飲料水は私たちの健康に最も重要な飲み物であるため、その品質は厳しく規制されています。1,2。水中の無機イオン(硝酸イオン、亜硝酸イオンなど)は、健康に害を与える可能性があり、他のイオンは水の官能特性に影響を及ぼす可能性があります。例えば、塩化物イオンや硫酸イオンが多く含まれると不快な味がすることがあります。
水中の細菌を制御し、病原体を除去するため、水は化学物質で処理されることがあります。これらの化学物質が天然に存在する水中の有機分子と反応すると、有害な消毒副生成物(DBP)が生じることがあります3。このため、水道水中のイオンおよびDBP濃度は、厳密にモニタリング・制御され、それらを正確に検出・定量するための技術は進化し続けています。
水道水分析のためのイオンクロマトグラフィー
イオンクロマトグラフィー(IC)は、水試料中の汚染物質を検査するための一般的な分析法です。ICのワークフローの複数のステップで超純水が用いられています。例えば、試料の前処理、標準試料、ブランク水、水性溶離液の調製に超純水が使用されます。このため、超純水は、主要な試薬とみなすことができ、正確な信頼できるICの結果を得るためには高品質のものでなければなりません。
本技術資料では、水道水中の無機イオンおよびDBPのIC分析に対する、Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって製造した超純水の適合性を評価します。
超純水および水道水試料中のイオンのIC分析
水道水とMilli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって精製した超純水を分析しました。Milli-Q® IQ 7000は、25℃での比抵抗18.2 MΩ.cm、全有機体(TOC)5ppb未満の水を製造します。この装置に、Elix®連続イオン交換(EDI)式装置によって製造された純水を供給し、0.22 µm Millipak™最終フィルターを取り付けました。
超純水中の無機イオン濃度は、検出されず、検出限界(LOD)以下でした。例えば、超純水中の硝酸イオン(NO3-)濃度は、WHOおよび欧州の規制当局が規定する検出下限値の140,000分の1でした。これは、水精製工程に供給される水道水中にこれらのイオンが大量に含まれる場合でも同様でした(表1)。
図1および図2に、超純水のイオンクロマトグラムと、陰イオン標準品(図1)および陽イオン標準品(図2)のイオンクロマトグラムを示します。
図1.Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって製造された超純水および陰イオン標準品のイオンクロマトグラム。(ピーク9:炭酸イオン)。
図2.Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって製造された超純水および陽イオン標準品のイオンクロマトグラム
これらの結果から、Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって製造された超純水は、IC分析に十分に適していることが示されました。この超純水は、ブランク水や試料、標準試料、溶離剤の調製に使用することができます。本システムで製造された超純水は、含まれる無機イオン濃度が極めて低いため、水道水の分析にも適しています。
実験方法
無機陰イオン:
- 装置:Thermo Scientific Dionex® ICS-3000システム
- カラム:陰イオン濃縮:IonPac® UTAC-ULP1 5 × 23 mm;ガードカラム:IonPac® AG19 2 × 50 mm;分析カラム:IonPac® AS19 2 × 250 mm
- 溶離剤:KOHグラジエント:0~20分:1~35 mM KOH;20~25分:35 mM;25~25.1分:35~1 mM KOH;25.1~30分:1 mM
- 溶離剤生成:KOHカートリッジ付きEG40およびICW-3000™ IC直接供給型超純水製造装置;流量:0.25 mL/min
- 検出:サプレッサーで処理した導電率;溶離剤サプレッサー:ASRS™ Ultra II 2 mm
- 試料および標準試料:採取量40 mL(濃縮前:40 mLをカートリッジ上で濃縮し、濃縮試料を脱着後にカラムに注入)TraceCERT™標準品を使用。
陽イオンについても、MSAグラジエントとCS12A分析カラム以外は同じ方法を使用しました。
超純水および水道水試料中の消毒副生成物のIC分析
水道水の安全性を保つためには、病原体を死滅させ、DBPの生成を許容限界以下にまで抑えるために、必要な量の消毒剤を添加する必要があります。
EPA5およびWHO2は、水道水中の臭素酸イオンの最大許容濃度を10 μg/Lに設定しています。FDAは、ボトル水についても同じ規制基準値を採用しています4。欧州では、臭素酸イオンの最大許容濃度をオゾン処理した天然のミネラルウォーターやスプリングウォーター中は3 µg/L6、飲料水は10 µg/Lに設定しています1。飲料水中の臭素酸イオン、塩素酸イオンおよび亜塩素酸イオン濃度は通常、EPA法300.17に従ってICによって評価されます。
私たちは、水道水とMillipak™最終フィルター搭載Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって製造された超純水を分析しました。超純水中の臭素酸イオン、塩素酸イオンおよび亜塩素酸イオン濃度は規制当局が設定する検出下限未満でした(表2)。水道水中に多少のDBPが存在していた場合でも、装置で製造された超純水中にはDBPは検出されませんでした。
水精製工程(Elix® EDI式システムからMilli-Q®IQ 7000超純水製造装置への工程)における技術の組み合わせによって微量のDBPが効率的に除去され、ICによる水道水分析に適した超純水が精製されます。
実験方法
分析は独立認定機関(COFRAC)の認定を受けた施設で実施しました。
- 亜塩素酸イオン・塩素酸イオン:NF EN ISO 10304-4規格適合
- 臭素酸イオン:NF EN ISO 15061規格適合
- 溶離剤:炭酸塩/重炭酸塩
- カラム:Metrohm Metrosep A supp 7 – 250/4.0、 45℃(サプレッサー処理導電率検出)
水道水のIC分析に対するMilli-Q® IQ 7000シリーズ超純水製造装置によって製造された超純水の適合性
この試験により、Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置によって精製された超純水は、水道水のIC分析の一環として実施される作業(溶離剤、試料、標準試料の調製およびブランク水としての使用)に適していることが示されました。システムに供給される水道水に測定対象のイオンが含まれている場合でも、これらの汚染物質は、水精製工程で使用されている技術の組み合わせによって除去されます。
Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置への水供給はElix®EDIテクノロジー搭載のMilli-Q® IX純水製造装置によって行われます。あるいは、水道水を供給源とするMilli-Q® IQ 7003/05/10/15超純水・純水製造装置によってIC分析に適した超純水が供給されます。
参考文献
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