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pHと有機修飾基よるSPEの選択性

An Trinh, Laura Marlatt, David S. Bell

Reporter EU Volume 21

はじめに

多くの場合、固相抽出(SPE)法は既存のアプリケーションを適用/調整したり、一般的な方法を選択しながら開発します。このような手法は開発時間を短縮できるものの、SPE法に関連する問題が生じたとき、その根本原因の特定と解決が極めて困難なことが多くあります。例えば、回収率が低い原因は、1) 試料ロード時の対象物質の保持が不十分、2) (試料ロードと溶出の間の)洗浄ステップでの対象物質の溶出が早すぎる、または 3) 溶出中の被対象物質の強い保持でしょうか?

SPEはHPLCと同じくクロマトグラフィーの一形態であるため、特定のSPE法の開発、最適化、およびトラブルシューティングに基本的なクロマトグラフィーの考え方が利用できます。本レポートでは、疎水性が減少する3種類の異なる逆相SPEの化学的性質(C18、C8、およびシアノプロピル-CN)において、SPEの洗浄/溶出中にpHと有機修飾基を操作して3種類の異なる化合物(中性、塩基性、および酸性)の保持と溶出を制御する例を説明します。

SPEでのpHと有機修飾基の役割

ほとんどの逆相SPEのプロトコルは、水に混和する溶媒(メタノール、アセトニトリルなど)で相を最初にコンディショニングし、平衡化してから試料をロードする一般的な手順です。逆相保持を高めるには極性の移動相環境が必要なため、試料は水溶性でなければなりません。対象物質を溶出するには、移動相の極性を低下させて逆相相互作用を弱くします一般的な溶出溶媒にはメタノール、アセトニトリルなどがあります。通常、中間強度の溶媒による洗浄ステップを溶出前に設けて、対象物質と共に保持される可能性のあるあらゆる内因性干渉物質を除去します(5~20%メタノールなど)。

大部分の対象物質は、イオン化可能な官能基を含んでおり、化合物のイオン化状態によっては、与えられたSPE吸着剤での保持および溶出特性が大幅に変化することがあります。対象物質が中性型の場合は、逆相条件下で疎水性が高くなり保持力が大きくなります。そのため、共保持された干渉物質をより強い洗浄溶媒で溶出前に除去できる可能性があります。一方、イオン型では化合物の極性が高くなるため、対象物質と逆相官能基の間の相互作用強度が弱まります。その結果、弱い溶媒条件(100%メタノールではなく50%メタノール)でも溶出できる可能性があり、SPEプロトコルに一般的な溶媒留去/再構成ステップが不要になることがあります。図1 にSPEでのpHの役割を示します。

逆相SPEでのpHの役割

図1.逆相SPEでのpHの役割

方法

ウェル当たり1 mLのメタノールと脱イオン水でコンディショニングおよび平衡化した3つの異なる96ウェルSPEプレートに、20 mMリン酸カリウム、pH 7中のイブプロフェン(酸性)、ヒドロコルチゾン(中性)、アルプレノロール(塩基性)の20 μg/mL標準試料1 mLをロードしました。試験したSPE相の化学的性質はDiscovery DSC-18(C18)、DSC-8(C8)、およびDSC-CN(シアノプロピル)、100 mg/ウェルです。

それぞれのウェルを1 mLの試料溶媒(2% NH4OH、pH 11(高pH)、脱イオンH2O(中性pH)、および2% CH3COOH、pH 3(低pH)中の0~100%メタノール)で洗浄/溶出しました。洗浄/溶出による溶出液をウェルごとに回収し、保持されずに通り抜けた化合物をHPLC-UVによって分析しました。

ヒドロコルチゾン(中性)の保持 ― 溶出プロファイル

図2に、抽出条件(pH対%有機修飾基対 相の化学的性質)を変化させて回収率(%)を測定した3種類の試験化合物の保持 ― 溶出プロファイルを示します。ヒドロコルチゾンはイオン化可能な官能基を含まない中性化合物です。図2から、3種類すべてのSPEの化学的性質にわたってpHを変化させても、溶出選択性の操作にはほとんど影響しなかったことがわかります。DSC-18とDSC-8には、可能な洗浄溶媒として最大40%のメタノールを使用できます。DSC-CNは極性がはるかに高い逆相SPEの化学的性質を持つため、被分析物質は20~40%メタノールで保持されずに通り抜けます。この中程度の極性~無極性の化合物を完全に回収するには100%メタノールが必要です。

