MILLIPLEX®マルチプレックスイムノアッセイによるヒトサンプルのサイトカイン測定の優れたロット間一貫性
マルチプレックスサイトカインイムノアッセイは、血中サイトカイン、ケモカインおよび成長因子の研究に有用な研究ツールです。ロット間一貫性は、サイトカイン解析を行う際の重要な要件です。免疫学的因子の経時的な研究によって、免疫応答、炎症反応および疾患に関する知見が得られます。イムノアッセイにおけるサイトカイン濃度測定のロット間性能に一貫性がなければ、経時的な研究は不可能です。サンプルドリフトなどのアッセイ性能が変化すると、混乱や誤解を招く結果が生じ、誤った結論をもたらすおそれがあるためです。MILLIPLEX®マルチプレックスサイトカインアッセイと他のアッセイの性能を比較したこの研究では、一貫性に関する2つのイムノアッセイ性能指標、つまり標準曲線の再現性とサンプル測定値に注目しています。
- 各種イムノアッセイブランドによるサイトカインのマルチプレックス解析
- サンプル調製
- イムノアッセイ・データ解析
- 標準曲線の再現性
- 検出限界
- サンプルの検出性
- まとめ
- 関連のサイトカインマルチプレックスアッセイ
- お問い合わせ
各種イムノアッセイブランドによるサイトカインのマルチプレックス解析
MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルA 48プレックスイムノアッセイのロット間性能を、健常者のヒト血清および血漿を用いて、主要な競合他社の類似アッセイ(ここではブランドX、ブランドY、ブランドZと呼びます)と比較評価しました。ブランドXとブランドZは45プレックスのイムノアッセイで、ブランドYは48プレックスのイムノアッセイです。各アッセイは、Luminex®テクノロジーの磁気ビーズを用いて、最大で48のサイトカインを同時測定します。
各キットの異なる2つのロットを同じサンプルコホートで試験し、Belysa® Immunoassay Curve Fitting Software を用いてデータを解析しました。4つのキットはすべて、次に示す27種類の炎症性サイトカインとその他のアナライトを含みます。Eotaxin /CCL11、FGF-2、GM-CSF、GROα、IFNα、IFNγ、IL-1α、IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL-17A/CTLA8、IP-10/CXCL10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、TNFα、およびVEGF-A。
サンプル調製
健常者の7つのヒト血清および血漿サンプルを、ベンダー(BioIVT社、米国ニューヨーク・ウエストバリー)から入手しました。血清サンプルは、血液を30分間凝固させた後、1,000 x gで10分間遠心分離しました。血清を回収し、直ちにアッセイするか、分注して-80℃で保存しました。
血漿サンプルは、EDTA抗凝血剤を使用し、採血後30分以内に1,000 x gで遠心分離しました。血漿を回収し、直ちにアッセイするか、分注して-80℃で保存しました。凍結サンプルは、使用前に完全に融解し、ボルテックスし、遠心分離して微粒子を除去しました。
サンプルは、それぞれのキットのプロトコルに従い、原液または希釈して測定しました。
イムノアッセイ・データ解析
マルチプレックスイムノアッセイは、各製品のマニュアルに従い、96ウェルプレートで行いました。2つの異なるキットロットを各ベンダーから2年間にわたって入手し、メーカーのプロトコルに従って解析しました。Luminex® 200™システムですべてのキットを測定し、xPONENT™ v. 4.3ソフトウェアでデータを取得しました。
標準曲線の情報は、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAプロトコルおよびブランドX、ブランドY、ブランドZの各キットのロットに固有の試験成績書(COA)から取得しました。Belysa® Curve Fitting Software を用いて、すべてのイムノアッセイについてデータ解析を行いました。図は、GraphPad PrismとMicrosoft Excelで作成されました。
標準曲線の再現性
標準曲線は、各キットロットでduplicateのウェルから得られた平均蛍光強度(MFI)を用いて作成されました。標準曲線の一貫性は、両方のロットの曲線を重ね合わせることにより示されます。4つのキットすべてに共通する2つの代表的なアナライトを図1に示します。その他の共通のアナライトの標準曲線をご覧になる場合は、アプリケーションノートをダウンロードしてください。
特に、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAは、キットロット間で一貫した標準曲線レンジを維持しています。一方、ブランドX、ブランドYおよびブランドZのキットは、スタンダードに値が割り当てられ、いずれのアナライトについてもキットロットごとに異なる標準曲線レンジを有します。そのため、他の3つのキットの標準曲線は、X軸に沿って少しずれが見られます。
図1.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAとブランドX、ブランドY、およびブランドZの(A)IL-1βおよび(B)IL-10に関する2つのキットロット間の標準曲線の性能比較
さらに、Belysa® Immunoassay Curve Fitting Softwareを用いて相対力価を決定しました。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAの相対力価の中央値が0.80であるのに対し、ブランドX、YおよびZの相対力価の中央値はそれぞれ1.90、0.669および3.09でした。4つのキット間で共通のアナライトの相対力価のグラフを図2に示します。
図2.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルA、ブランドX、ブランドYおよびブランドZで共通のアナライトに関してBelysa® Curve Fitting Softwareで決定した相対力価
検出限界
検出限界(LOD)はアッセイ感度の重要な指標であり、バックグラウンドノイズから確実に検出できるアナライトの最低濃度を示します。各アナライトのLODは、Belysa® Curve Fitting Softwareにより、以下の式を用いて決定しました。
LOD = 3 (ブランクサンプル) / 傾きII、傾きIIは、ブランクから濃度が上昇する最初の3つのスタンダードグループにベストフィットする最小二乗回帰直線の傾きです。
