DIGによる標識方法(ラベリング) – Roche®製品

Reaction principle
通常のPCR反応を通じてDigoxigenin-11-dUTPは、新しく合成されるDNAに取り込まれます。
PCRによってごく微量のDNAもµgオーダーにまで増幅が可能です。 唯一の条件といえば、適正なプライマー合成のために、標的の配列情報を必要とすることだけです。
Non-RI DIGシステムではステロイド ハプテンであるDigoxigenin(ジゴキシゲニン)を使用し、ハイブリダイゼーションおよび発色/発光検出に用いるDNA、RNA、またはオリゴヌクレオチドを標識します。 ジゴキシゲニンは、アルカリ不安定エステルを介して、dUTPと結合します。 標識dUTPは、DNAポリメラーゼを使用した酵素的な核酸合成により、簡単に取り込まれます。 Non-RIラべリングとPCR反応は、PCR産物の分析および(限られた標的配列からの)標識プローブ調製のための強力なコンビネーション ツールです。
Critical hints about PCR labeling
PCR conditions
- PCR増幅のパラメータを至適化する (サイクル設定、テンプレート濃度、プライマー配列およびプライマー濃度)各テンプレートおよびプライマーごとに、DIG-dUTP不在下で行うこと。
Template
- クローン挿入物をテンプレートとして用いると良い結果が得やすい。 反面、ゲノムDNAは扱いが困難。
- テンプレート濃度は、プローブの特異性に関して大きな影響を与えるファクターとなる。
Labeling
PCR DIG Probe Synthesis Kitは、他のラべリング手法と比べて至適化のプロセスが極めて容易です。 その理由としてExpand High Fidelity PCR Systemが採用されていることが挙げられます。 このPCR酵素は以下の特長を有しています。
- GCリッチな領域もテンプレートとして使用できる
- ほとんどのテンプレートに対して標準的な濃度のMgCl2(1.5 mM)を適用できる。
したがって、至適化のプロセスが必要なのはキット中のdNTPストック溶液(10x)によるDIG-dUTP濃度の調整だけです。 これは、DNAテンプレートによっては(特にGC含有量が多い、またはテンプレートが長い場合)"標準的な" DIG-dUTP濃度においても、十分な増幅効率が得られない場合があるためです。
ランダムプライミングによるDNAの標識
ランダム プライミングにおいてテンプレートの長さは、ほとんど問題になりません。
Note: ごく短い配列に対しては、PCRによるDNAの標識 の方が適しています。
標識プローブはサザンブロットによるシングル コピーの遺伝子検出に最適ですが、もちろん通常のドットブロット、ノーザンブロットにも使用することができます。
プライマー自体が異なる6塩基の配列を有するため、プローブ産物もまちまちな長さをもつ断片となります。 したがってゲル上でも固有のバンドではなく、スポット状のシミとなって検出されます。 標識プローブ長の分散は、元となるテンプレート長に依存しています。

Reaction principle
Klenow酵素は6量体プライマーとアルカリ不安定DIG-11-dUTP存在下で、DNAテンプレートを複製します。 平均的に、Klenow酵素は20~25ヌクレオチド配列毎にDIG部位を挿入します。ラベル産物は0.10~0.03 pgのターゲットDNAを検出できる、均一かつ高感度なハイブリダイゼーション プローブとなります。
Note:ランダム プライミングではDIG分子の配列が重要となります。 DIG分子同士が近すぎた場合、立体障害によってAnti-DIG抗体が標識プローブと結合できなくなる場合があるためです。
ニック トランスレーションによるDNAの標識
ニック トランスレーション法は、Rigby [1]によって提唱されたのち、Langer [2]によって核酸のアナログを取り込む用途へと進化を遂げました。 ここで述べる手法では、DNA産物のおおよそ20~25塩基配列毎に修飾されたヌクレオチド(DIG-、Biotin -、Fluorescein-、またはTetramethylrhodamine-dUTP)が挿入されることになります。 このラベル密度は、修飾ヌクレオチドを酵素が取り込むうえで効果的なだけでなく、免疫染色による検出(間接法)において最も高感度なターゲットを産出しうるのです。 in situ ハイブリダイゼーションの用途においてニック トランスレーションで作成できる適正なラベル断片長はおよそ200~500ベースです。
Note:ニック トランスレーション法においてDNAの変性は必要ありません。