DSC-18、DSC-8、およびDSC-CNのSPEによるヒドロコルチゾン、アルプレノロール、およびイブプロフェンの保持 ― 溶出プロファイル

図2.DSC-18、DSC-8、およびDSC-CNのSPEによるヒドロコルチゾン、アルプレノロール、およびイブプロフェンの保持 ― 溶出プロファイル

アルプレノロール(塩基性)の保持 ― 溶出プロファイル

アルプレノロールはpKaが9.5程度の塩基性化合物です。高いpHレベルで脱プロトン化されて中性型になります。低いpHレベルではイオン型になっています。pHの変更は、ヒドロコルチゾンとは対照的に選択性制御に大きな影響を与えます。アルプレノロールは、中性および高pH条件下のDSC-18およびDSC-8 SPEで最大60%のメタノールに耐え、それ以上では保持されずに通り抜けます。低pH条件では、メタノールが20%を超えると保持されずに通り抜けます。DSC-CNでは、短いアルキル官能基によって、二次的な弱い陽イオン交換基として作用するシラノール基に化合物が接近しやすくなります。その結果、中性のpH条件では、陽イオン交換と逆相の両方によって化合物が保持され、0~100%メタノールから保持されたままになります。アルプレノロールは高pH条件で中性型になり、二次イオン相互作用が分断されるために40~100%メタノールから溶出できます。アルプレノロールは低pHでイオン化しますが、シラノール基がプロトン化されて中性であるため20~100%メタノールで溶出します。

イブプロフェン(酸性)の保持 ― 溶出プロファイル

イブプロフェンはpKaが4.2程度の酸性化合物です。この化合物は、アルプレノロールとは対照的に低pHで中性化され、高pH環境下ではイオン化します。DSC-18とDSC-8では、2%酢酸中で最大60%、40%のメタノールを可能な洗浄溶媒として使用できます。化合物がイオンであるために極性が上昇する中性と高いpHレベルでは、5~10%のメタノールが保持限界で、それ以上では保持されずに通り抜けます。DSC-CNでは、高pHと中性pHで保持力が極めて弱く、緩衝液だけでも化合物が溶出します。低pHレベルでは、最大20%のメタノールを洗浄溶媒に使用できます。

高い回収率に関する注記

100%を超える回収率が多く観察されたことに注意してください。HPLCの移動相より溶媒強度が強い試料を注入すると、保持時間とピーク形状のばらつきが多くの場合に観察され(データは示しません)、その結果誤った高いシグナルが得られることがあります。本研究の一部でSPE溶出液を直接分析し、SPE溶出に高濃度%のメタノールを使用したため、得られたデータにこの傾向が見られました。回収率データは正確ではありませんでしたが、このデータの目的は、溶出条件を体系的に変化させて観察された回収率の一般的な傾向を説明することでした。

結論

pHと有機修飾基(%)はいずれも、逆相SPEでイオン化可能な化合物の保持と溶出を測定する上で極めて重要な役割を果たします。SPE移動相のpHを制御することによって、イオン化可能な化合物の相対疎水性を制御でき、洗浄溶媒の強度を上げることができる結果、試料のクリーンアップが改善されます。pH操作によってほとんどの逆相手順に共通する溶出液の溶媒留去/再構成ステップが不要になり、処理時間を最小限に抑える可能性がある弱い溶出溶媒も利用できるかもしれません。抽出条件を変更した際に化合物がSPE相と相互作用する方法を理解することにより、条件を操作して最も選択性の高い手順を提供できます。

詳細については資料No.T404049(GUX)をご請求ください。この情報は電子媒体で提供します。お問い合わせフォームにはお客様のメールアドレスを必ずご記入ください。

SPEチューブのサンプルパックについては、テクニカルサービス(jpts@merckgroup.com)または最寄りの販売店にお問い合わせください。

SPE製品一覧は試料調製/精製のチャプターをご覧ください。

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