この計算はブランクの変動に依存するため、duplicateのブランクサンプル間でMFIが同一の場合はLODを計算できません。そのため、ブランクに変動がない標準曲線については、LODは「N/A」と記載されています。標準曲線をtriplicateで測定することにより、各アナライトのLOD値が得られる確率を高めることができます。
4つのビーズベースイムノアッセイのそれぞれについて、27種類の共通のアナライトのLOD値を各ロット間で比較し、これらを平均して平均LOD値を求めました。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAの26アナライト、ブランドXとブランドZの各25アナライト、およびブランドYの27アナライトのデータを解析に使用しました。各ロットでduplicateのバックグラウンドウェルのMFIが同一で、LODが「N/A」となる場合のみ、アナライトを除外しました。
平均して最も感度が高かったのはMILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAで、共通のアナライトに関して最も低い平均LOD値を示しました。平均LOD値は、MILLIPLEX®マルチプレックスキットが2.7 pg/mLであるのに対し、ブランドXは5.6 pg/mL、ブランドYは7.1 pg/mL、ブランドZは35.0 pg/mLでした(図3A)。アナライトごとのLOD値のいくつかの例を表1に示します。
LODの% CV(図3B)は、曲線の低濃度域の一貫性を意味します。上述したように、バックグラウンドのMFIが同一だとLODを決定できないため、LODが得られないアナライトもありました。したがって、LODが得られたアナライトのみを% CVの計算に使用しました。これには、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAの18アナライト、ブランドXの17アナライト、ブランドYの15アナライト、およびブランドZの13アナライトが含まれます。計算が可能なすべてのアナライトのLODの平均% CV値が50%を下回ったキットは、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAのみでした。
図3.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルA、ブランドX、ブランドYおよびブランドZで共通のアナライトに関してBelysa® Curve Fitting Softwareで決定した、キットロット間の検出限界変動の(A)pg/mL値および(B)% CV
図4.2つのキットロット間のサンプル測定値の一貫性と相関。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAとブランドX、YおよびZとの比較。(A)キットロット間のサンプル値の比率を使用して、どのキットがサンプル測定において最も一貫性に優れているかを決定した。(B)R2値は、各キットロット間のサンプル相関を示す。
MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAとブランドX(図5A)、ブランドY(図5B)およびブランドZ(図5C)との直接比較をX軸にサンプル比率、Y軸にR2値をプロットして示します。
図5.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAと(A)ブランドX、(B)ブランドYおよび(C)ブランドZとのサンプル測定値の直接比較。X軸にサンプル比率、Y軸にR2値をプロット。
キットロット間のサンプル相関の結果を、IL-13(図6A)、MIP-1β(図6B)およびVEGF-A(図6C)の3例について示します。
図6.MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAの(A)IL-13、(B)MIP-1βおよび(C)VEGF-Aに関するキットロット間のサンプル相関の結果とブランドX、YおよびZとの比較
良好な測定は、濃度値比率が0.4~2.5の範囲と規定されています。ロット間サンプル相関を示すR2値は、0.7以上と設定されています。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAでは、48アナライトすべてがこれら2つの基準の少なくとも一つを満たしていました。最も優れた性能を示した競合他社のキットは、45アナライトのうち37アナライトが比率またはR2のいずれかの基準を満たすにとどまりました(表2)。MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAは、48アナライトのうち40アナライト(83%)が両方の基準を上回り、2番目に優れたキットは、45アナライトのうち29アナライト(64%)で両方の条件を満たしました。
まとめ
このアプリケーションノートに示したデータは、血清および血漿中の免疫学的因子の測定における異なるキットロット間の一貫したアッセイ性能、感度および再現性に関する、MILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAの信頼性を示しています。製造および品質試験プロセスの一環として、MILLIPLEX®のスタンダードタンパク質およびクオリティーコントロールタンパク質は、過去のロットおよび「ゴールドスタンダード」の参照ロットと比較され、ロット間一貫性が保証されています。すべてのデータは、トレンドチャートにまとめられ、ロット間性能を追跡することができます。過去のロットのスタンダードに加えて、ゴールドスタンダードに対して比較評価することは、新しいロットが製造される際に生じるおそれのあるアッセイドリフトを管理するために重要です。また、標準曲線の有効性について厳格な合否基準を維持することは、ロット間のキット性能を確保し、信頼性の高いアッセイ感度とサンプル測定を可能にするために重要です。
この比較に関する詳細なデータは、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。
研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。
お問い合わせ
MILLIPLEX®マルチプレックスアッセイについてご質問がある場合は、MILLIPLEX®免疫パネルに関する詳細な情報をご覧いただくか、以下のボタンをクリックしてフォームに必要事項を入力してください。
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