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Merck

SPMEによる生体分析

技術的な内容は以下の方々からご投稿いただきました。

H. Lord, E. Cudjoe, D. Vuckovic, P. Togunde, F.M.Musteata, S.N. Zhou, X. Zhang, Md E. Hoque, J. Pawliszyn

University of Waterloo, Waterloo, ON, Canada

Reporter, Volume 29.2

固相マイクロ抽出(SPME)により、ラボ、現場のいずれでも迅速なサンプル前処理を提供します1。この技術の基本コンセプトは、試料(気体、液体、半固体)または液体や固体のヘッドスペースと接触する吸着剤でコーティングしたロッドです。吸着剤は、試料中の対象化合物に対して良好な親和性を有するものを選択します。所定の暴露時間後に、十分な量の対象化合物が試料から吸着剤に移動し、定量分析が可能になります。抽出量は、試料中の分析対象物の元の濃度に比例するため、試料濃度を簡単に測定できます。

1993年にSupelcoが発売し、様々な分野で広く利用されている市販のSPMEデバイス1の基本コンセプトを図1に図示します。

市販のSPMEデバイス

図1.Supelcoが製品化し、初めて市販されたSPMEデバイスの設計と拡大図

最近、生体試料の適用を改善したSPMEデバイスの新しい製品ラインが発売されました
図2)。これらのデバイスは、HPLCカラムやSPE吸着剤として一般に使用される粒子に類似したC18結合多孔質シリカ吸着剤粒子を、独自の生体分析が可能なバインダー中に採用しています。使用したバインダーは、生体試料のマトリックス成分によるファウリング(汚染)に耐える非膨潤性ポリマーです。抽出後、少量(50~100 μL)で溶媒脱着し、脱着溶液を通常はLCまたはLC-MSに直接注入します。プローブに使用する固体の支持体は、堅牢かつ不活性に支持する柔軟な金属合金(直径0.008インチ/203 μm)です。コーティングは、試料が脱離しないように、組み込まれたシールによって22ゲージ皮下注射針の内部に収容されます。C18抽出相により、コーティングは吸着相として機能します。コーティングは使い捨てデバイスとして使用でき、ホールキャップとセプタムで密封した試料バイアル中の全血もしくは血漿から直接、またはin vivo分析用の静脈内カテーテルの注入バルブからin vitroサンプリングするのに理想的です。組織サンプリングや開放したバイアルからのサンプリングなど、密封されていなくても大きな問題にならない場合は、皮下注射針が付いていないデバイスも利用できます。操作原理は従来のSPMEデバイスと類似しています。

生体試料に適用出来るSPMEデバイス

図2.生体試料およびin vivoサンプリング用新規生体試料適用出来るSPMEデバイス(厚さ45 μM、コーティング長さ15 mm、カタログ番号57281-U)。

SPMEの重要な利点、とりわけ現場サンプリングでの利点は、特定の試料サイズをあらかじめ定めていなくても分析できる可能性があることです。少量試料からのSPMEで試料から抽出される対象物質の含量は式1で与えられます1

式

ここで、C0は対象物質の最初の試料濃度、nは抽出された対象物質の量、Vsは試料体積、Vfはファイバーの容量、Kfsはファイバー/試料マトリックス間の対象物質の分配定数です。しかし、試料サイズがファイバーの容量に対して大きい(Vs>>VfKfs)場合、式1は式2になり、SPMEで抽出される対象物質の量は試料体積に依存しなくなります。

式

このシンプルな操作はほとんどの現場分析で有効であり、分析するために研究中の系から代表試料を抜き取る必要がなくなります。そのため、生体試料の観点では、最初に生体液/組織試料を抜き取らずにSPMEを利用して動物の血液や組織をin vivoで直接サンプリングできるようになります。SPMEデバイスに標準物質を事前にロードすることによる内部標準化といった新しいキャリブレーション法により、迅速な平衡前サンプリングと複雑なマトリックス中のばらつき管理が可能になります。

最初にin vivoSPMEを利用し、動物の静脈から直接、様々な薬物の薬物動態(PK)を研究しました。専用インターフェースを開発し、小げっ歯類(マウスおよびラット)のモニタリングを可能にしました。最近、in vivoSPMEを魚類に適用し、筋肉や脂肪組織からの直接サンプリングを使用して医薬品、農薬、およびその他の環境汚染物質の生物蓄積の研究に成功しました。さらに多くの吸着剤を調査して抽出可能な対象物質の極性範囲を高極性化合物(log P~8まで)まで拡大し、in vivoおよびin vitroいずれのSPMEも非標的メタボロミクス分析に利用できるようになりました2

in vivoSPMEを利用すると、試料クリーンアップの単純化、不安定な対象物質の迅速な安定化、抽出後の酵素的分解の排除、質量分析でのイオン抑制の低減といった、従来法に勝る重要な利点がもたらされます。さらに、サンプリングと試料クリーンアップの両方を組み合わせてワンステップにするため、試料調製ステップ数が最小になって対象物質のロスや不慮の汚染のおそれが低減されます。Nature Protocolsに最近掲載された記事では、in vivoSPMEを行って静注薬物と代謝物をモニタリングするときのステップが詳しく述べられています3

関連製品
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1.
Pawliszyn J. 2009. Handbook of SPME. Beijing: Chemical Industry Press.
2.
Vuckovic D, Pawliszyn J. 2011. Systematic Evaluation of Solid-Phase Microextraction Coatings for Untargeted Metabolomic Profiling of Biological Fluids by Liquid Chromatography?Mass Spectrometry. Anal.Chem.. 83(6):1944-1954. https://doi.org/10.1021/ac102614v
3.
Lord HL, Zhang X, Musteata FM, Vuckovic D, Pawliszyn J. 2011. In vivo solid-phase microextraction for monitoring intravenous concentrations of drugs and metabolites. Nat Protoc. 6(6):896-924. https://doi.org/10.1038/nprot.2011.329
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