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改変EPA 537.1を用いたろ過製品中のPFAS抽出物の分析

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PFAS試験における汚染物質

すべてのPFAS法に関する重要な考慮事項は、データの正確性に影響を及ぼしうる汚染を避けることです。汚染には、ろ過などのサンプル調製技術に由来するものも含まれます。現在、ほとんどのPFAS分析法は、飲料水などの「清浄な」サンプル用のものであり、多くの場合、サンプル調製の一環としてろ過を必要としません。しかし、SW-846 Method 8327、ASTM D7968、ASTM D7979、EPA 1633、ISO 21675などの方法では、廃水などの粒子状物質を多く含むサンプルを扱います。溶液中の粒子状物質は、サンプル分析カラムの寿命、装置の機能全般に悪影響を及ぼす可能性があるため、LC-MS/MSの前に除去しなければなりません。これらの方法では、シリンジフィルター形式のメンブレンを用いたろ過の必要性が認識されています。

改変EPA 537.1法を用いて、Millex®ポリエーテルスルホン(PES)およびナイロンシリンジフィルターおよびMillipore®ポリプロピレンメンブレンでは、フッ化抽出物に由来する検出可能なレベルのPFAS汚染がみられないことを実証しました。

改変EPA 537.1を用いた水サンプル使用時のMillex® PESおよびナイロンシリンジフィルターの試験

材料と方法

EPA Method 537.1に従って、3ロットのポリエーテルスルホン(PES)、3ロットのナイロン、2ロットのナイロン-HPF(高濃度粒子状物質ろ過用グラスファイバープレフィルター付きナイロンメンブレン)Millex®シリンジフィルターデバイスのPFAS抽出物の試験を行いました。次世代PFAS化合物やフルオロテロマースルホン酸塩など、本法に必要とされないPFAS化合物もいくつか含めました。EPA 537.1ではサンプルのろ過は必要とされていませんが、ろ過によりきれいなサンプルを得て、シリンジフィルターから抽出可能な汚染レベルを試験しました。

改変EPA 537.1法の概要を以下のワークフローに示し、表1にLC-MS/MS条件を示します。簡単に述べると、250 mLのPFASを含まないDI水サンプルに、代用物を添加しました。QCブランクとして、内部標準物質を0.08 ppb添加して使用しました。サンプルろ過媒体がPFAS汚染に関与するかどうかを確認するため、サンプル全体をフィルターおよびスチレンジビニルベンゼン(SDVB)SPEカートリッジに通しました。サンプルボトルとチューブを塩基性メタノールですすいで、フィルターとカートリッジに通しました。次にサンプル全体をSPEにかけ、メタノール:水、96:4(v/v) 1 mLに濃縮してから、C18カラムを用いたLC-MS/MS分析を行いました。分析は内部標準を用いて行いました。本試験ではC-13標識標準物質を使用しました。試験したフィルターは以下のとおりです:3ロットのMillex®-GPシリンジフィルター(非滅菌、Millipore Express PLUS PESメンブレン付き33 mmフィルター)孔径0.22 µm(カタログ番号SLGP033N)および0.45 µm(カタログ番号SLHP033N)、3ロットのMillex®ナイロンシリンジフィルター(非滅菌、ナイロンメンブレン付き33 mmフィルター)孔径0.20 µm(カタログ番号SLGN033N)、2ロットのMillex®ナイロン-HPFシリンジフィルター(非滅菌、ナイロンメンブレンおよびグラスファイバープレフィルター付き25 mmフィルター)孔径0.20 µm(カタログ番号SLGNM25)。

改変EPA 537.1に使用した方法のワークフロー:

ワークフロー

水を表す3つの青いしずくとPFAS標準品の化学構造。

サンプル調製

水サンプルを内部標準物質とともに添加。

    Millex®シリンジフィルターのイラスト。

    Millex®シリンジフィルターでサンプルをろ過。

      固相抽出カートリッジのイラスト。

      固相抽出(SPE)によりサンプルから分析物を抽出。

        ウォーターバスのイラスト。

        ウォーターバスで窒素を用いた蒸留により抽出物を濃縮。

          HPLC分析のサンプルトレースを示すイラスト。

          濃縮した抽出物をLC-MS/MSで分析。

            表1.本試験に用いたLCおよびMS/MS条件

            結果

            化合物に応じて非常に低い検出閾値(それぞれ0.0020~0.0080 ppbおよび0.0010~0.0020 ppb)を使用したにもかかわらず、改変EPA 537.1を用いて試験したいずれのMillex®デバイスにも、報告限界値(RL)または最小検出限界(MDL)を超える検出可能なPFAS汚染物質は認められませんでした(表2)。3種類のロットの0.22および0.45 µm PESメンブレン、3種類のロットの0.20 µmナイロンメンブレン、および2種類のロットの0.20 µmナイロン-HPFメンブレンの結果は同じでした。これらの結果から、PES、ナイロンおよびナイロン-HPF Millex®ろ過デバイスは、これらのPFAS化合物分析のための水サンプルのろ過において信頼性が高く、使用に適切であることが示唆されました。

