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グルタミン酸受容体(イオンチャネルファミリー)

グルタミン酸受容体のイオンチャネルファミリー(「イオンチャネル型」グルタミン酸受容体すなわちiGluR)には、薬理学およびタンパク質の構造に基づく3つの主要なサブタイプがあります。 

N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)サブタイプは、1つ以上のNR2(A~D)サブユニットと結合したNR1 サブユニットおよび第3のサブユニットであるNR3(A、B)で構成されるヘテロオリゴマーです。本受容体は、2つのアミノ酸認識部位、すなわちグルタミン酸認識部位およびグリシン認識部位を有し、これらはいずれもチャネル開口の促進に必須です。グルタミン酸認識部位またはグリシン認識部位のいずれかと選択的に競合するアンタゴニストが発見されており、これらは機能的な受容体アンタゴニストとして作用します。このチャネルはカルシウムなど陽イオンを透過し、休息時に近い膜電位でマグネシウムにより阻害されるため、「conditional」な受容体としての生理学的な役割に重要なこのリガンド開口型イオンチャネルは電位依存性を有しています。このチャネルを選択的にブロックするさまざまな薬剤が明らかにされています。その他にも、ポリアミン、亜鉛、プロトン、および酸化剤/還元剤がそれらを介して受容体の機能に影響を及ぼす認識部位が受容体上に存在します。数種のクラスの化合物は、NR2Bを含むNMDA受容体と選択的に相互作用することが明らかにされており、「サブユニット選択的」アンタゴニストとなっています。NMDA受容体は、シナプス後肥厚部の細胞表面タンパク質、受容体および細胞内メディエーターの大きな複合体の一部と認識されており、これらは相互作用し興奮性神経伝達およびシナプス可塑性を制御します。

α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)サブタイプは、iGluR1~4を組み合わせて形成するヘテロオリゴマーです。グルタミン酸認識部位に作用する選択的アゴニストおよび競合的アンタゴニストは、この受容体が担う生理学的および病態生理学的役割を解明するのに有用です。この受容体のアロステリック部位は、グルタミン酸に対する反応を増強するAMPAkinesの作用を媒介しますが、GYKI 52466および関連化合物は非競合的阻害薬として作用します。このイオンチャネルは陽イオン透過性ですが、カルシウム透過性はiGluR2 サブユニット内のRNA編集のメカニズムにより制御されています。ジョロウグモ毒素は、GluR2 サブユニットを含まないAMPA 受容体のチャネルをブロックします。

カイニン酸サブタイプは、iGluR5~7ならびにKA1およびKA2サブユニットを含むヘテロオリゴマーで構成されています。選択的アゴニストとしてカイニン酸自体およびAMPAアナログATPA が使用されており、近年ではカイニン酸受容体に対し選択性を有する数種の競合的アンタゴニスト、特にiGluR5 サブユニットを含むアンタゴニストが特定されています。

イオンチャネル型グルタミン酸受容体の生理学的および病態生理学的役割は、分子論的および薬理学的アプローチの両方を用いて広範囲に研究されています。NMDA受容体はシナプス後部にあり、発達中および成熟CNSの可塑性に重要な役割を担っており、シナプス後部AMPA 受容体はCNSの高速興奮性シナプスの大半で化学的伝達を媒介します。NMDAおよびAMPA受容体はいずれも、学習や記憶など生理学的プロセスの基盤となる現象である、長期増強、長期抑圧など特定のシナプス可塑性において重要な役割を担っています。電位依存性およびカルシウム透過性により、NMDA受容体はシナプス可塑性の開始に重要な役割を担っており、これらの現象の発現はAMPA受容体の細胞表面発現の変化によるものです。カイニン酸受容体の役割は明らかではありませんが、海馬や脊髄ではシナプス前部での局在および伝達物質遊離に対する影響についてのエビデンスが存在します。NMDA受容体が神経変性過程に関与するというエビデンスは、グルタミン酸、グリシン、アロステリック部位への結合を介して受容体をアンタゴナイズする薬剤を用いた脳卒中および頭部外傷患者における多数の臨床試験の不成功をもたらしました。また、AMPA受容体アンタゴニストは動物実験において神経保護作用および抗痙攣作用を示しました。メマンチンは低親和性 NMDA受容体チャネルブロッカーであり、アルツハイマー患者の認知を改善します。また、NMDA受容体アンタゴニストはパーキンソン病の運動機能障害の軽減、また動物モデルにおける疼痛軽減に有益な効果を示しています。認知機能障害や精神障害の動物モデルにおいてAMPAkineの有益な効果がみられることから、これらの領域の臨床試験が推進されています。カイニン酸受容体アンタゴニストは、疼痛、偏頭痛の動物およびヒトモデルにおいて良好な作用を示しています。