Reaction principle
E. coli ポリメラーゼ I とDNase IをdsDNAテンプレートに添加すると、ニック トランスレーション反応によって、合成されるDNAにはDigoxigenin-11-dUTPが取り込まれるようになります。ニック トランスレーションは核酸のin situラべリングに極めて適した手法です。
References
- [1] Rigby, P. W. J.; Dieckmann, M.; Rhodes, C.; Berg, P. (1977) Labeling deoxyribonucleic acid to high specific activity in vitro by nick translation with DNA polymerase I. J. Mol. Biol. 113, 237–241.
- [2] Langer, P. R.; Waldrop, A. A.; Ward, D. C. (1981) Enzymatic synthesis of biotin-labeled polynucleotides: Novel nucleic acid affinity probes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, 6633–6637.
in vitro転写によるRNAの標識
アプリケーションによって(たとえば数ngオーダーのトータルRNA中からレアなmRNAを検出する場合など)DIG標識RNAは、DIG標識DNAよりもずっと効果的なハイブリダイゼーション プローブたりえます。 標識RNAプローブは、DNAテンプレートからのin vitro 転写によって合成されます。転写されるDNAは、プロモーター(T7、SP6、またはT3 RNA ポリメラーゼ)を含む、適切な転写ベクターのマルチクローニングサイト(MCS)にクローニングさせます。 引き続きテンプレートDNAを(挿入部位に近い)適切なベクターの部位で開裂し、直鎖化します。 RNAポリメラーゼは、(DIG-UTPを含む)リボヌクレオチド混合物の存在下で、DNAインサートをアンチセンスRNAへと転写します。 数百回におよぶDNA転写を経て、完全長のDIG標識RNAプローブを得ることができます(通常1 µg DNAから10 ~ 20 µg RNAを取得できます)。 この手法では、RNAの約25~30塩基毎に1 分子のDIGが取り込まれます。

Reaction principle
転写されるDNAテンプレートをT7、SP6、またはT3 RNAポリメラーゼに対するプロモーターを持っている適切な転写ベクターのポリリンカー部位にクローニングします。適切な部位でテンプレートDNAを直鎖化させた後、DIG-11-UTP存在下でRNAが転写されます。 標準的な条件下では、1µgのテンプレートDNAから約10µgの完全長DIG標識RNAが転写されます。
Critical hints about RNA probe labeling
RNases
RNaseは遍在性が高く、活性に補因子を必要としません。 実験を成功させるには、以下の手段によってRNaseによるコンタミネーションを回避する必要があります。
- ディスポーザブルのプラスチック容器や、(RNase ZAPなどで)消毒済みのガラス容器を使用する。
- あらゆる溶液にピロ炭酸ジエチル(DEPC)または二炭酸ジメチル(DMDC)処理をする。 可能であればオートクレーブ処理をする。
- 実験中を通じ、実験用手袋を着用する。
Template purity
- DNAテンプレートの純度を高く保ちましょう。ラべリング効率の大部分はテンプレート純度に影響されます。
- テンプレートは直鎖化し、フェノール/クロロフォルムで抽出し、エタノールで沈殿させます。
Template sequence
- 特定のリボソームRNA(28sや18s)からの意図しないシグナルを弱めるため、テンプレートからは可能な限りポリリンカー配列を取り除きましょう。
- 不必要な配列が転写されることを避けるため、5' 粘着末端あるいは平滑末端を生じる制限酵素を使用しましょう。
Template length
- 適正なテンプレート長: 約 1 kb
- 最短のテンプレート長: 200 bp
Storage of probe
- RNAプローブを長期保存する場合には、分注して-20°Cまたは-70°Cで冷凍します。
- エタノール中のDIG-標識プローブは、-20°Cまたは-70°Cで約1年間安定しています。
オリゴヌクレオチドの標識
ISHをはじめとしたいくつかのアプリケーションにおいて、DIG標識合成オリゴは最良のハイブリダイゼーション プローブとなります。 ISH以外にもDIG標識オリゴはハイブリダイゼーション用途として以下の目的にも使用できます。
- Dot/slot blots
- Library screening
- サザンブロットによる遺伝子配列の検出
Note:オリゴヌクレオチド プローブは極めて高感度なので、十分な量のターゲットDNA(たとえば10 µg ヒトゲノムDNA)があればゲノムの混在する環境下でも検出が可能です。 - ノーザンブロットによる多量のmRNA検出
DIG標識オリゴを用いた手法の代表的パターンを以下に列挙します。
Labeling 5´ end with DIG-NHS-Ester (5'末端ラべリング)

ヌクレオチド必要量: 100 nM
所要時間: 一晩
インキュベーション温度: +15 ~ +25°C
- テンプレートはごく少量で良い
Labeling 3´ end with DIG-ddUTP (3'末端ラべリング)

ヌクレオチド必要量: 100 pM
所要時間: 15 分
インキュベーション温度: +37°C
検出能: 10 pg DNA
- テンプレートはごく少量で良い
- 標識プローブは精製なしで使用できる
- 反応を容易にスケールアップできる
(インキュベーションを1 hに延長)
Adding a 3´ tail of DIG-dUTP and dATP (テイリング)

ヌクレオチド必要量: 100 pM
所要時間: 15 分
インキュベーション温度: +37°C
検出能: 1 pg DNA
- テンプレートはごく少量で良い
- 末端ラべリングよりも高感度のプローブを生成できる
- 標識プローブは精製なしで使用できる
- 反応を容易にスケール アップできる
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