塗料・コーティング溶剤の大気捕集アプリケーション

溶剤は塗料の3つの成分の1つです。顔料と結合剤を溶解する石油系化学物質です。エナメルベースの塗料は、そのほとんどがアルキドビヒクルを含むマイルドな石油ベースの溶剤を使用しているため、乾燥と硬化に要する時間が長くなります。逆に、ラッカーベースの塗料は、乾燥時間を短縮するために、より強力な溶剤を必要とします。塗料に最も広く使用される芳香族炭化水素溶剤には、ベンゼン、トルエン、混合キシレン、エチルベンゼン（BTEX）、および高沸点芳香族ナフサがあり、脂肪族炭化水素にはヘキサン類、ヘプタン、VM&Pナフサなどがあります。

芳香族炭化水素
脂肪族炭化水素
含酸素化合物

公定法による大気サンプリング

方法	対象となる汚染物質	サンプリング媒体
OSHA
OSHA 7	揮発性有機物	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U） パッシブサンプリング – Radiello® BTEX/VOC（RAD130）/（RAD145）
OSHA 12	ベンゼン	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U）
OSHA 16	メチルエチルケトン（MEK）	捕集管 – シリカゲル、ORBO™-52S（20229）
OSHA 48	石油蒸留留分（PDF）	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U）
OSHA 69	アセトン	捕集管 – Carbosieve™ S3、ORBO™-91（20360） パッシブサンプリング-Radiello® BTEX/VOC-（RAD130）
OSHA 84	メチルエチルケトン（MEK）	捕集管 – Carbosieve™ S3、ORBO™-91（20360）
OSHA 1002	キシレン／エチルベンゼン	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U） パッシブサンプリング – Radiello® BTEX/VOC（RAD130/RAD145）
OSHA 1004	メチルエチルケトン（MEK）、メチルイソブチルケトン	パッシブサンプリング – Radiello® BTEX/VOC - （RAD130）
NIOSH
NIOSH 1003	炭化水素、ハロゲン化	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U）
NIOSH 1501	芳香族炭化水素	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U） パッシブサンプリング – Radiello® BTEX/VOC（RAD130）
ASTM
ASTM D3686	揮発性有機物	捕集管 – ヤシガラ活性炭、ORBO™-32S（20267-U） パッシブサンプリング – Radiello® BTEX/VOCs（RAD130）
ASTM D6196	揮発性有機化合物（VOC）	加熱脱着チューブ パッシブサンプリング - Radiello® BTEX/VOC -（RAD145）

芳香族炭化水素溶剤

芳香族炭化水素溶剤はベンゼン環構造を持ちます。これらの溶剤は、石油精製工業において原料油を蒸留し、触媒による水素化、アルキル化といったその他の化学変換プロセスにより製造されます。これらの溶剤は脂肪族炭化水素溶剤に比べて臭気が強く、溶解力が高くなっています。

塗料とコーティングに使用される一般的な芳香族炭化水素溶剤はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、混合キシレン（BTEX）、および高沸点芳香族ナフサです。その他の情報については、石油化学工業VOCガイドを参照してください。芳香族溶剤は、印刷インク、害虫駆除剤、殺虫剤、および農薬にも広く使用されています。

吸入によるこれらの溶剤の短時間ばく露は、上部気道と目に炎症が起きたり、めまい、倦怠感、および頭痛の症状を引き落こしたりすることがあります。長期的な影響により血液疾患（ベンゼン）、心臓血管と腎臓への影響、意識消失、中枢神経系の機能不全（キシレン）が生じるおそれがあります。ベンゼンはヒト発がん性物質に分類されています。

参考文献

• ASTDR - Ethylbenzene （PDF）
• NIOSHTopic - Organic Solvents
• ASTM - Volume 06.04 March 2009: Paint, Solvents, Aromatic Hydrocarbons (list of standards)（PDF）

脂肪族炭化水素溶剤

脂肪族炭化水素溶剤はベンゼン環を含みません。これらは、飽和の長直鎖（ノルマルパラフィン）、分岐鎖（イソパラフィン）、または環状構造を持つパラフィンの混合物です。これらの溶剤は、適切な沸点範囲の割合で蒸留することによって生成され、色と臭いを改善するために処理されます。

これらの溶剤に短時間ばく露すると、回転性めまい、浮動性めまい、吐き気と頭痛、皮膚と目の炎症、および意識消失につながることがある陶酔感を引き起こすことがあります。長時間ばく露したときの影響には、筋力低下、かすみ目、頭痛、疲労感、しびれ感、肺と皮膚の損傷、神経疾患などがあります。

これらは、塗料とシンナー中の溶剤または希釈剤としての使用に加えて、油分抽出、脱脂、ゴム製造、およびエアゾールと殺菌剤の担体として広く使用されています。ガソリンと灯油は脂肪族炭化水素溶剤の例です。

塗料とコーティングに使用される一般的な脂肪族炭化水素溶剤は、ミネラルスピリッツ、ヘキサン類、ヘプタン類、およびVM&Pナフサです。

ばく露限界

機関	ばく露限界
ミネラルスピリット（ストダード溶剤、石油溶媒、VM＆Pナフサ）
OSHA（PEL）	一般産業：2900 ppm、500 mg/m³ ppm TWA 建設業界：1150 ppm、200 mg/m³ ppm TWA 海運業界：1150 ppm、200 mg/m³ ppm TWA
ACGIH（TLV）	50 ppm、525 mg/m³ TWA、100 ppm
NIOSH（REL）	350 mg/m³ TWA、1800 mg/m³最高限度（15分）
NIOSH （IDHL）	20,000 mg/m³
（TWA = 時間加重平均、TLV = 閾値、PEL = 個人ばく露限界、REL = 推奨ばく露限界、IDHL = 生命と健康に直ちに危険な濃度）