下の表に一般的なモジュレーターなど、詳細を紹介します。その他の製品一覧につきましては、後述の「関連製品」の項をご参照ください。

表1
表2

脚注

a) イオンチャネルファミリーはイオンチャネル型とも称されています

b) 選択性は低親和性 [3H]-カイニン酸の結合を阻害します

c) 非競合的アンタゴニスト

d) アロステリック増強物質

略語

AMPA:α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソオキサゾール-4-プロピオン酸
AP-5:2-アミノ-5-ホスホノペンタン酸
AP-7:2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸
ATPA:(RS)-2-アミノ-3-(3-ヒドロキシ-5-tert-ブチルイソオキサゾール-4-イル)プロパン酸
D-CCPene:D-3-(2-カルボキシピペラジン-4-イル)-プロピル-1-ホスホネン
CGP37849:D,L-(E)-2-アミノ-4-メチルホスホノ-3-ペンタン酸
CGS19755:4-ホスホノメチル-2-ピペリジンカルボン酸(セルフォテル)
CNQX:6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン
CNS 1102:N-(1-ナフチル)-N'-(3-エチルフェニル)-N'-メチル-グアニアインHCl
CP 101,606:(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロパノール
CPP:3-(2-カルボキシピペラジン-4-イル)-プロピル-1-ホスホン酸
CX-614:2H,3H,6aH-ピロリジノ[2",1"-3' ,2' ]1,3-オキサジノ[6', 5' ,-5,4]ベンゾ[e]1,4-ジオキサン-10-オン
DNQX:6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン
EAA-090:[2-(8,9-ジオキソ-2,6-ジアザビシクロ[5.2.0]ノン-1(7)-エン-2-イル)-エチル]ホスホン酸
GV 150526:3-[2-(フェニルアミノ)カルボニル]エテニル-4,6-ジクロロインドール-2-カルボン酸
GYKI 52466:1-(4-アミノフェニル)-4-メチル-7,8-メチレンジオキシ-5H-2,3-ベンゾジアゼピン
GYKI 53655:1-(4-アミノフェニル)-3-メチルカルバミル-4-メチル-7,8-メチレンジオキシ-3,4-ジヒドロ-5H-2,3-ベンゾジアゼピン
HA-966:1-ヒドロキシ-3-アミノピロリド-2-オン
L-689,560:(±)-4-(trans)-2-カルボキシ-5,7-ジクロロ-4-フェニルアミノカルボニルアミノ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン
L-701,324:7-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(3-フェノキシ)フェニル-2(H)-キノリノン
LY293558:(3S,-4aR,6R,8aR)-6-[2-([1Hテトラゾール-5-イル)エチル]デカヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
LY382884:3S,4aR,6S,8aR-6-((4-カルボキシフェニル)メチル-1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a-デカヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)
LY503430:(R)-4'-[1-フルオロ-1-メチル-2-(プロパン-2-スルホニルアミノ)-エチル]-ビフェニル-4-カルボン酸メチルアミド
MNQX:5,7-ジニトロ-1,4-ジヒドロ-2,3-キノキサリンジオン
NBQX:2,3-ジヒドロ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ(f)キノキサリン
NMDA:N-メチル-D-アスパラギン酸
NS 102:5-ニトロ-6,7,8,9-テトラヒドロベンゾ[G]インドール-2,3-ジオン-3-オキシム
NS3763:5-カルボキシル-2,4-ジベンズアミド安息香酸
Ro 25-6981:R-(R*,S*)-α-(4-ヒドロキシフェニル)-β-メチル-4-(フェニルメチル)-1-ピペリジンプロパノール
Ro 8-4304:4-{3-[4-(4-フルオロフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル]-2-ヒドロキシ-プロポキシ}-ベンズアミド
Ro 48-8587:9-(1H-イミダゾール-1-イル)-8-ニトロ-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]キナゾリン-2,5(3H,6H)-ジオン
SPD-502:8-メチル-5(4-(N,N-ジメチルスルファモイル)フェニル)6,7,8,9,-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-h]-イソキノリン-2,3-ジオン-3-O -(4-ヒドロキシブチレート-2-イル)オキシム
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関連製品
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