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セミドライ式/タンク式電気泳動転写のトラブルシューティング

電気泳動転写とは、ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)からImmobilon® PVDF転写メンブレンにタンパク質を転写する標準的な手順を指します。一般的に使用される2つの電気泳動転写技術は、タンク式転写とセミドライ式転写です。いずれの技術も同じ原理に基づいており、ゲル/メンブレンスタックを保持する装置と電場のかけかたのみが異なります。

セミドライ式またはタンク式電気泳動転写に見られる症状をクリックすると、考えられる原因と対策を確認できます。

バンドがスメアーになる/歪んでいる

考えられる原因対応策

メンブレンがメタノールで均一に湿潤されていない
  • メンブレン全体を、あらかじめメタノールで湿潤しなければなりません。メンブレン全体が、不透明から半透明に均一に変化するようにします。

メンブレンの下およびスタック内の他のレイヤー間に気泡がある

気泡

ウエスタンブロットの転写ステップ時にゲルとメンブレンの間に生じる気泡の影響

  • スタックの組み立て中に、ピペットまたは攪拌棒を用いて入ってしまった気泡を慎重に取り除きます。

ゲルとメンブレンの接触が不均一
  • ゲル全体とメンブレンの表面が良好に接触していることを確認します。

転写中に過剰な熱が生じた
  • 転写時の温度は20 ℃を超えてはなりません。タンク式転写では、バッファーを事前に冷却するか、転写を低温室で実施します。セミドライ式転写では、実施時間を短縮するか、ろ紙の枚数を増やすか、電流を下げます。

セミドライ式転写中にろ紙が乾燥してしまった
  • 転写前に、ろ紙が十分に濡れていることを確認するか、枚数を増やします。スタックの組み立てが15分以内に完了するようにします。

タンパク質の転写速度が速すぎた/タンパク質がメンブレン表面に蓄積してしまった
  • 電場の強度を下げます。

蛍光検出時の高いバックグラウンド

考えられる原因 対応策

トランスファーメンブレンの自家蛍光
  • 転写には、Immobilon®-FLメンブレンなどの自家蛍光の低いメンブレンを使用します。

    ヒト血清中のトランスフェリンの蛍光検出
    さまざまなウエスタンブロット転写膜上のヒト血清中
    トランスフェリンを蛍光検出した画像

タンパク質がメンブレンを通過してしまう
  • 電圧を最大50%下げ、タンパク質がメンブレンと相互作用する時間を延長します。
  • 強く負に荷電したタンパク質(高含量のアスパラギン酸およびグルタミン酸による)は、電場を非常に速く移動する傾向にあります。このようなタンパク質の移動を遅らせるため、電圧を下げます。
  • ゲル中のSDSが、タンパク質の膜への結合を阻害してしまう場合があります。転写バッファーでゲルを少なくとも15分間平衡化します。

    平衡化によってウエスタンブロットの転写効率が向上する

    ゲル(上)とブロット(下)の画像は、平衡化によってウエスタンブロットの転写効率が向上することを示しています。

  • 転写バッファーのメタノール濃度が低すぎて、SDSの除去が促進されません。特に低分子量タンパク質の場合は、メタノール濃度を15~20%に増やします。
  • メンブレンは、あらかじめメタノールで湿潤させなければなりません。メンブレン全体が、不透明から半透明に均一に変化するようにします。
  • Immobilon®-PSQ転写メンブレンに切り替えます。

タンパク質がゲル中で補足されてしまう
  • 転写バッファーのメタノール濃度が高すぎると、タンパク質からSDSを除去してしまい、タンパク質がゲルに沈殿してしまう場合があります。このような場合、ゲルからの高分子量タンパク質の転写が減少してしまいます。タンパク質の沈殿が問題になる場合は、溶解性を高めるため、転写バッファーにSDSを添加します(0.01%~0.05%)。また、過剰なメタノールは、ゲルを縮めたり、固くする傾向があるため、高分子量タンパク質の転写を阻害する場合があります。

