンは水中で安定であるため、水系環境での反応に適用できる<sup>1</sup>。

4.特異な性質を示すフルオリド-プロトン相互作用:フルオリドイオンは水中で安定であるため、水系環境での反応に適用できる1

注目のSuFEx試薬:エテンスルホニルフルオリド(ESF)

エテンスルホニルフルオリドの図

私たちが提供可能なスルホニルフルオリドの中でも、エテンスルホニルフルオリド(ESF)(製品番号746959)はN、O、S、およびC求核剤のMichaelアクセプターであるという点で重要です。したがって、SO2F基を簡単に分子中に取り込めるため、創薬研究やケミカルバイオロジー分野などで特に有用です。生成したスルホニルフルオリドは極めて安定ですが、同時に、適切な環境を整えると求核試薬とすばやく反応するため、合成終盤での官能基化や生物化学的応用に適しています1-2

代表的応用例

合成段階でのSO2F基の導入

ESFを使用すれば求核試薬に簡単かつ高収率でスルホニルフルオリドを組み込むことができます1-2

ESF rxns

その他のSuFExビルディングブロックはケミカルバイオロジー分野におけるSO2F基導入に使用されてきました。 Jonesらによるプローブ上への導入(SF-p1)5、Kellyらによるライブラリ構築(1,3,4-オキサジアゾール)6などがその例です。

other bbs rxn

ケミカルバイオロジーと創薬研究

既知の生理活性物質に組み込まれたスルホニルフルオリドは、その生物適合性と反応性をいかしてケミカルバイオロジー分野の研究者や創薬研究者の強力なツールとなります4。SO2F基はセリン、トレオニン、チロシン、リジン、システイン、ヒスチジンなど多くのタンパク質残基に対して、共有結合によって選択的に結合します。4。この性質をいかし、フッ化スルホニル基を持った化合物は、化学プローブとして、また共有結合を介した不可逆的阻害剤として用いることができます。これらは、医薬のターゲットバリデーション、リード化合物の最適化、合成終盤での官能基化などに適用が可能です。

sf scheme

阻害剤と酵素安定化剤をSO2F基により官能基化することによって標的タンパク質の化学選択的修飾に成功した最近のいくつかの例を挙げます:Tyr上のDcpS5、Lys上のトランスチレチン6、およびSer上のポリイソプレニル化メチル化タンパク質メチルエステラーゼ7。その他のよく知られたスルホニルフルオリド阻害剤としてPMSF (P76267883093482)、AEMSF (7630715633A8456)およびFSBA (F9128)を挙げることができます。

chem bio molecules

SuFExの生物学的応用についてさらに詳しく知りたい場合は、Lyn Jones氏(Pfizer社)のウェビナーをご覧ください:"Sulfonyl Fluorides in Chemical Biology and Drug Development"

また、その他の製品について知りたい場合は、Professor Product Portalのページをご覧ください。


参考文献

1.
Dong J, Krasnova L, Finn MG, Sharpless KB. 2014. Sulfur(VI) Fluoride Exchange (SuFEx): Another Good Reaction for Click Chemistry. Angew. Chem. Int. Ed.. 53(36):9430-9448. https://doi.org/10.1002/anie.201309399
2.
Krutak JJ, Burpitt RD, Moore WH, Hyatt JA. 1979. Chemistry of ethenesulfonyl fluoride. Fluorosulfonylethylation of organic compounds. J. Org. Chem.. 44(22):3847-3858. https://doi.org/10.1021/jo01336a022
3.
Dong J, Sharpless KB, Kwisnek L, Oakdale JS, Fokin VV. 2014. SuFEx-Based Synthesis of Polysulfates. Angew. Chem. Int. Ed.. 53(36):9466-9470. https://doi.org/10.1002/anie.201403758
4.
Narayanan A, Jones LH. Sulfonyl fluorides as privileged warheads in chemical biology. Chem. Sci.. 6(5):2650-2659. https://doi.org/10.1039/c5sc00408j
5.
Hett EC, Xu H, Geoghegan KF, Gopalsamy A, Kyne RE, Menard CA, Narayanan A, Parikh MD, Liu S, Roberts L, et al. 2015. Rational Targeting of Active-Site Tyrosine Residues Using Sulfonyl Fluoride Probes. ACS Chem. Biol.. 10(4):1094-1098. https://doi.org/10.1021/cb5009475
6.
Grimster NP, Connelly S, Baranczak A, Dong J, Krasnova LB, Sharpless KB, Powers ET, Wilson IA, Kelly JW. 2013. Aromatic Sulfonyl Fluorides Covalently Kinetically Stabilize Transthyretin to Prevent Amyloidogenesis while Affording a Fluorescent Conjugate. J. Am. Chem. Soc.. 135(15):5656-5668. https://doi.org/10.1021/ja311729d
7.
Aguilar B, Amissah F, Duverna R, S. Lamango N. 2011. Polyisoprenylation Potentiates the Inhibition of Polyisoprenylated Methylated Protein Methyl Esterase and the Cell Degenerative Effects of Sulfonyl Fluorides. CCDT. 11(6):752-762. https://doi.org/10.2174/156800911796191015
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