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改変EPA 1633を用いたろ過製品中のPFAS抽出物の分析

PFAS試験における汚染物質

EPA 1633では、廃水、地表水、地下水、土壌、バイオソリッド、堆積物、埋立地の浸出液、魚の組織など、粒子状物質を多く含むサンプル中の40種類のPFAS化合物を試験します。溶液中の粒子状物質は、サンプル分析、カラムの寿命、装置の機能全般に悪影響を及ぼす可能性があるため、LC-MS/MSの前に除去しなければなりません。EPA 1633では、水性、固体および組織サンプルの抽出・洗浄プロセス後に、シリンジフィルターを用いてろ過することを特に要求しています。

EPA Method 1633を指針として用いて、Millex®ポリエーテルスルホン(PES)およびナイロンシリンジフィルターMillipore®親水性ポリプロピレンフィルターメンブレンでは、検出可能なレベルのPFAS汚染がみられず、分析物の回収率が許容可能であることを実証しました。

改変EPA 1633を用いたメタノールサンプル使用時のMillex® PESおよびナイロンシリンジフィルターの試験

材料と方法

メタノール溶媒中のPFAS抽出物を検討するため、改変版のEPA 1633に従い、SGS North America(Orlando, FL location)と共同で、Millex®シリンジフィルターデバイスのPFAS汚染を試験しました。

EPA 1633では、粒子状物質を多く含むサンプル(水性、固体または組織)中の多数のPFAS化合物を検出する必要があるため、ろ過が必要です。しかし、EPA 1633では、サンプルの固体含有率に応じて、異なるサンプルの処理法や抽出法が要求されています。それにもかかわらず、すべてのサンプルについて、非抽出内部標準物質(NIS)添加や炭素除去の後、メタノール溶媒中で行われる、0.20 µmナイロンメンブレンを用いたろ過ステップが必要とされています。

方法の概要を以下のワークフローに示し、表1にLC-MS/MS条件を示します。簡単に述べると、EPA 1633に従い、5 mLのメタノールサンプルにC-13で標識した抽出内部標準物質(EIS)および非抽出内部標準物質(NIS)を化合物に応じて1.25~10 ppb添加しました。サンプルろ過媒体がPFAS汚染に関与するかどうかを確認するため、サンプル全体をフィルターに通しました。ろ液を回収し、C18カラムを用いてLC-MS/MSで分析しました。分析は内部標準を用いて行いました。試験したフィルターは以下のとおりです:2ロットのMillex® -GPシリンジフィルター(非滅菌、0.22 µm PESメンブレン付き33 mmフィルター、製品番号SLGP033N)、2ロットのMillex®ナイロンシリンジフィルター(非滅菌、0.20 µmナイロンメンブレン付き33 mmフィルター、製品番号SLGN033N)、2ロットのMillex®ナイロン-HPFシリンジフィルター(非滅菌、0.20 µmナイロンメンブレンおよびグラスファイバープレフィルター付き25 mmフィルター、製品番号SLGNM25)。

改変EPA 1633に使用した方法のワークフロー

サンプル調製

Image showing three green drops to indicate methanol and a chemical structure of a PFAS standard
5 mLのメタノールサンプルとEISとNISの混合物を混ぜる。

    ろ過

    Product photograph of a Millex syringe filter.
    Millex®シリンジフィルターまたはSwinnexフィルターホルダーに取り付けたカットディスクフィルターを用いてサンプルをろ過する。

      LC-MS/MS

      Cartoon showing a sample trace from HPLC analysis.
      LC-MS/MSで分析する。
        表1.本試験に用いたLCおよびMS/MS条件