タンパク質の等電点が、転写バッファーのpHに等しいまたは近い
  • 等電点が転写バッファーのpHと同じタンパク質は、正味電荷が0になるため、電場内を移動しません。転写を促進するため、10%メタノールを含むpH 11の10 mM CAPSバッファーなどのpHが高いバッファーや、酢酸バッファーなどのpHが低いバッファーを試してください。

ゲルまたは転写バッファー、あるいはその両方に尿素が用いられている場合に検出が不十分である
  • バッファーを循環させたり、転写を低温室で行うことにより、温度を下げます。尿素は、温度が高いとタンパク質のカルバミル化を引き起こし、タンパク質のアミノ酸の電荷を変化させてしまうことがあります。その場合、抗体の認識や結合に重要なエピトープに影響が及ぶ可能性があります。

不完全なタンパク質転写
  • 残存タンパク質を確認するため、ゲルを染色します。転写が完了していない場合は、転写手法を再確認します。

タンパク質の保持が不良
  • 転写の完了後は、タンパク質の最適な結合と固定化のため、メンブレンを完全に乾燥させてください。この手順は、その後のあらゆる検出の前に実施する必要があります。

シグナルが認められない

考えられる原因 対応策

タンパク質が転写されていない
  • 転写時のゲルやメンブレンの向きを確認します。
  • 転写をモニタリングできるよう、着色分子量マーカーを使用します。

低分子量タンパク質の転写が不十分

考えられる原因 対応策

タンパク質の保持が不十分。
SDSが低分子量タンパク質の結合に干渉してしまう
  • Immobilon®-PSQ転写メンブレンに切り替えます。
  • 転写溶液からSDSを除去します。

転写バッファーのメタノール濃度が低い
  • 転写バッファーのメタノール濃度を高くします(15%~20%)。

タンパク質結合時間が不十分
  • 電圧を下げると、低分子量タンパク質のメンブレンへの結合が最適化される可能性があります。

電流がメンブレンを流れない
  • メンブレンとブロッティングペーパーをゲルのサイズにぴったり合うようにカットし、はみ出さないようにします。
  • カット済みのメンブレンをろ紙に挟み込んだサンドイッチ製品を探します。

高分子量タンパク質(約80 kDa以上)の転写が不十分

考えられる原因 対応策

メタノール濃度が高すぎる
  • メタノール濃度を10%(v/v)以下に下げると、ゲルが膨潤しやすくなり、高分子量タンパク質の転写の助けとなります。さらに、メタノール濃度が低いと、タンパク質からのSDSの減少も減り、ゲル中でのタンパク質の沈殿が減ります。メンブレンへの結合に関して、200 kDa超のタンパク質は、100 kDa未満のタンパク質ほどSDSによる干渉に敏感ではありません。

正に荷電したタンパク質の転写が不十分

考えられる原因 対応策

転写バッファー中のタンパク質の正味電荷が正で、
タンパク質が陰極に向けて移動してしまう
  • Immobilon® 転写メンブレンがゲルの陰極側になるように、転写スタックを反転させます。

セミドライ式転写が不十分

考えられる原因対応策

電流がゲルスタックを迂回してしまう
  • メンブレンとブロッティングペーパーがゲルのサイズにぴったり合うようにカットされており、はみ出していないかを確認します。
  • カット済みのメンブレンをろ紙に挟み込んだサンドイッチ製品を探します。

広範囲のタンパク質サイズの転写が不十分

考えられる原因 対応策

高分子量および低分子量タンパク質の転写には
異なる条件が必要
  • 『Transfer of a broad MW range of proteins may require a multi-step transfer』(T. Otter et al., Anal. Biochem. 162:370-377 (1987))をご参照ください。
  • セミドライ式転写には、3種バッファーシステムを使用します(『Protein Blotting Handbook』(PDF)の36ページに記載されているプロトコルをご参照ください)。
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