            表2.改変EPA 537.1を用いたMillex® PESおよびナイロンデバイスでろ過後のPFAS汚染物質の検出

            回収率

            本試験では、サンプルチューブおよびサンプルボトルを塩基性メタノールですすぎました。C-13標識標準物質の回収率は、方法の許容可能なQC範囲内でした。しかし、回収率には、フィルター材料ごと(図1)および化合物ごとに差が認められました。例えば、ナイロンベースのフィルターデバイスの回収率はPESに比べて低値でした。ナイロンメンブレンの場合、添加した内部標準物質およびサンプルの非特異的吸着をメタノールすすぎにより低減させることができます。PESメンブレン単独(ハウジングなしで25 mm Swinnexフィルターホルダーデバイスを用いてろ過)を用いたときも、同様な結果が認められました。

            ナイロン、ナイロン-HPF、PES Millex®シリンジフィルターを用いたときのPFASの平均回収率を示す棒グラフ。PFBS、PFOA、PFOSおよびPFNAの許容可能なQC範囲は回収率50~150%。PFBAの許容可能なQC範囲は回収率35~85%。

            図1.ナイロン[紫色、平均値±標準偏差(STDEV)、3ロットでn=9レプリケート]、ナイロン-HPF(青色のチェックパターン、平均値±STDEV、2ロットでn=6レプリケート)、およびPES(緑色の斜線、平均値±STDEV、3ロットでn=9レプリケート)Millex®シリンジフィルターデバイスでろ過した後のPFBS、PFBA、PFOA、PFOSおよびPFNAのC-13標識標準物質の平均回収率。内部標準物質の回収率の許容可能なQC範囲を各化合物について左側に黒の実線で示す。

            改変EPA 537.1を用いた水サンプル使用時のMillipore®ポリプロピレンメンブレンフィルターの試験

            シリンジフィルターデバイスは、使いやすく、小容量(10~100 mL)を処理できるため、PFASのLC-MS/MS分析用サンプルろ過に最も推奨され好まれる形式です。しかし、特定の用途に適した市販のシリンジフィルターがない場合など、シリンジフィルターがろ過の最適な選択肢ではないこともあります。このような場合、別の代替手段を検討する必要があります。Swinnexホルダーなどのシリンジフィルター様デバイスは、使用可能な代替品です。この圧力駆動型のデバイスは、特定の大きさ(直径13 mmまたは25 mm)のカットディスクメンブレンフィルターを取り付けることができ、通常のシリンジフィルターと同じように操作できるため、任意のメンブレン材料をシリンジフィルター形式に変換できます。

            ASTM D7979(飲料水を除く水サンプル中のPFAS検出)およびASTM D7968(環境固体中のPFAS検出)では、サンプルの調製およびろ過にポリプロピレンを使用することが推奨されています。ポリプロピレンは幅広い溶媒および温度に対応できる耐久性のある材料であり、抽出物が少ないため、PFAS関連サンプルおよび移動相の調製に特に適しています。ポリプロピレンの課題は、ポリプロピレンが本来疎水性であることから、水性試料のろ過が難しいことです。Millipore®ポリプロピレンメンブレンフィルター(カタログ番号PPTG04700およびカタログ番号PPTH04700)などの市販されているほとんどのポリプロピレンディスクフィルターは疎水性です。メタノールなどの溶媒には適していますが、水性サンプルのろ過は難しいことがあります。少ない例ですが、親水性のポリプロピレンもあります(Millipore®親水性ポリプロピレンメンブレンフィルター、カタログ番号PPHG04700およびカタログ番号PPHH04700)。これらのフィルターは、水性サンプルの処理に適しています。したがって、移動相ろ過などのさまざまなPFASワークフローにポリプロピレン材料を使用する可能性を認識し、これらのフィルターディスクが放出するPFAS抽出物の濃度を測定しました。

            材料と方法

            Swinnexフィルターホルダーアセンブリ

            孔径0.2 µmおよび0.45 µmの親水性および疎水性Millipore®ポリプロピレン(PP)メンブレンフィルターのPFAS抽出物含有量を試験しました。図2のように、Swinnexデバイス(直径25 mm)を用いて、さまざまなディスクメンブレンフィルターをルアーロックベースのシリンジフィルターデバイスに変換しました。組み立てると、Swinnexデバイスをろ過する物質を入れたルアーロックシリンジの筒に接続することができます。次に、他のシリンジフィルターデバイスと同様にろ過を行いました。ディスクレプリケートごとに新しく清潔なSwinnexデバイスを使用しました。

            人の手でピンセットを使ってSwinnex™デバイスにO-リングを取り付けている写真。

            図2A.O-リングの取り付け

            人の手でピンセットを使ってカットディスクフィルターを扱っている写真。

            図2B.フィルターの取り扱い

            人の手でピンセットを使ってカットディスクフィルターを取り付けている写真。

            図2C.フィルターの取り付け

            人の手でガスケットを締め付けている写真。

            図2D.ガスケット締め付け

            完全に組み立てが終わったSwinnex™フィルターデバイスの写真。

            図2E.組み立てたSwinnexフィルターホルダー

            改変EPA 537.1

            試験のこのパートでは、4種類の25 mmカットディスクメンブレンフィルターを試験しました。

            • 0.2 µm疎水性PP(カタログ番号PPTG02500
            • 0.45 µm疎水性PP(カタログ番号PPTH02500
            • 0.2 µm親水性PP(カタログ番号PPHG02500
            • 0.45 µm親水性PP(カタログ番号PPHH02500

