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ホームメルクについてストーリー何層も積み重ねて作る錠剤

何層も積み重ねて作る錠剤

3Dプリンターにより、製薬企業は同じ錠剤を数十億個製造するのではなく、パーソナライズされた錠剤を製造できるようになります。この分野で活躍する科学者を紹介します。

安全メガネをかけ白衣を着て3Dレーザープリンターの横に立つThomas Kipping。

2024年2月2日(所要時間:5分) 

ほとんどの子どもは、両親が職場で何をしているのか知りません。しかし、Thomas Kippingの仕事は大多数の親のようなものではありません。彼は、少なくとも時々、レーザーを使用して錠剤を作っています。  

彼の8歳の息子Léopolにとって、レーザーをお気に入りの映画で見たライトセーバー以外に使用できるという発想は驚きです。大半の大人たちにとっても、レーザーで製剤を製造するという発想は遠い未来のことに思えます。しかし、この発想はあなたが考えているよりも現実味があります。  

ライトセーバーを模して懐中電灯を持つLéopol。

自宅で自分の「レーザー」を披露するLéopol。

レーザーは、3Dプリンティングで使用するいくつかの技術の1つに過ぎません。それは積層造形とも呼ばれ、研究者は、比較的小規模なスケールで医薬品を製造するために使用しています。Kippingは、同僚と協力して、既存の技術を最適化し、新たな技術に磨きをかけることを目指しています。

より小規模な医薬品を効果的に製造する方法を見つけ出すことは、精密医療分野を前進させるための物流上の大きな課題になっています。精密医療には、患者特有のニーズに基づいて患者のために個別の治療計画を立てることも含まれます。そのためには、患者ごとに医薬品を調整し、より小規模で製造する必要があります。 

時には、古きものを捨てる

従来の医薬品製造は、「バッチ処理」として知られており、数十億個の錠剤が製造されるまでに数週間または数か月かかることがよくあります。そのために、大規模なインフラ、投資、広大な敷地が必要となります。基本的に、大型機械で粉末状の原材料を圧縮して固形の錠剤にします。 

これは、一定の消費者需要があり、投与量の範囲が比較的広いイブプロフェンのような特定の医薬品には最適な方法です。成人は1.15錠ではなく、1錠または2錠を服用します。この従来の製造設定では、特定の投与量要件を調整することは難しく、時間がかかります。 

また、従来の方法を用いて少量の医薬品を製造することも困難です。臨床試験用に数百個の錠剤を製造したり、特定の患者用に数十個の錠剤を製造したりするのは、費用がかかり、非効率です。これらが、バイオ医薬品製造業者が異なる医薬品製造方法を模索している2つの主な理由です。3Dプリンティングが登場します。

1987年に登場した3Dプリンティングは、すでに多くの産業で幅広く使用されており、食品分野からプラスチックに至るまで、3Dプリントされたものは私たちの身の回りにあふれています。米国食品医薬品局によって承認された最初の医薬品は2015年に3Dプリントで製造されたものですが、少なくとも現時点ではそれに続く医薬品はまだありません。2015年に活用された技術は、当初、非常に特殊な用途のために設計されたものであったため、他の医薬品にその技術を拡大するのに時間がかかりました。

Kippingと彼の同僚は、 さまざまな3Dプリンティングのコンセプトを検討しています。彼らは、今後さらに多くの承認が得られると予見しています。

近未来の薬局

溶融抽出法として知られる3Dプリンティングの1つの方法では、現在、臨床試験中の医薬品がいくつかあります。高温で有効成分を薬剤の送達と吸収を促進する他の添加物と混合します。「不活性」成分(賦形剤と呼ばれる)を適切に配合することが重要です。そうでなければ、有効成分は吸収されず、文字通りトイレに流れてしまいます。

賦形剤の最適化は、Kippingの研究において重要な項目です。この製造方法は従来の方法とは異なるため、顧客別に、賦形剤と製造ノウハウの独自の組み合わせが必要になります。Kippingと彼のチームは、その作成をサポートしています。

例えば、溶融押出プロセスは、レーザーを含む他の方法と比べて、工業環境外への輸送が非常に容易です。薬局でパーソナライズされた医薬品のデリバリーを可能にするため、Kippingのチームはバーリ大学のチームと密接に連携しています。彼らは、地元の薬局や病院の薬局で利用しやすくする直接押出プリンティング技術を評価しています。 

このような理由で、Kippingらは近いうちに大規模な製造施設外でも医薬品製造が始まるだろうと楽観視しています。医薬品製造が患者の身近になることは、パーソナライズされた医薬品を実現に近づける新たな進歩となります。 

一緒に装置を操作するThomas KippingとFlorian Hess。安全メガネをかけてコントロールパネルを見る2人。

溶解テスターを用いて薬剤放出時に錠剤が体内でどのように作用するかを調べるThomas Kipping(左)とFlorian Hess(右)。

レーザーを用いた3Dプリンティング

レーザーを用いた3Dプリンティング(Kippingの息子が大いに喜んだ方法)は、また別の方法です。ウプサラ大学とユトレヒト大学の研究グループと密接に協力して、チームはレーザーで錠剤を3Dプリントする際の複雑さをより深く理解しようと取り組んでいます。 

基本的に、有効成分とさまざまなポリマーを含む薄い粉末の層が、粉末床を形成します。次に、レーザーで粉末をまとめて均一に融解します。新たな粉末層が入ってくると、レーザーが再び融解します。3Dフォームが形成されるまで、このプロセスを繰り返します。それは、骨の折れる遅いプロセスのように聞こえますが、光速で行われます。 

「レーザーはプリントベッドを超高速で移動します」とKippingは言います。 

レーザーを用いたプリンティングは、かなり多孔性の錠剤、つまり全体に小さな孔のある錠剤を作れます。水が隅々まで浸透するため、患者が錠剤を飲み込むとすぐに錠剤が溶けます。そのため、飲み込んだらすぐに放出される必要がある医薬品にとって、レーザーを用いたプリンティングは魅力的な方法です。

「私たちは、レーザーを用いたプリンティングには大きな可能性があると思っています。そのため、私たちは初期段階から取り組んでいるのです」と、Kippingは語ります。研究者たちは、レーザーを用いたプリンティングを医薬品製造業者のツールキットに導入しようと懸命に取り組んでいます。

Kippingやその分野の研究者は、可能性と妥当性の限界まで来ています。彼の息子は、パーソナライズされた医薬品やヘルスケアの将来への影響にまだ興味がありません。彼は、まだレーザーに最も興味があります。


提供サービスについて

医薬品製剤開発において、溶解性の低さは依然として大きな課題です。低分子化合物については画一的な解決策はありませんが、私たちのチームは、溶解性を向上させるために、 3Dプリンティングなどの技術に磨きをかけ、新たな製剤の開発に取り組んでいます。アプリケーションサービスは、革新的なParteck®賦形剤ポートフォリオを使用した製剤設計の簡素化など、お客様のさまざまな課題をサポートします。  

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