        結果

        メタノール中で試験したすべてのレプリケートおよびロットについて、いずれの改変EPA 1633用のMillex®シリンジフィルターにも、40種類の化合物の報告限界値(RL)を超える検出可能なPFAS汚染物質は認められませんでした。ただし、パーフルオロアルキルカルボン酸類(PFCA)のカテゴリーで、Millex®ナイロン-HPFシリンジフィルターデバイスのロット1の最初のレプリケートデバイスに、RL未満ですが装置の最小検出限界(MDL)を超えるヒットが認められました(表2)。このため、追加で1個のレプリケートデバイスを試験したところ、このデバイスではRLまたはMDLを超えるPFCAは検出されませんでした。この材料について試験した他のデバイスまたはロットのいずれにも、PFCAや他の化合物のヒットは認められませんでした。メンブレン材料の選択に関しては、研究者は有機溶媒にばく露された後に生じる可能性のある化学的抽出物の濃度が適切かどうかを常に検討する必要があります。

        表2.改変EPA 1633に従った、LC-MS/MSを用いたMillex® PESおよびナイロンデバイスでろ過した後のPFAS汚染物質の検出
        a抽出内部標準物質(EIS)、合計5種類
        bロットあたり3つのレプリケートデバイスを試験、いずれのロットにもRLまたはMDLを超えるPFAS化合物は検出されなかった
        c3つのレプリケートデバイスを試験
        d最初のレプリケートデバイスでヒットが認められた後はロットごとに4つ目のデバイスを試験
        e結果は3つ目のレプリケートデバイスのみに認められ、4つ目のデバイスを含む他のデバイスは、すべてのPFAS化合物がNDであった。
        略語:RL = 報告限界値、MDL = 最小検出限界、ND = 検出されず

        これらの結果から、PESおよびナイロンMillex®シリンジフィルターは、PFAS化合物の分析のためのEPA 1633でのろ過において信頼性が高く、使用に適切であることが示唆されました。サンプルにプレろ過が必要な場合はナイロン-HPF Millex®ろ過デバイスを考慮すべきです。また、研究者はEPA 1633に必要な報告限界値を常に認識する必要があります。

        本試験では、化学的抽出物(表2に示したPFAS化合物以外)は検討しませんでした。可能な限り高いデータ品質を得るために、研究者は特定のメンブレン材料が有機溶媒にばく露された後に生じる可能性のある化学的抽出物の濃度を常に検討し、それらが許容可能なレベルであることを確認する必要があります。

        回収率

        メタノール溶媒におけるEPA Method 1633試験では、ナイロンベースのシリンジフィルターデバイスとPESベースのシリンジフィルターデバイスのろ液における回収率は同程度でした(図1)。これは、メタノールがPFAS分子をろ過媒体から解離させるのに有用であるという文献での報告を裏付けています。

        ナイロン、ナイロン-HPF、PES Millex®シリンジフィルターを用いたときのPFASの平均回収率を示す棒グラフ。すべての標準物質の許容可能なQC範囲は回収率20%~150%。

        図1.ナイロンMillex®シリンジフィルター(紫色、平均値±標準偏差[STDEV]、3ロットでn=9レプリケート)、ナイロン-HPF Millex®シリンジフィルター(青色のチェックパターン)、PES Millex®シリンジフィルター(緑色の斜線)でろ過した後のPFBS、PFBA、PFOA、PFOS、PFNAのC-13標識標準物質の平均回収率(平均値±STDEV、2ロットでn=6レプリケート)。内部標準物質の回収率の許容可能なQC範囲を各化合物について左側に垂直の黒の実線で示す。

        改変EPA 1633を用いたメタノールサンプル使用時のMillipore®ポリプロピレンメンブレンフィルターの試験

        シリンジフィルターデバイスは、使いやすく、小容量(10~100 mL)を処理できるため、PFASのLC-MS/MS分析用サンプルろ過にもっとも推奨され好まれる形式です。しかし、特定の用途に適した市販のシリンジフィルターがない場合など、シリンジフィルターがろ過の最適な選択肢ではないこともあります。このような場合、別の代替手段を検討する必要があります。Swinnexホルダーなどのシリンジフィルター様デバイスは、使用可能な代替品です。この圧力駆動型のデバイスは、特定の大きさ(直径13 mmまたは25 mm)のカットディスクメンブレンフィルターを取り付けることができ、通常のシリンジフィルターと同じように操作できるため、任意のメンブレン材料をシリンジフィルター形式に変換できます。

