Novabiochem®ブランドは、in situ活性化のための高品質のカップリング試薬を幅広く提供しています。しかし選択肢があまりに多いため、特定の用途に最適なカップリング試薬の選択が難しい場合もあるでしょう。縮合剤の選択には、カップリング効率、安定性、溶解性、活性種の反応性について考慮する必要があります。
In-situ活性化剤
In situ活性化剤はハンドリングしやすく、立体障害のあるアミノ酸でも反応が速く、一般に副反応が起きにくいことから広く用いられています。その大半はアミニウム塩(以前はウロニウム塩として知られていました)またはホスホニウム塩で、三級塩基の存在下にて、保護されたアミノ酸を多様な活性種へスムーズに変換します(図1)。Novabiochem®のカップリング試薬の性質を表1にまとめています。
図1.一般的なカップリング試薬により生成される活性エステル
広く使用されている一般的な縮合剤、BOP、PyBOP、HBTUはOBtエステルを生成し、定型的な固相ペプチド合成(SPPS)から液相合成における困難なカップリング反応まで幅広く使用されています。また、OBtより反応性が高いエステルを生成するカップリング試薬も利用可能です。最も重要なのがHATU2およびPyAOP1,3、HCTU4およびPyClocKです。塩基の存在下でHATUとPyAOPはカルボン酸をOAtエステルに、HCTUとPyClocKはO-6-ClBtエステルに、それぞれ変換します。HOBtと比較してHOAtおよびHO-6-ClBtはpKaが低いため、これらのエステルは対応するOBtエステルよりも高い反応性を示します。加えて、HOAtのピリジン窒素が隣接基関与効果によりカップリング反応を促進するため、HATUおよびPyAOPはOBt系の中で最も高効率のカップリング試薬になっています。
近年、Oxyma Pureを脱離基とするカップリング試薬が紹介されており、その中で最も有用なのがCOMU5,6およびPyOxim7です。これらの試薬で生成されたOxymaエステルの相対的な反応性については議論の余地があります。当初、Oxyma系試薬はHOAt系の試薬よりも高効率だとされていましたが、私たちが独自に行った試験8ではHOAt系試薬のほうが優れた反応性を示します。一方で、多くの場合においてOxyma系試薬はHOBt系(PyBOP、HBTU)およびO-6-ClBt系(PyClocK、HCTU)試薬よりも常に高い反応性を示します。Oxyma系のカップリング試薬の主な利点の1つとしては、爆発の危険性があるトリアゾール系試薬を使用しないということがあります。
私たちの実験において、カップリング試薬の反応性は生成される活性エステルの性質とほぼ完全に対応しており、その反応性の順番はOAt > Oxyma Pure > 2-ClOBt > OBtです。 ウロニウム系かホスホニウム系かどうかは、反応性にほとんど影響がないと考えられます。
ウロニウム系試薬 vs. ホスホニウム系試薬
COMUを除くウロニウム系試薬のDMF溶液は、安定性が非常に高いため、あらかじめ調製したカップリング試薬溶液を用いる自動合成装置での使用に最適です。対照的に、ホスホニウム系試薬はDMF溶液の安定性はあまり高くありません。密封したバイアル内に保管する必要があり、最長で2日間しか使用できません。しかし、ウロニウム系試薬と比較すると、ホスホニウム系試薬のDMFに対する溶解性は大幅に高くなります。これは高濃度で効率良く反応を進めることができるため、実用上で重要なポイントになります。
一般に、ホスホニウム系カップリング試薬はウロニウム系試薬よりもきれいに反応が進みます。ウロニウム系試薬の場合、N末端アミノ基のグアニジニル化による連鎖停止反応が起きることがあります9。この副反応は、カルボキシ基の活性化が低速な場合、例えば、フラグメント縮合反応および環化反応、過剰量のウロニウム系試薬を使用したときに、特に問題となります。これらの副生成物の形成は、ESI質量分析で正に帯電した短鎖ペプチドが標的イオンをマスキングしてしまうことが確認されており、長鎖ペプチドの合成にも支障をきたします。 ウロニウム系試薬とは対照的に、ホスホニウム系試薬は過剰量を使用することが可能で、低速の環化反応やフラグメントカップリング反応を加速させることもできます。
図2.ウロニウム系カップリング試薬が引き起こすグアニジニル化
ウロニウム系カップリング試薬とホスホニウム系カップリング試薬のまとめ
参考文献
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