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ホスホン酸塩分析のためのイオンペア形成

Craig Aurand

Reporter US Volume 26.4

ホスホン酸塩は抗ウイルス薬の治療用途に一般に使用される化合物クラスです。これらの化合物は、その高い極性と、UV活性な置換基を持たないことによって分析が困難となることがあります。代表的な用途には、イオンペア試薬を使用してクロマトグラフィー選択性を改善したり、UVまたは蛍光に応答する官能基を付与したりすることがあります。本研究の背後にあるコンセプトは、クロマトグラフィーの保持力を改善することのみならず、陽イオンエレクトロスプレーESI + MSを使用してこれらの高極性分析対象物質のイオン化強度も増加させることでした。

ホスホン酸塩の構造

ホスホン酸塩の構造

本研究では、従来の逆相クロマトグラフィーを使用したリセドロネート、パミドロネート、およびアレンドロネートのクロマトグラフィー選択性を補助するために、N,N-ジメチルヘキシルアミン(NNDHA)を選択しました。このとき、NNDHAのアミン官能基が分析対象物質のホスホン酸基とイオンペアを形成する結果、疎水性が増加します。保持の増加に加えて、この試薬は質量スペクトル分析に対する利点にもなります。NNDHAも揮発性イオン対試薬であるためにホスホン酸塩官能基との付加物を形成でき、陽イオンモードESIで良好にイオン化されます。

ジメチルヘキシルアミン

N,N-ジメチルヘキシルアミン(NNDHA)の構造

イオン化しやすくするのを証明するために、まずリセドロネート、パミドロネート、およびアレンドロネートの1 μg/mL溶液を10 mM酢酸アンモニウム80:20 水:アセトニトリル中で調製しました。そして、この溶液をThermo LCQ AdvantageイオントラップMSに注入して積算スペクトルを得ました。この条件下では親イオン、ナトリウムまたはカリウム付加物に対して検出されたホスホン酸塩はありませんでした。イオン化を改善するため、次に80:20 水:アセトニトリル中pH 5.0の10 mM NNDHA溶液を調製し、ホスホン酸塩化合物を1 μg/mLで添加しました。この試料を注入したところ、スペクトルにm/z 450を超える質量のイオンが観察されました。付加物の形成について計算後、観察されたイオンは分析対象物質のホスホン酸塩の複数種のNNDHA付加物であると確認出来ました。図1に注入実験から得られたスペクトルを示します。m/z 494、508、および542で得られたイオンは、パミドロネート、アレンドロネート、およびリセドロネートが2分子のNNDHAで置換された付加物です。ホスホン酸塩がNNDHAと付加物を形成することにより、これらの化合物に対するイオントラップMSの感度が大きく上昇しました。

ESIによるスペクトル

図1.NNDHA試薬を含む溶液中のホスホナート化合物のESI+によるスペクトル

次の段階は、これらの分析対象物質をクロマトグラフィーで分離するためのHPLC条件の開発でした。クロマトグラフィーの保持力を増やすために、10 mM NNDHA溶液を使用してホスホン酸塩化合物とイオンペアを形成させました。これにより、標準的なカラム形態を使用してリセドロネート、パミドロネート、およびアレンドロネートを6分未満でイソクラティック分離できるようになりました。このケースでは、質量分析計に1 mL/分で流入するカラム溶離液を、分析対象物質の感度を良好に保ちながら100 μL/分にスプリットしました。ホスホン酸塩標準溶液にはNNDHAを含有させず、その代わりにカラム注入口に到達する前に移動相中でイオンペアを発生させました。

NNDHAを使用することにより、これらのホスホン酸塩化合物の分析に独自の効用が生まれ、クロマトグラフィーの保持力が改善されただけでなく、付加物を形成するメリットにもなり、MS装置での検出が大幅に増加しました。本方法は従来の誘導体化法と極めて類似していますが、近代的なLC-MS用途にさらに適しています。本方法は、ポジティブモードエレクトロスプレーでの保持や検出に限界がある、困難な酸性化合物が関わるその他の用途にも適用可能です。

クロマトグラフィー分離

図2.Ascentis C18(581324-U)によるホスホン酸塩化合物のクロマトグラフィー分離

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