含酸素溶剤（活性溶剤）

含酸素溶剤は酸素を含む官能基を持つ合成化合物です。これらの溶剤は溶解力が強いため、主に大部分の合成樹脂の活性溶媒として使用されます。これらは樹脂やフィルム溶解し、塗料、ニス、およびラッカーの粘度を塗布できるようにします。このカテゴリーの中で最も広く使用されている4つはケトン、エステル、グリコールエーテル、およびアルコールです。

ケトン
通常、ケトンは炭化水素を酸化して合成されます。ケトンは、他の2つの炭素原子またはアルキル基と結合したカルボニル基を持っています。ケトンは溶解力が極めて強く、蒸発範囲は広く、極めて独特な強い臭気も有します。塗料とコーティングに使用されることが多いケトンは、アセトン、メチルエチルケトン（MEK）、メチルイソブチルケトン（MIBK）、およびイソホロンです。

ケトンのその他の用途：アセトンとMEKはネオプレン、ニトリルゴム、およびウレタン工業用接着剤中の溶媒混合物の成分です。アセトンは、医薬品産業でビタミンB複合体、アルカロイド、酵素、および抗生物質の抽出用に広く利用されています。MEKとMIBKは油の脱ろうに使用され、抗生物質の抽出と精製、無煙火薬、インク、脱脂アプリケーション、香料、洗浄液、抗酸化物質などの生産にも役立ちます。

ばく露限界

機関	ばく露限界
アセトン
OSHA（PEL）	一般産業：1000 ppm、2400 mg/m³ ppm TWA 建設業界：1000 ppm、2400 mg/m³ ppm TWA 海運業界：1000 ppm、2400 mg/m³ ppm TWA
ACGIH（TLV）	500 ppm、1187 mg/m³ TWA、750 ppm、1780 mg/m³ STEL、付録A4 - ヒト発がん性物質として分類されない
NIOSH（REL）	250 ppm、590 mg/m³ ppm TWA
NIOSH（IDHL）	2500 ppm
メチルエチルケトン（MEK）
OSHA（PEL）	一般産業：200 ppm、 590 mg/m³ ppm TWA 建設業界：200 ppm、590 mg/m³ ppm TWA 海運業界：200 ppm、590 mg/m³ ppm TWA
ACGIH（TLV）	200 ppm、590 mg/m³ TWA、300 ppm、885 mg/m³ STEL、BEI（TVLは、メチルエチルケトン（MEK）の下に記載）
NIOSH（REL）	200 ppm、590 mg/m³ TWA、300 ppm、885 mg/m³ STEL
NIOSH（IDHL）	3000 ppm
メチルイソブチルケトン（MIBK）
OSHA（PEL）	一般産業：100 ppm、410 mg/m³ ppm TWA 建設業界：100 ppm、410 mg/m³ ppm TWA 海運業界：100 ppm、410 mg/m³ ppm TWA
ACGIH（TLV）	50 ppm、205 mg/m³ TWA、75 ppm、307 mg/m³ STEL
NIOSH（REL）	50 ppm、205 mg/m³ TWA、75 ppm、300 mg/m³ STEL
NIOSH（IDHL）	500 ppm
（TWA = 時間加重平均、TLV = 閾値、PEL = 個人ばく露限界、REL = 推奨ばく露限界、IDHL = 生命と健康に直ちに危険な濃度）

エステル
一般にエステルは、アルキル（アルコキシ）基で置換された少なくとも1つのヒドロキシル（-OH）基を持ち、多くはカルボン酸とアルコールから得られる無機酸または有機酸に由来します。溶剤としてのエステルは、アルキルアセテート、アルキルプロピオネート、およびグリコールエーテルアセテートです。エステルの揮発性はケトンと同等です。強い溶解力を持っていますが、一般には揮発性が同じケトンほど強くありません。

グリコールエーテル
一般にCellusolve^™と呼ばれるグリコールエーテルは、エチレングリコールのアルキルエーテルをベースとした一連の溶剤であり、通常はエーテル官能基とアルコール官能基の両方を持っています。これらの化合物は、安全性リスクに関する懸念が生じるまでコーティングに広く使用されていました。グリコールエーテルは、多くの用途でプロピレングリコールエーテルに置き換えられています。これらの化合物は、強い溶解力と遅い蒸発速度を併せ持っています。

参考文献

• Methyl Cellosolve Safety (PDF)

塗料とコーティング剤に最もよく使われるアルコールはブチルアルコールとエチルアルコールです。アルコールは毒性が低く、無極性化合物を溶解できるため、乾燥時間を短縮したり、塗料の粘度を下げたりするために塗料とコーティング剤に使用されます。

アプリケーション

• US EPA法 TO-17：GCによる揮発性物質の分析、VOCOL®、Collection/Desorption、Air Toxics使用
• Industrial Solvents on GC Capillary Column Equity-1701 （PDF）
• Industrial Solvents on GC Capillary Column SUPELCOWAX 10 (PDF)