        ポリプロピレンは幅広い溶媒および温度に対応できる耐久性のある材料であり、抽出物が少ないため、PFAS関連サンプルおよび移動相の調製に特に適しています。ポリプロピレンの課題は、ポリプロピレンが本来疎水性であることから、水性試料のろ過が難しいことです。Millipore®ポリプロピレンメンブレンフィルター(製品番号PPTG04700および製品番号PPTH04700)などの市販されているほとんどのポリプロピレンディスクフィルターは疎水性です。メタノールなどの溶媒には適していますが、水性サンプルのろ過は難しいことがあります。少ない例ですが、親水性のポリプロピレンもあります(Millipore®親水性ポリプロピレンメンブレンフィルター、製品番号PPHG04700および製品番号PPHH04700)。これらのフィルターは、水性サンプルの処理に適しています。したがって、移動相ろ過などのさまざまなPFASワークフローにポリプロピレン材料を使用する可能性を認識し、これらのフィルターディスクが放出するPFAS抽出物の濃度を測定しました。

        材料と方法

        Swinnexフィルターホルダーアセンブリ

        孔径0.2 µmの親水性Millipore®ポリプロピレン(PP)メンブレンフィルターのPFAS抽出物含有量を試験しました。図2のように、Swinnexデバイス(直径25 mm)を用いて、ディスクメンブレンフィルターをルアーロックベースのシリンジフィルターデバイスに変換しました。組み立てると、Swinnexデバイスをろ過する物質を入れたルアーロックシリンジの筒に接続することができます。次に、他のシリンジフィルターデバイスと同様にろ過を行いました。ディスクレプリケートごとに新しく清潔なSwinnexデバイスを使用しました。

        Swinnex™フィルターデバイスの組み立てを示す連続的な写真。最初の写真。ピンセットを用いてガスケットとOリングを取り外しているところを示している。次の3枚の写真。ピンセットを用いてフィルターをデバイスに取り付けているところを示している。最後の2枚の写真。ガスケットを取り付けてフィルターホルダーを締めているところを示している。

        図2.Swinnexデバイスへのポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターの取り付け

        改変1633

        ロットあたり3枚のフィルターを使用して、3ロットの親水性0.2 µmポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターを試験しました。EPA 1633には、試験する粒子状物質を多く含むそれぞれのサンプルについて、少し異なる抽出および洗浄法が示されています。したがって、本試験では、非抽出内部標準物質(NIS)添加や炭素除去後にすべてのサンプルに必要とされる、メタノール溶媒中で行われるろ過ステップだけに焦点を当てました。試験したカットディスクメンブレンフィルターが、EPA 1633で概要が示されている40種類のPFAS化合物の汚染物質を含むかどうかに特に焦点を当てるために行いました。この改変法は上記のワークフローに示しています。

        それぞれのカットディスクメンブレンフィルターをSwinnexデバイスにしっかりと取り付けた後、EPA 1633に従い、C-13標識した抽出内部標準物質(EIS)および非抽出内部標準物質(NIS)を添加した5 mLのメタノールサンプルを各フィルターに通しました。ろ液を採取し、表1に示した条件でC18カラムを用いてLC-MS/MSを行い、内部標準により分析しました。ろ過はメタノール中で行ったため、プレウェッティングが必要なカットディスクメンブレンフィルターはありませんでした。

        結果

        Millex®シリンジフィルターデバイスの結果と同様、改変EPA 1633に従って試験したいずれの親水性ポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターにも、RL(0.2~5 ppb)またはMDL(0.05~1 ppb)を超える検出可能なPFAS汚染物質は認められませんでした(表3)。これは、これらの限界値ではこれらのメンブレンにPFAS抽出物が含まれず、サンプル調製にろ過を要するPFAS用途に使用できることを示しています。メタノール中でのEPA 1633用の内部標準物質の回収についてはいずれも問題が認められませんでした。このことは驚くべきことではありません。メルクの試験、およびナイロンメンブレンを用いた過去の試験1では、メタノール溶媒へのばく露により、PFAS化合物および内部標準物質の非特異的吸着が減少することが示されています。

