地下水・表層水中のリン酸塩:光度測定Spectroquant®試験を使用した迅速で信頼性の高い定量方法
Katrin Schwind
1 Scientist Associate, Analytical Point-of-Use R&D, Gunter Decker, Senior Global Product Manager, Analytical Point-of-Use Analytics | Photometry, 2
表層水中のリン酸塩
リンは有機体や植物にとって必須の元素です1。汚染されていない自然水では、有機的に結合したリン酸塩、凝縮したリン酸塩、またはオルトリン酸塩として存在し、多くの場合にその化学式からPO4-Pと呼ばれます。自然水に存在する少量のリンは植物の成長を促しません。しかし、リン濃度が上昇すると藻の増殖をもたらし、水域の富栄養化をもたらします。2、3
20世紀半ばに、リン酸塩による水域の人為的汚染が、とりわけ肥料、廃水、および洗浄用洗剤による広範な富栄養化をもたらしました。洗剤へのリン酸塩の使用中止や廃水処理施設でのリン酸塩の沈殿処理によりリン酸塩濃度を下げるための対策が講じられ、
これによりリン酸塩の環境負荷が約75%減少しました。2、4
その代表例がコンスタンツ湖(ドイツ、ボーデン湖)の事例です。1970年代の終わりには、湖水中のPO4-P濃度は84 μg/Lでしたが、今日この主要な水域はわずか5~6 μg/LのPO4-Pレベルを示しています。5、6
表層水中リン酸塩の分析
このような低濃度のPO4-Pの分析は困難です。
DIN EN ISO 10304-1によれば、イオンクロマトグラフィー法での測定の低濃度範囲は33 μg/LのPO4-P(100 μg/LのPO4に相当)であり、これは通常表層水中に存在するリン酸塩濃度よりもかなり高い値です。測光法は高感度の測定を可能にします。DIN EN ISO 6878によると、面倒な抽出操作を行わない場合、水中のリンの測光定量のための下限測定値は5 μg/L PO4-Pです。8
Spectroquant®リン酸塩試験とDIN EN ISO 6878に準拠した測光測定法の比較
いずれの方法も同じ原理に基づいています。オルトリン酸イオンは硫酸溶液中でモリブデン酸イオンおよびアンチモンイオンと反応してモリブダトリン酸を生成します。これがアスコルビン酸で還元されてホスホモリブデンブルー(PMB)が形成されます。そして測光法で測定します。9標準法と比較した場合、検量線が予めプログラムされたSpectroquant®テストキットによりもたらされる利点はその使いやすさです。DIN EN ISO 6878の方法に従って測定を行う場合は、試薬を別に用意する必要があります。つまり、検量線作成のために準備しなければならない標準溶液以外の、少なくとも5つの溶液の準備が必要です。8
Spectroquant®テストキットには、分析に必要な試薬がすぐに使える状態で同梱されています。100 mmセル内のリン酸塩を高感度で測定するために必要な手順は、2つの試薬を添加することだけです。20 mLの試料容量に、20滴の試薬PO4-1および薬さじ(試薬ボトル付属のマイクロスプーン)4杯の試薬PO4-2を加えるだけです。5分の反応時間の後、試料の色強度を光度計で測定し、リン酸の濃度を光度計ディスプレイから直接読み取ることができます。詳しい手順は、Spectroquant®リン酸塩テスト(製品番号:114848)の製品Webサイトからオンラインで入手可能な「地下水および地表水中のオルトリン酸塩の高感度測定」のアプリケーションの説明に記載されています。10
表層水中のリン酸塩濃度を測定するためのSpectroquant®テストキットの適合性を表現する記述を得るために、このテストキットを使用して6つの試料のPO4-P含有量を調べました。比較のために、DIN EN ISO 6878法による参照分析も行いました。DIN法の検出限界
0.003 mg/L PO4-Pは、DINに従って決定しました。
2つの方法はほぼ同等の結果を示しています。6つの試料のうち4つでは、PO4-P濃度が測定範囲を下回っていました。6つの試料のうち2つだけが、範囲内の測定値でした。ブロムバッハ湖の試料では、検出された濃度は0.0031 mg/L PO4-Pだけ異なりました。アルトミュール湖の試料では、Spectroquant®の結果とDIN法の結果の間の偏差は0.0004 mg/L PO4-Pでした。DIN EN ISO法に関する回収率は97%でした。
参照分析法に加えて、標準添加法を用いて試料を測定しました。この調査では、5つの湖水試料と1つの貯水池試料に4つの異なる濃度のPO4-Pを添加し、各試料の回収率を求めました。図1にこの調査の結果を示します。
図1.標準添加後に回収されたオルトリン酸塩濃度
添加した標準濃度はすべての試料で回収することができました。平均回収率は105%±5%でした。
さらに精度を向上させる必要がある場合は、目的の測定範囲に対してユーザーキャリブレーションを実行することが可能です。これは、測定範囲
0.0025~0.0250 mg/L PO4-Pに対して記録した10点の検量線によって示されます。プロットしたグラフを図2に示します。
図2.測定範囲0.0025~0.0250 mg/L PO4-Pの検量線
この方法は良好な直線性を示しています。予めプログラムされた方法と比較して、性能特性はかなり改善され得ます:方法標準偏差±0.0001 mg/L、方法変動係数±0.88%、信頼区間±0.0003 mg/Lを達成しました(表2)。
まとめ
Spectroquant®リン酸塩テスト(製品番号: 1.14848)は、地下水および表層水中のオルトリン酸塩を定量するための標準的な方法に代わる、迅速で安価な、そして正確な方法です。結果は、DIN EN ISO 6878標準方法を用いて得られたものと同等です。標準添加法を使用することによって、テストキットが地下水中および表層水中のPO4-Pの定量に適していることが示されました。
参考文献
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