抗HAアフィニティーマトリックスプロトコル
濃縮した溶出液
タンパク質溶出液を濃縮するには、添付文書(製品番号11815016001)のステップ2~5に記載されている免疫沈降(IP)プロトコルに従います。マイクロチューブに再懸濁した抗HAアフィニティーマトリックス50 μLを用意します。アフィニティー精製プロトコルの記載どおりに洗浄・溶出バッファーを使用します。3回洗浄(IPプロトコルのステップ5)の後、溶出のため、マトリックスを溶出バッファー 50 μLで+37℃、15分インキュベートします。
注記:溶出は低温でも実施可能ですが、精製タンパク質の収量は減少します。遠心分離し上清を回収します。さらに2回、溶出ステップを繰り返します。タンパク質は溶出バッファー150 μL中に集められます。50 μLで2回溶出すれば、タンパク質は十分回収できます。
溶解物のプレ洗浄
製品開発中におこなった検討では、溶解物のプレ洗浄は、哺乳類・細菌・酵母の免疫沈降では特に目立った効果はありませんでした。未確認ではありますが、架橋アガロースであれば、どのタイプでもプレ洗浄に使用できると考えられます。
トラブルシューティング
HAタグ付きタンパク質がほとんど、もしくはまったく溶出されてこない
- タグ付きタンパク質が分解されている。
→ プロテアーゼ阻害剤を添加し、+2~+8℃で精製を行います。
- タグ付きタンパク質が十分に溶出されてこない。
→ +37℃未満で精製している場合、溶出温度を上げたり、時間を延長したり、また溶出回数を増やしてみたりします。マトリックスとペプチド溶液のバッチ混合を試してみます。
- タグ付きタンパク質が発現していない。
→ウェスタンブロットまたは生化学的アッセイにより、粗抽出液中に発現タンパク質が含まれているかチェックします。
- タグ付きタンパク質の発現量が少ない。
→より多くの抽出液を使用してください。抽出液をカラムに数回通し、素通り分はプールしておきます。最終溶出液を濃縮します。
素通りサンプル中に、大量のタグ付きタンパク質が残っている
- カラムの結合能力以上のサンプルを添加している。
→タンパク抽出液の添加量を減らします。
- カラムが使用後に再生されていない。
→カラムを再生します。
カラムが流れない
- カラムへのサンプル添加量が多すぎる。
→タンパク抽出液の添加量を減らします。
- カラムに添加する抽出液に不溶性物質が含まれている。
→高速遠心分離またはろ過により、抽出液を事前に除去します。
- ニードル内に気泡がある。
→ニードルを交換する、または、手袋をした手でカラムの上部を軽く覆うことによりカラムに軽く加圧します。
タグ付きタンパク質が分解していると思われる(ウェスタンブロッティングでスメアまたは複数の低分子量バンドが認められる)
- 作業中のプロテアーゼ活性
→タンパク質抽出液中のプロテアーゼ阻害剤を増やします。すべてのステップを低温で行います。
銀染色でタグ付きタンパク質のバンドが複数認められる
- カラムへのサンプル添加量が多すぎる。
→タンパク抽出液の添加量を減らします。
- 洗浄ステップが不十分である。
→洗浄バッファーに界面活性剤を添加します。
ゲルに大量のタンパク質をロードした時に認められる、ウェスタンブロットの非特異的反応
- ゲルにロードしたタンパク質が多すぎる。
→各レーンにロードする総タンパク質量を減らす。抗HA高アフィニティー抗体は、ウェスタンブロットでピコグラム量のタグ付きタンパク質を検出できるため、他の抗体と比べてタンパク質の添加量が少なくてすみます。
- 抗ラット二次抗体に由来する交差反応
→抗HAペルオキシダーゼ、高アフィニティーまたは抗HA-ビオチン、高アフィニティーを用いて検出します。抗ラット二次抗体を使用する場合、二次抗体のみを用いてコントロール実験をおこなうことにより、二次抗体由来の交差反応が生じないか慎重にチェックします。
ウェスタンブロットにおける検出能の低下
- 不適切な検出システム(例えば、検出に抗マウス二次抗体を使用)
→適切な検出システムを選択します。
イオン強度の影響(0.4 M塩)
抗体とマトリックスは共有結合しているため、0.4 M塩による影響はありません。また抗体-エピトープ結合についても、これらの塩条件で妨げられることは私たちの経験ではありませんが、タグ付きタンパク質の種類によっては影響を受けるかもしれません。サンプル中にタグ付きタンパク質が存在すれば、免疫沈降はこれらの塩条件下でも可能です。
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