        表3.改変EPA 1633を用いてメタノール溶媒中でSwinnexデバイス内の3種類のロットの親水性0.2 µmポリプロピレンディスクフィルターでろ過した後のメタノールサンプル中のPFAS汚染物質の検出。
        a抽出内部標準物質(EIS)、合計5種類
        bロットあたり3つのレプリケートデバイスを試験。そのため、データはn=3デバイスの平均±標準偏差である。いずれのデバイスにもRLまたはMDLを超えるPFAS化合物は検出されなかった。
        略語:RL = 報告限界値、MDL = 最小検出限界、PP = ポリプロピレン、philic = 親水性、phobic = 疎水性、ND = 検出されず

        回収率

        ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルスルホンメンブレン材料で認められているように、PFAS化合物の結合と保持には微妙な違いがあり、ろ液中の回収率が異なる結果となっています(図3)。0.2 µm親水性ポリプロピレンでろ過したメタノールサンプルの回収率は、0.20 µmナイロンおよび0.22 µmポリエーテルスルホンを用いた場合と同様です。まとめると、ポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターをSwinnexデバイスと組み合わせると、シリンジフィルター形式の代わりとなるサンプルろ過法として利用できることを示しています。移動相をろ過する必要があるPFAS法では、適切なフィルターホルダーと組み合わせたポリプロピレンメンブレンフィルターを使用できます。このワークフローの一環として、特定のPFAS化合物の回収率を慎重に検討する必要があります。

        ナイロンMillex<sup>®</sup>シリンジフィルター、PES Millex®シリンジフィルター、親水性ポリプロピレンMillipore®メンブレンフィルターを用いたときのPFAS分子の平均回収率を示す棒グラフ。

        図3.0.20 µmナイロンシリンジフィルター(紫色)、0.22 µm PESシリンジフィルター(青色のチェックパターン)、0.2 µm親水性ポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルター(緑色の斜線)のEPA 1633に従ったメタノール中の一部のC-13標識標準物質の平均回収率。すべての値は、3ロット、合計9ディスクの平均値±標準偏差である。

        水サンプルとメタノールサンプル

        シリンジフィルターデバイスを使用すると、水と比較して、メタノールをろ過するときにナイロンデバイスの回収率が高くなる傾向が認められました。これは公表された研究でも観察されています1。しかし、すべてのメンブレン材料について、水とメタノールを用いたろ過で同様な結果が認められるわけではありません。例えば、親水性ポリプロピレンは、メタノールと水の両方で、内部標準物質の許容QC範囲内で同様の回収率を示し、一部の例では(例えば短鎖PFCAおよびPFSA化合物)メタノールよりも水で高い回収率が認められました。これはPESやナイロン材料では認められない結果でした(図4)。

        ポリプロピレンMillipore®メンブレンフィルターを用いたときの水またはメタノール中でのPFAS分子の平均回収率を示す棒グラフ。

        図4.水およびメタノール中で親水性ポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターを使用したときのすべてのC-13標識標準物質の平均回収率。水については、値は平均値±標準偏差、試験した1ロットのn=3レプリケート。メタノールについては、値は平均値±標準偏差、3ロットについてそれぞれn=3レプリケート、合計9ディスク。

        改変EPA 1633用のフィルター

        本試験では、改変EPA 1633法を用いて、PESおよびナイロンシリンジフィルター、ならびにSwinnexデバイスに取り付けた親水性ポリプロピレンメンブレンが、PFAS化合物の分析において信頼性が高く使用に適していることが示されました。

        • これらのろ過デバイスのいずれにも、検出可能なPFAS化合物は認められませんでした。
        • これらのすべてのデバイスからのろ液の回収率は、同様なレベルでした。

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        参考文献

        1.
        So MK, Taniyasu S, Lam PKS, Zheng GJ, Giesy JP, Yamashita N. 2006. Alkaline Digestion and Solid Phase Extraction Method for Perfluorinated Compounds in Mussels and Oysters from South China and Japan. Arch Environ Contam Toxicol. 50(2):240-248. https://doi.org/10.1007/s00244-005-7058-x
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