Staudingerライゲーション反応
化学選択的で高収率かつ穏やかな化学ライゲーション反応
アジドはトリアリールホスフィンと速やかに反応し、窒素の脱離を伴いながら対応するイミノホスフォラン(アザ-イリド)を生成します。StaudingerとMeyerにより最初に報告されたこの変換反応1は、穏やかな条件で進行し高収率でアザ-イリドを与えます。最初に生成するイミノホスフォランは、アルデヒドやケトンなどのさまざまな求電子剤との多くの重要な合成反応に用いられていますが、水中では加水分解によりアミンが生成します2,3。アジドからアミンへの還元反応は、Scheme 1に示す反応機構によると考えられています4。
Scheme 1.
エステル基がリン置換基のオルト位にある場合、加水分解の前にアミド結合を形成しますが(Scheme 2)4、このことによりこの変換反応がケミカルバイオロジーにとって非常に有用な反応となりました。
Scheme 2.
アジドとホスフィンが生体内に存在する多くの官能基と反応しないという点と化学選択性が高いという点が、この反応が、ケミカルバイオロジーにおける細胞内プロセスを研究するための手法の一つとして大きく注目を集めている理由です3。これを最もよく表しているのはカリフォルニア大学バークレー校のCarolyn Bertozzi教授らの研究です。Bertozzi教授の研究は、置換基を持たせたトリフェニルホスフィンを還元剤とタグ化試薬として用い、アミド結合した非天然の細胞表面シアロシドの生成に一連の反応を利用しています。代謝物として産生したシアロシドは、ウイルス感染の調節とがん細胞の転移を阻害します。Bertozzi教授のアプローチをScheme 3に示しました5。
Scheme 3.
参考文献
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