            それぞれのカットディスクメンブレンフィルターをSwinnexデバイスにしっかりと取り付けた後、飲料水サンプル用EPA 537.1をガイドラインとして用いて、代用物を添加した250 mLの水サンプルを各フィルターおよびスチレンジビニルベンゼン(SDVB)SPEカートリッジに通しました。前述のワークフローに概要を示した手順に従い、サンプル全体をSPEにかけ、濃縮しました。表1の条件に従ってC18カラムを用いたLC-MS/MSを行い、内部標準を用いて分析して、PPカットディスクメンブレンフィルターにどの程度の抽出物が存在するかを評価しました。それぞれのメンブレンタイプにつき1ロット(各ロットn=3フィルター)を試験しました。

            重要な点として、疎水性PPカットディスクメンブレンフィルターに純水を通すことは困難です。そのため、これらのサンプルへの水の流れを改善するために、250 mLの水をろ過する前に、カットディスクメンブレンフィルターをメタノールで事前に浸潤させました。親水性PPカットディスクメンブレンフィルターは事前に浸潤させる必要はありません。

            結果

            Millex®シリンジフィルターデバイスの結果と同様、改変EPA 537.1に従って試験したいずれのポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターにも、RL(0.0020~0.0080 ppb)またはMDL(0.0010~0.0020 ppb)を超える検出可能なPFAS汚染物質は認められませんでした(表3)。これは、これらの限界値ではこれらのメンブレンにPFAS抽出物が含まれず、サンプル調製にろ過を要するPFAS用途に使用できることを示しています。

            しかし、疎水性ポリプロピレンメンブレンのみでは、4つの化合物[perfluoro-n-dodecanoic acid(PFDoDA)、perfluoro-n-tridecanoic acid(PFTrDA)、perfluoro-n-tetradecanoic acid(PFTeDA)およびN-ethyl perfluorooctanesulfonamidoacetic acid(N-EtFOSAA)]について、検出可能なPFAS化合物はありませんでしたが、関連する13C2-PFDoA、13C2-PFTeDAおよびD5-NEtFOSAAの標準物質の回収率が、管理基準値であるそれぞれ40~140%、30~130%、および40~140%の範囲外でした。これらの化合物の平均回収率は約15~25%(PFDoDA、PFTrDA、PFTeDA)および30~33%(N-EtFOSAA)でした。これは、これらの化合物の疎水性ポリプロピレンへの非特異的吸着が、水中では顕著であることを示しています。これらの化合物の長い鎖長およびかさ高い官能基を考慮すると、ろ過媒体およびその他の消耗品と疎水性および立体的相互作用が生じている可能性があります。興味深いことに、親水性ポリプロピレンの回収率はすべての化合物で管理基準範囲内でした。このことから、メンブレン材料の親水化により、PFAS標準物質との非特異的相互作用が減少したことが示されました。

            表3.改変EPA 537.1を用いたSwinnexデバイスに取り付けた疎水性0.2 µmおよび0.45 µmポリプロピレンディスクフィルターならびに親水性0.2 µmおよび0.45 µmポリプロピレンディスクフィルターでのろ過後の水中のPFAS汚染物質の検出

            回収率

            疎水性と親水性ポリプロピレンメンブレンの比較

            水サンプル中では、試験した親水性ポリプロピレンメンブレンの内部標準の回収率はQC範囲内でしたが、疎水性メンブレンはそうではありませんでした(図3)。13C2-PFDoDA、13C2-PFTeDAおよびD5-EtFOSAAの回収率は、疎水性ポリプロピレンでは一貫してQC範囲外だったため、これらの化合物についてPFAS含有量を定量することは困難でした。PFDoDA、PFTeDAおよびPFTrDAが長鎖PFCA分子であることを考慮すると、認められたロスは、立体障害およびメンブレン材料またはSwinnexハウジング材料との疎水性相互作用による可能性があります。

            親水性および疎水性ポリプロピレンMillipore®メンブレンフィルターを用いたときのPFAS分子の平均回収率を示す棒グラフ。

            図3.パーフルオロアルキルカルボン酸クラスのPFASのみを対象とした、水中で親水性および疎水性ポリプロピレンカットディスクメンブレンフィルターを使用したときのC-13標識標準物質の平均回収率。値は平均値±標準偏差、n=3レプリケート。標準物質のQC範囲は化合物によって異なる。左から右へ、35~135%(13C4-PFBA)、50~150%(13C5-PFPeAから13C6-PFDA)、40~140%(13C2-PFDoDA)、30~130%(13C2-PFTeDA)。

            全般的に、親水性ポリプロピレンおよび疎水性ポリプロピレンカットディスクメンブレン材料に、PFAS汚染は認められませんでした。

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