分析者は定性的な抽出ツールとしてSPMEを日常的に使用していますが、被分析物質が全抽出されるわけではないため、定量に使用することに躊躇します。正しい手順に従えばSPMEでも試料を定量できることが多くの出版物で示されています。本研究では、SPMEを使用して1,4-ジオキサンの抽出を定量化する方法を紹介します。
ジオキサンは、一般に塩素化有機溶剤、主に1,1,1-トリクロロエタン(TCA)中で安定剤として使用されます。また、化粧品、塗料、および医薬品産業で工業溶剤としても使用されています。ジオキサンは水に極めて溶けやすく、容易に加水分解や生分解されず、米国EPAの潜在的発がん性物質リストに収載されています。ジオキサンは水溶性が高いため、有機溶媒を用いて抽出するのが困難です。
SPMEを使用して試料を適切に定量化するときに従うべき、特定のガイドラインとステップがあります。この手順を使用してジオキサンを水から定量的に抽出する方法を提案しました。
- 好ましい分析法(GC-MS)によるジオキサン分析条件の決定
- 適切な内部標準物質の決定
- 適切なSPMEファイバーの選択
- 抽出モードの決定
- 最適な抽出条件の決定
- 時間
- 温度
- 試料改良効果の測定
- 検出限界と直線範囲の決定
- ファイバーの再現性
最適化した分析条件 |
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厚膜カラムを使用することでジオキサンが保持されるようにしました。カラムが長いほど、真空下で制御すべき流量に対する十分な背圧が得られます。
化学特性と抽出特性の両方が被分析物質に類似した内部標準物質を選択します。質量分析計で検出する場合は重水素化した被分析物質が最良の内部標準物質になるため、可能であれば使用します。その他の検出器では抽出条件を変更します。相対応答が一定のままであれば、内部標準物質として機能しています。本研究ではジオキサン-d8を使用しました。その他の検出器では、イソプロパノールがジオキサンに対する良好な内部標準物質になります。
図1に、Carboxen™ PDMSメタルファイバーがその他のSPMEファイバーの100~300倍抽出できることを示します。低分子の被分析物質を保持するにはCarboxen 1006の小さな細孔が最適です。
図1.各ファイバーにおける抽出トレンド
抽出モード、温度、時間、および試料調製法の決定
SPMEを使用した試料の抽出は、ファイバーを試料に直接浸漬するか、またはファイバーを試料上のヘッドスペースに置くことによって行えます。通常はSPMEとともに撹拌しますが、不要な場合もあります。ヘッドスペースSPMEを使用する場合は、抽出中の試料温度が重要になります。図2に、ファイバーを浸漬した場合、室温と55℃の試料温度でヘッドスペースばく露した場合のジオキサンの抽出を比較して示します。結果から、この被分析物質ではヘッドスペースを55℃に加熱して撹拌するのが最良の抽出条件であることが明らかです。本稿には示していませんが、抽出時間と抽出温度の最適化に関する詳細な結果はSupelcoの発表資料でご覧いただけます。T406024をご請求ください(pdfファイルでのみ利用できます。お客様のEメールアドレスをお知らせください)。
図2.ジオキサン抽出における抽出時間と攪拌の関係
サンプル試料を調製すると試料回収率を大幅に向上させることができます。本研究では25%のNaClを水試料に添加しました。ジオキサンは、2~11のpH範囲でSPMEを使用する限りpHの影響を受けないようです。
使用する方法における直線範囲を決定することも重要です。検出器よりファイバーの容量の方が大きいことがあるため、方法全体を評価しなければなりません。緩衝塩水の原液を調製し、内部標準物質の濃度を一定に保ちながら水の試料に対象である被分析物質をさまざまな濃度レベルで添加するのが最良です。
最適化した条件で試料を抽出し、被分析物質の応答係数を計算します。応答係数から濃度が決まるため、この数字は一定のままになるはずです。応答係数を3シグマ増やしたところが直線範囲の終点です。被分析物質の検出応答をプロットし、直線回帰を適用して範囲を評価し、検出限界を設定できます。
図3にジオキサンの検量線を示します。抽出したブランク試料の面積カウントを差し引くと、検出限界を0.5 ppbまで下げることができます。本研究での上限値は100 ppbでした。
図3.ジオキサンの検量線
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