1-ペプチド付加反応
ペプチドまたはタンパク質の特性・濃度はTrueGel 3D™ハイドロゲル合成時に変更することができます。このペプチド濃度の最適化は、遊走/運動性または細胞極性アッセイなどの特定のアプリケーションにとって重要な場合があります。一例として、Lutolfet al. は、線維芽細胞の増殖に必要なRGDリガンドの最低濃度を示しました。1
最終のハイドロゲルでは、反応基(SH反応基)の濃度はSH基の濃度と同等である必要があります。SH官能化ペプチドまたはタンパク質がゲルに含まれている場合、ポリマーの反応基の濃度は架橋剤由来のSH基とペプチド/タンパク質に由来するSH基の合計と相関している必要があります。
異なる濃度のペプチドを検査する場合、相当量のチオグリセロールを混合物に添加し、比較するゲルの最終強度が同じであることを確認する必要があります(ゲル剛性はハイドロゲルのチオール基数と相関します)。最終のハイドロゲルでは最高5 mmol/Lのペプチドを添加できることにより、ペプチドの数・濃度の変更に柔軟性がもたらされます。
TrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチド濃度の最適化
TrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチドについて、最終のハイドロゲルにおけるペプチド濃度0.5 mmol/Lペプチドは、細胞に対する接着部位を十分に提供します。
表1は、様々な濃度のTrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチドを達成するための反応ミックスのセットアップ方法を示しています。 他のペプチドの使用については本表に続く指示をご参照ください。
最終ペプチド濃度(mmol/L) | 0 | 0.1 | 0.2 | 0.5 |
---|---|---|---|---|
試薬: | 試薬容量(μL) | |||
チオール反応性ポリマー | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.5 |
架橋剤(非細胞分解性架橋剤PEGまたは細胞分解性架橋剤CD) | 3 | 3 | 3 | 3 |
TrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチド(3 mmol/L)* | 0 | 1 | 2 | 5 |
TrueGel3D™ チオグリセロール(3 mmol/L) | 5 | 4 | 3 | 0 |
細胞懸濁液 | 5 | 5 | 5 | 5 |
TrueGel3D™バッファ(pH 5.5) | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.5 |
水 | 12 | 12 | 12 | 12 |
合計 | 30 | 30 | 30 | 30 |
*TrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチドおよびTrueGel3D™チオグリセロールストック溶液(20 mmol/L)を3 mmol/Lに希釈し、ピペッティング容量を増やします。
他のタイプのペプチド(カスタムまたは市販ペプチド)の使用
TrueGel3D™ RGDインテグリン接着ペプチド以外のペプチドを使用することができます。適合するペプチドは、ペプチド末端(NまたはC末端)にシステイン残基を有し、配列にチオール基が存在する必要があります(ペプチドをチオール反応性PVAまたはデキストランポリマーに共有結合させる必要があります)。N末端システインのすぐ近くに正荷電アミノ酸を有することは避けます(この近接を除外するためスペーサーを組み込むことができます)。ペプチドの品質は重要なパラメータです。酸化を避けるため、ヘッドスペースが最小限の低容量容器に分注した精製(例えばHPLC)ペプチドのみを使用します。
2-ハイドロゲルの硬さ(stiffness/rigidity)を最適化します
使用する細胞およびアッセイの性質に応じ特定の硬さのハイドロゲルが必要になる場合があります。ゲルの硬さは、チオール反応性ポリマーおよび関連する架橋剤の濃度上昇に伴って増加します。これは、チオール反応性ポリマー(PVAまたはデキストラン)および架橋剤(非細胞分解性架橋剤PEGまたは細胞分解性架橋剤CD)の濃度上昇により、より硬いゲルが得られるということを意味しています。架橋強度はポリマーおよび架橋剤両方の濃度と関連します。
表2により、所望のゲルの硬さに応じて反応ミックスを調製することができます。
ハイドロゲルの硬さ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
架橋強度 | 2 | 3 | 4 | 5 | 7 | 9 |
試薬 | 試薬容量(μL) | |||||
SLOチオール反応性ポリマー | 2 | 3 | 4 | 5 | 7 | 9 |
架橋剤(非細胞分解性架橋剤PEGまたは細胞分解性架橋剤CD) | 3 | 4.5 | 6 | 7.5 | 10.5 | 13.5 |
細胞懸濁液 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
TrueGel3D™バッファ(pH 7.2) | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.5 |
水 | 17.5 | 15 | 12.5 | 10 | 5 | - |
合計 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
ゲルの硬さは、高速ゲル化ハイドロゲルおよび低速ゲル化ハイドロゲル両方の混合物を用いて調整可能です。高速ゲル化ハイドロゲルでは、架橋剤の添加からゲル溶液の凝固開始までの時間が短くなります。 ゲル化はほとんど瞬間的に起こるので、この最適化は難しいですが、可能です。
さらに、ゲル化時間は使用するポリマーの種類(SLO-PVAまたはSLO-DEXTRAN)および架橋剤の種類(非細胞分解性架橋剤PEGまたは細胞分解性架橋剤CD)に伴い変動します。ゲル化時間は細胞不使用の予備試験で測定します。一旦ゲル化が開始したら、ピペットチップでつついた際にゲルの表面が糸を引かなくなるまで反応を進行させます。この後は、ゲル構造を壊すことなく培養培地内にゲルを浸漬させることが可能です。
図1.ハイドロゲルの硬さは、TrueGel3D™合成ハイドロゲルを用いることにより制御可能です。A)デキストランマレイミドおよびPEG-チオール架橋剤(両コンポーネントの最終濃度3 mMol/L)混和後のハイドロゲル形成。混和後1分以内にハイドロゲルが形成され、材料のせん断弾性率の弾性成分が増加していることがわかります。対照的に、せん断弾性率の粘性成分は10パスカル(Pa)未満と低いままで、粘性が低く高弾性のハイドロゲルが形成されていることを示しています。B)せん断弾性率20~40 Paの軟らかいハイドロゲルは、各反応基の最終濃度1.5 mMol/Lのポリマー成分を混和することにより生成可能です。せん断弾性率最高4,000~6,000 Paの固いハイドロゲルは、高濃度の反応基6 mMol/L超で得られます。
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参考文献
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