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大麻(カンナビス)および産業用大麻中の残留農薬・マイコトキシン

規制要件を満たすためのLC-MS/MSおよびGC-MS/MSによる大麻および産業用大麻中の残留農薬・マイコトキシン分析。

食料品、チンキ剤、抽出物およびオイルなどの大麻(カンナビス)・産業用大麻濃縮製品は、市場で広く使用されるようになりました。大麻製品中の残留農薬とマイコトキシンの試験は、各国のさまざまな当局によって規制を受けています。農薬は、使用分野に基づいて主要な7グループ、つまり殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺鼠剤、ダニ駆除剤、軟体動物駆除剤、および殺線虫剤に分類されます。ほとんどの農薬は、人や環境に健康上の悪影響を及ぼすため、使用が制限されるかまたは全面禁止となっています。マイコトキシンは、特定の菌やカビが産生する毒性の強い二次代謝産物で、食用作物を容易に汚染します。大麻中の残留農薬およびマイコトキシンを正確に同定および定量する方法は、消費者の安全性にとって必要不可欠です。 


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農薬およびマイコトキシン分析における法規制の枠組み

カナダ、南アフリカ、メキシコ、および米国の多くの州では、程度の差はあっても大麻の合法的な医療・嗜好目的での使用が可能で、さらに多くの国で大麻の法的状況の見直しが行われています。米国環境保護庁(EPA)は2019年12月に、36種の農薬の産業用大麻栽培への使用を承認しました。

農薬の用途は厳密に規制され、大麻・産業用大麻製品中の残留農薬は州当局によって厳しく監視されています。監視が求められる規制対象の農薬の許容量は、州、国、および地域によって異なり、10 ppb~1 ppmとなっています。米国食品医薬品局(FDA)は、人間の食物および動物の飼料のマイコトキシンを20 ppbを限度として規制しています。AOACなどの団体は、大麻農薬分析に求められる方法要件を開発しています。

大麻汚染による安全上の危険

農薬は一般的に大麻植物を害虫から保護するため、また作物収量を高めるために使用されています。残留農薬への慢性ばく露は、重大な健康リスクをもたらすおそれがあります。

農薬以外にも、大麻の生育条件が病原性のカビや菌が生じるための理想的な環境を作り出すことがあります。保管、輸送および加工も大麻汚染に有利に働き、製品中のマイコトキシンレベルの上昇を招くおそれがあります。アフラトキシンG1、G2、B1、B2またはオクラトキシンAなどのマイコトキシンは、免疫抑制性、発がん性、神経毒性、および肝毒性を有するとみなされています。

したがって、大麻・産業用大麻中の残留農薬およびマイコトキシンレベルの試験は、消費者の安全性と品質管理を確保するうえで重要です。

農薬およびマイコトキシン分析の方法

農薬およびマイコトキシン分析の一般的なワークフローでは、大麻・産業用大麻中の残留農薬とマイコトキシンの迅速なモニタリングを行うために、サンプル抽出、抽出物汚染除去、標準化とキャリブレーションの後に、LC-MS/MSおよび/またはGC-MS/MS分析を行う必要があります。

農薬およびマイコトキシン分析のためのサンプル前処理

大麻中の残留農薬およびマイコトキシンの分析は、オイル、炭水化物、樹脂、テルペンおよびカンナビノイドのマトリックス組成が複雑なため困難を伴うことがわかっています。残留農薬のスペクトルデータによれば、共抽出されたマトリックス組成による大幅な干渉が示されています。また、複合マトリックスはイオン抑制を引き起こして一貫性のない測定結果をもたらします。

大麻製品から農薬とマイコトキシンを単離するための一般的なサンプル前処理法では、溶媒抽出に続いて希釈が行われます。分析対象物を単離してマトリックス成分からこれらを分離するための抽出物汚染除去のステップには、QuEChERSおよび固相抽出(SPE)が用いられます。QuEChERSは、多成分残留分析の欧州規格(EN 15662)およびAOAC法に採用されています。QuEChERSERメガメソッドとして知られるQuEChERSの更新版は、産業用大麻マトリックス中の幅広い農薬の分析に有効であることがわかっています。その他の手法には、液液抽出(LLE)、固相マイクロ抽出(SPME)、固液抽出(SLE)、および分散固相抽出(DSPE)などがあります。マトリックス効果は、希釈倍率を10倍から100倍に増やすことでも効果的に除去できます。希釈倍率を15倍にすれば、ほとんどのマトリックス効果を十分に除去して検出感度抑制を低減できます。

キャリブレーション標準物質の調製

正確な参照標準物質の使用は、キャリブレーションと定量で高精度の分析結果を得るために重要です。ISO17034に準拠して製造された認証標準物質(CRM)は、精度、測定不確実性、およびトレーサビリティが規定されており、ISO17025認定のラボでは必須です。キャリブレーション曲線は、ブランクマトリックス抽出物か純粋溶媒のいずれかで調製するか、農薬希釈標準溶液を用いて植物材料にスパイクすることにより調製できます。農薬キャリブレーション曲線の濃度は、分析対象物の検出限界値または報告限界値に合わせる必要があり、より低いまたはより高い濃度の標準物質または混合物を使用できます。参照標準物質は、コントロールの調製、システム適合性、およびマトリックス抑制・促進・抽出回収の評価にも使用されます。

LC-MS/MSおよびGC-MS/MS法を用いた農薬およびマイコトキシン分析

LC-MS/MSは農薬およびマイコトキシン分析に適した方法で、優れた選択性と感度を有し、特にさまざまな極性と分子量が複合マトリックスに含まれる残留農薬およびマイコトキシンの検出に最適です。

GC-MS/MSは、有機リン系や有機塩素系など揮発性の疎水性農薬に適した選択性と感度に優れた方法です。分析対象物保護剤を使用するとマトリックス関連の悪影響を低減でき、誘導体化を行うことで検出とメソッド感度を改善できます。

GC-MS/MSとLC-MS/MSの組み合わせは、多成分残留農薬およびマイコトキシン分析に使用されます。タンデム四重極MSは、1回の分析で数百におよぶ低ng/g(ppb)レベルの農薬を同時分析する場合に高い感度と選択性をもたらします。





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