電気化学用途向けイオン液体
過去10年で、イオン液体は電気化学的用途での非水電解質としての利用に関して大きな関心を集めてきました。このため、電導度が電気化学的安定性とともに最も重要な物理特性となっています。蒸気圧の低さおよび不燃性などの興味深い特性はほかにもあり、数々の文献ですでに紹介され検討されているように、イオン性液体は多くの興味深い用途に関して理想的な電解質であると考えられます1。
電導度
すでに触れたように、きわめて興味深い特性のひとつが電導度です。一般的な値は、1.0~10.0 mS/cm程度です。最近では、イミダゾリウムカチオンを利用した電導度が20 mS/cmを超える興味深い材料、1-ethyl-3-methylimidazolium thiocyanate(07424)および 1-ethyl-3-methylimidazolium dicyanamide(00796)が報告されています。
もちろん、塩化ナトリウムのような一般的な無機塩類の水溶液はより高い電導度を示します。しかし、食塩水に関して他の特性をイオン液体と比較すると、水性電解質は液体の温度帯が狭く、溶媒である水が揮発性であるという大きな短所が見えてきます。
電気化学的安定性
イオン液体には、広い電気化学窓というもうひとつの極めて重要な特性があります。これは酸化還元プロセスに対する電気化学的安定性の尺度として知られています。
電気化学窓は不純物に大きく左右されます。ハロゲン化合物は分子アニオン(bis(trifluoromethylsulfonyl)imideをはじめとする安定な含フッ素アニオンなど)と比較して、はるかに容易に酸化されます。このとき負電荷は広範囲に非局在化します。その結果、電気化学的安定性はハロゲン化合物の混入によって大きく損なわれます。
カチオン安定性
アニオン安定性
代表的なイオン液体の電導度と電位窓 |
---|
用途
a)高電導性イオン液体
最も高い電導度を持つ1-ethyl-3-methylimidazolium thiocyanateおよびdicyanamideは、電気化学的安定性があまり高くありません。その一方で、熱安定性および不揮発性とともに高電導度が求められるような用途に適しており、色素増感太陽電池に用いられる1-dodecyl-3-methylimidazolium iodide(18289)はその例です2。
b)高い安定性
電導度が比較的低い一方で電気化学的に極めて安定な材料に、N-butyl-N-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide(900873)、triethylsulphonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide(08748)、およびN-methyl-N-trioctylammonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide(00797、724432)があります。いずれのイオン液体も、バッテリー3、燃料電池4、金属析出5、ナノ粒子の電気化学的合成6での使用に適した電解質です。
c)複合的特性
電導度および電気化学的安定性がともに要求される用途(スーパーキャパシタ7やセンサ8など)には、安定性のあるアニオン(テトラフルオロホウ酸やトリフルオロメチルスルホン酸など)をもつイミダゾリウム塩のイオン性液体が材料として適しています。
参考文献
続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。
アカウントをお持ちではありませんか?