エピジェネティクスとは、変異に基づくものではないが、世代から世代へと継承される可能性がある変化を表す造語です。DNA配列を変化させることなく活性化または抑制される遺伝子は、エピジェネティックな制御を受けています。エピジェネティックな修飾は安定していますが、潜在的に可逆的な遺伝子発現の変化であり、DNA配列の永続的な変化なしに発生します。
エピジェネティックプロセスは多数のタイプが同定されています-それらには、ヒストンのメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化およびSUMO化、ならびにDNAメチル化があります。このような修飾は環境条件によって変化します。近年、研究者らはこのような変化が遺伝子発現と表現型を変化させることを明らかにしました(1-3)。既存の技術での試験が極めて容易であるという理由もあり、最もよく知られているエピジェネティックプロセスは、DNAのメチル化です。これは、メチル基(CH3)の付加または除去であり、大部分はシトシン塩基が連続して存在する場所で起こります。現在のエピジェネティック調節のモデルは、完全にアセチル化された1組のヒストンの周りにDNAが巻き付いている状態から始まります。これは、活性化され、完全に転写された遺伝子であることを示します。転写抑制は、プロモーター付近において、隣接するヒストンタンパク質のリジン残基が脱アセチル化されることによって開始できます。次に、そのリジンはリジン1つにつき最大3回メチル化され、各メチル化で遺伝子停止が固定されます。最後に、その遺伝子内のシトシンは、5’位の炭素でメチル化できます。このようなアセチル化からDNAメチル化までの一連の各修飾は、遺伝子を圧縮して密集させて、転写できないクロマチンにします。
調節機能の疾患としてしばしば説明されるがんは、低メチル化(メチル化不足)DNAを有していることが知られています(5)。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とDNAメチル化酵素阻害剤は現在、がん治療に使用されています(6)。精神疾患(7)および薬物依存(8)についても、その他のエピジェネティックターゲットが特定されています。最近の興味深い研究(4)では、双子においてDNAメチル化と年齢(および環境の違い)の間に相関があることが示されました。この他に、新たなヒストン修飾酵素とその効果を報告するエピジェネティック関連の論文が次々に発表されています(9, 10)。エピジェネティクスは最近の研究で非常に活発なテーマです。
遺伝子にメチル化されたDNAが含まれているかどうかを明らかにするために、よく使用されるいくつかの方法があります。すべてのメチル化はシトシン部位で発生するため、研究者はバイサルファイト処理を利用しています。バイサルファイト処理ではメチル化されたシトシン(meC)は安定ですが、メチル化されていないシトシンはウラシルに変換されます。MOD50キットとして販売されているバイサルファイト処理により、メチル化されていない遺伝子をウラシルを含む状態に変化させます。次に、これらの処理された遺伝子のシーケンシングを行って、元のサンプルのメチル化の状態を明らかにします。このプロセスは、バイサルファイトシーケンスと呼ばれています。このキットは、CをUに変化させ、異なるアニーリングを行うプライマーを使用するメチル化特異的PCRを実施するためにも使用できます。MOD50は、発売された当時、最も迅速かつ高感度のキットでした。
ゲノムの全体的なメチル化の程度は、全体的な遺伝子調節変化の有益な指標になります。このパラメーターの評価は、通常、単一塩基まで完全に消化して、HPLCまたは質量分析機器を使用してから、実施します。MDQ1キットを使用すれば、研究者はサンドイッチ型ELISAと同様のフォーマットを用いてDNAメチル化をモニタリングできます。これは、生物学研究者にとって使いやすいフォーマットになっており、生物学研究の科学者に包括的なメチル化シトシン(meC)定量への道を開いたキットです。
もう一つの重要なエピジェネティックプロセスは、クロマチン修飾です。クロマチンは、タンパク質(ヒストン)とDNAの複合体であり、それらは固く束ねられて核に納められています。ヒストン修飾はクロマチン構造を変化させるため、エピジェネティック調節の初期指標となります。この現象を研究する1つの方法は、クロマチン免疫沈降(ChIP)を利用するものです。この手法は細胞から開始します。架橋剤を使用して化学的にDNAにクロスリンクを施すと、DNAは相互作用するタンパク質と結合します。得られたDNAを分離して断片化し、タンパク質特異的抗体(アセチル化ヒストンなど)を用いてバルクから沈殿させます。架橋を反転または破壊すると、ターゲットタンパク質と相互に作用する配列について濃縮された沈殿DNAが得られ、その沈澱を調べて、どのような配列が存在するかを明らかにします。数種類の遺伝子を検討する場合には、PCRを用いて検出できます。もしくはマイクロアレイ(ChIP-chip)または並列(ディープ)シーケンス(ChIP-seq)を使用して検出することもできます。CHP1キットは、ヒストン修飾をターゲットとし、プレートフォーマットを使用するキットです。 ヒストン修飾について複数のサンプルをスクリーニングしたい研究者は、このようなキットにより、理想的なハイスループットシステムを実現できます。
免疫沈降法ではマイクロアレイ解析に必要な最大1 ugのDNAを供給できないため、ChIP-chipでは濃縮DNAサンプルの増幅が必要です。GenomePlex Whole Genome Amplificationキット(WGA2、WGA4)は、ChIP DNA増幅に非常に成功しており、断片化したDNAサンプルからより多くの増幅物を得るための方法として選ばれています。
これらのキットはエピジェネティクスを研究するために重要ですが、抗体もこのような研究分野にとって同様に重要な側面です。ChIPは、ヒストン修飾に対する特異的抗体なくしては達成できません。さらに、架橋されると抗原エピトープがブロックされたり、変化を受けたりする可能性があるため、すべての抗体がChIPで機能するわけではありません。私たちは検証済み抗体のラインナップを増やし、常に改善に取り組んでいます。
参考文献
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